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May 16, 2005

心理療法の統合と党派性

 よくいわれることですが、心理療法、カウンセリングの流派はたくさんあります。100とか500とか知りませんが、とにかくいっぱいあるのです。それでこれはまずい、いくらなんでも混沌とし過ぎているとして、最近は統合的心理療法といったものが唱えられたり、研究されるようになりました。

 以前からファンだったスコット・ミラーという心理学者によると、効果的な心理療法の共通要因とは何かという研究に関して、最近はおもしろい結果も出ています。結局各心理療法に特異的にある理論や技術の占める要因はそんなに大きくなく、関係要因(治療者とクライエントの関係性)と治療外要因(治療場面以外で起こることの影響)が大半らしいのです。
 当然だろうな、と思います。クライエントとセラピストの仲が険悪だったり、治療室から出るとひどい虐待環境が待っているなら、どんな立派な理論も技法も効かないでしょう。
 特に治療室では「関係要因」の質の向上に心を砕くべきでしょう。

 そして、もし心理療法の研究が進んで「統合的心理療法」ができれば、セラピストはみんな同じ治療スタイル、雰囲気、技術を持つようになるのでしょうか?多様なクライエントと問題に対するためには、一流一派に偏ってはいけないとは、よく言われることです。
 それはその通りと認めた上で、必ずしもそうじゃないんじゃないかと僕は思っています。

 そこでいきなりラーメンです。
 ラーメンの共通要因とは何か?効果的な(美味しい)ラーメンに共通するものは?麺があって、スープがあって、どれもだいたい同じサイズの丼に入っています。旨味を化学的に見ると?栄養学的には?きっと我々がラーメンと呼ぶ食べ物に共通要因がある、それは研究すれば間違いなく出てくるでしょう。
 また、「食事外要因」-食べる人の空腹度とか心身のコンディション、好み-が大きく作用するでしょう。「関係要因」-頑固な店主との関係性?-もあるかもしれない。
 そういいったものがわかれば、美味しいラーメンを作ったり、お店を経営するにはきっと役立つでしょう。

 でも札幌ラーメンと中華そば、九州ラーメンがそのまま混ざればいいのか、やはりそうはいかない。それぞれは大いに個性的で、単に混ぜればよいというものではありません。
 現実には、ラーメンという共通性の上に、ものすごい数の個性と、それをある程度整理分類する枠組みがあります(味噌とか豚骨、喜多方とか旭川などなど)。それがおもしろい。私たちは、その多様性を愉しんでいます。

 心理療法各派は、フランス料理と中華料理、和食ほどには隔たっていないかもしれません。せいぜいラーメン各流派(?)程度でしょう。
 またその中でも、一種類のメニューだけを出す、「本格派」「こだわりの」「正統派」もあるかもしれません。一方、ラーメンだけでなく、チャーハンや肉野菜炒め定食なども出す「大衆食堂」みたいなところもあると思います。アドラー心理学だけでなく、きっとどんな心理療法の世界もそうじゃないかな。

 僕は、あんまりこだわりが強くて頑固な店は苦手でして、看板メニューは適度に美味しくて他のメニューもけっこうある、雰囲気も気楽なところがいいな。 

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Comments

アド仙人さま
コメントありがとうございました。
中村うさぎさん,すごく面白いんです。
で,アド仙人さまのブログを覗いてみたら,なんと心理療法の統合と折衷について,すごく本質的なことが書かれてあってびっくり。
ラーメンのたとえが面白いです。面白い「たとえ」って本当に面白いし役に立ちますよね。
実は某学会で数年間に渡り,心理臨床の基礎と折衷といったテーマで仲間と議論を重ねています。共通要因といった考え方も仲間から教わって,遅ればせながら今勉強している最中です。
私自身は,CBTは特殊な理論と技法を持つアプローチではなく,むしろ共通要因的効果を高まるための,一般的な理論と技法を示すものであると考えており,そういったことをきちんと示していければ良いなと考えたのも,自分のブログを始めた動機になっています。

おっと,非常に堅苦しいコメントになってしまいました。

“看板メニューは適度に美味しくて他のメニューもけっこうある、雰囲気も気楽なところがいいな”には全面的に賛成します。美味しければ何でもよいというわけでもなく,頑固すぎるでもなく,ほどほどの看板メニューもあり,でも気楽にいろんな人が立ち寄れて,ほどほどに満足できる,そんなラーメン屋(心理屋)でありたいと思います。いろいろと触発されて長文になってしまいました。失礼いたしました。

Posted by: coping | May 19, 2005 at 12:09 AM

 copingさん、いつもありがとうございます。おもしろいたとえ話を考えていると、治療にも役立つような気がしています。僕は研究を縦に深めていくより、横に発想が広がっていくタイプなのかもしれません。
 認知療法のエッセンスをcopingさんのブログから学ばせてもらっています。以前から興味があったのでとても楽しみにしていますよ。仲間にも紹介させてくださいね。

Posted by: アド仙人 | May 19, 2005 at 11:45 PM

アド仙人さま
こんにちは。コメントありがとうございました。
ところでこの記事へのコメントとして書いていいのかよくわかりませんが,最近,甲野義紀さんと光岡英稔さんの『武学探究』という本にはまっています。臨床心理的にみたらどうか?というかなりムチャクチャな読み方なのですが,武道について書かれてある本を読んだのも初めてなので,武道的な評価(そんなものがあるのかもわかりません)ができません。
で,図々しくもとりあえずアド仙人さんに訊いてみよう」と思い立った次第です。武道をなさる方として,このお二人についてどうお考えか,もし機会があればお聞かせください。
(という質問自体が筋違いだったら,すみませんです。このコメント自体,無視してくださいませ)

