「経営は知られてなんぼ」
「経営は、知られてなんぼ」
これは私がカウンセリング・オフィスを開業する前に、アドラー心理学の恩師からうかがった言葉です。
長年資本主義の荒波を心理学の起業、開業で乗り切ってきた方の言葉だけに、私は常にこの言葉を意識してきました。
といっても無理に営業したり、宣伝することはしませんでした。
私の臨床経験と臨床スタンス、そして時流が、オフィスの経営を助けてくれたからです。
私の住む地域は臨床心理学的には、精神分析志向の研究者や心理士が圧倒的多数です。
それは昔からこの地域には高名な精神分析家やユング心理学の臨床家がいて弟子が育っていたことと、臨床心理士養成大学院には精神分析学を専門にしている先生たちが多かったためです。
ここで普通のカウンセラー志望者なら、「精神分析学を修めないとこの地方ではやっていけない」と思うことでしょう。
しかし、へそ曲がりの私は、「これこそ、望む状況だ!」と喜びました。
「みんなが精神分析学だからこそ目立てる」と思ったのです。
実際その通りになりました。
アドラー心理学なんて物珍しいものをやっている、県内唯一の心理士となったのです。
そして私は長年、児童相談所や県の中核総合病院、中核精神病院で心理士を務めていたので、まさにハードかつ最先端の社会問題に接してきた経験値があり、医師たちからも知られていた存在でした。
「あの人は、アドラーというのをやっていて、認知行動療法やブリーフセラピーや催眠もできる」と思われたのです。確かに間違ってはいませんが、アドラー以外はまだそれほど自信はなかったですけどね。開業前にすでに目立つことができていました。
さらに2000年代、インターネットが普及して2チャンネルが出た頃、「山梨の精神科」とかいうスレッドで、私の患者さんが書き込んでくれたと思うけれど、私のことをとてもほめてくれていたんです。
「県立中央病院には良いカウンセラーがいる」などといくつも書き込まれていることをある人から聞いて覗いたら、本当にそうでビックリしました。
うれしかったですね。あの2チャンネルでほめられるとは。
そして2012年に仲間の心理士たちと甲府で開業したら、2013年末からの『嫌われる勇気』の大ベストセラー、空前のアドラーブーム。
これが追い風になって、研修依頼や執筆依頼が増え、私の実力以上の「ハロー効果」ではありますが、経営にとって良循環となりました。
この間、県内の精神分析志向の臨床心理士や大学の先生たちとも別に反目していたわけではなく、臨床心理士会の活動にも積極的に参加することで、お互いに信頼関係もでき、クライエントさんを紹介し合うこともあり、ついには推挙されて県臨床心理士会会長にも就任することになりました。
今や二つの大学の非常勤講師も務めています。
お陰様で私は地域の人たちから、「偉い先生」と誤解されて、今に至っています。
化けの皮が剝がれないようにしなくちゃ。
と、ザックリ振り返ってみましたが、たとえマイナーであってもそれ故に存在感を示すことができるのです。
カウンセリングというそもそも社会のニッチな領域では、たとえその中の多数派がどうであろうとも、さらにニッチであるがゆえに知られることができたのでした。





















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