ではこれからもよろしくお願いいたします。

Posted by: coping | May 21, 2005 at 05:08 PM

 いえいえ、何でも聞いて下さい。心理学より得意かも(笑)。
 挙げていただいた本は、東京の書店で見て買おうかなと思っていたものです。この機会にトライしてみますね。こっちにはそういう本なかなかないんです。
 甲野さんは、最近古武術の身体操法を表現して各界で有名になった方ですね。実は20年ほど前(僕が学生だった頃)、氏のデビュー作「表の体育、裏の体育」をある雑誌に書評として紹介したことがあります(アルバイトで、作家じゃありませんよ)。僕は、お会いしたことはありませんが、目を付けるのは早いのです(^_^)。
 とても柔軟で感性の豊かな方のようですね。昔から、参考にしています。
 光岡さんも直接は存じ上げませんが、彼がやっている意拳と僕が入っている流派の形意拳は親戚、同族同士といってよいものです。僕がやっている気功は、意拳の創始者、王向斎という達人がまとめあげたもので、おそらくその本にも出ていると思います。光岡さんはとても誠実な方のようだし、いつかお会いしてみたいです。
 最近、内田樹さんといい、学者で武術家みたいな人の発言が目立ていますね。どういう時代性なんだろ?
 copingさんが、臨床心理学的にどう読んだかとても興味があります。よかったらアップして下さい。トラックバックしますよ。

Posted by: アド仙人 | May 22, 2005 at 12:18 AM

アド仙人様
甲野さん,光岡さんについて,また意拳などについて教えていただき,ありがとうございます。思い切って尋ねてみて良かったです。甲野さんを知ったのは,昨年からずっと内田樹さんの本にはまっていて,そこからのつながりです。前述のとおり,私は武術はよくわからないのですが,身体の置き方とか動かし方に興味があり,自分なりにヨガのレッスンに出たり,動作法をちょっとだけ習ったりして,あとは自分の身体を使って日々あれこれ試したりしています。臨床でリラクセーションをよく使いますが,呼吸法より先に,身体の置き方がうまくないと,あまり効果がないということがわかってきて,その辺をいつかちゃんと論理的に説明してみたいと思っています(論理的に説明できるものなんだろうか?)。
甲野さん・光岡さんの本,読了して何か書けそうだったら書いてみますね。

Posted by: coping | May 22, 2005 at 09:30 AM

 動作法は僕の以前の上司がよくしていて、見よう見まねで多少やっていました。僕の場合、気功だか何だかわからないエセ動作法かもしれませんが。ヨガもおもしろいですよね。
 なんだかcopingさんって、ただ者ではないですねー。「お、お主、できるな」って感じです。いつか師事させていただくかも。
 内田樹さんの著書やブログは僕も愛読しています。あとさらに前衛的というか身体と意識へのアプローチでおもしろいのは高岡英夫さんでしょう。
 そのうちここでも、何か書いてみます。情報交換していきましょう。

Posted by: アド仙人 | May 23, 2005 at 12:15 AM

アド仙人さま
レスポンスありがとうございます。身体の動かし方,動き方を知ることは,そのままこころの動かし方,動き方を知ることに通じるような気がしています。身体性を抜きに心理療法は語れないと思います。といったことを一人でブツブツと考えている私は単なる「ただ物」ですが,何かのご縁でアド仙人さまとこういったやりとりをさせていただけて,とても嬉しいです。
ところで高岡英夫さんについて早速調べてみたら,著作がいっぱい。お勧めの本があったら,教えていただけますか?早速読んでみたく思います。お手数おかけしますが,よろしくお願いいたします。

Posted by: coping | May 23, 2005 at 02:39 PM

copingさま
 身体と心(認知)についての問題意識、まったく同感です。近代の心理学ではなかなか扱いにくいけど重要な領域ですね。
 高岡英夫さんも本当に多作で、私たちの世界でも隠れたファンがいると思います。学問的高度さと妖しさを併せ持つ不思議な人です。あの売れっ子斉藤孝の師匠だったみたいです。
 入門というか初心者用には、「からだにはココロがある」(法令出版社)、「カガヤクカラダ」(運動科学総合研究所)、「身体意識を鍛える」(青春出版社)あたりはどうかな。
 トレーニング分野の人で、直接臨床心理とは絡まないかもしれませんが、重要な視点を提供してくれていると思います。彼が開発した「ゆる体操」はいいですよ。臨床にも使える可能性があると思います。

Posted by: アド仙人 | May 23, 2005 at 07:33 PM

アド仙人さま
高岡さんについての著作情報ありがとうございます。早速どれか一つ注文してみようと思います。
「トレーニング分野の人で,直接臨床心理とは絡まないかもしれませんが」というフレーズに,むしろ惹かれます。ボディワーク的ワークショップは機会があれば参加するようにしていますが,これまでに一番感動したのは,本物の舞踊家さんのダンスセラピーのワークショップでした。(と書きつつ,名前を忘れている・・・)ご本人は「セラピーしよう」などという気は毛頭ないようで,要はダンスのレッスンを受けたようなものですが,本物の人に教えてもらうのは本当に楽しかったです。
斉藤孝さんの言う「腰ハラ(漢字が出ない)文化」は,前から共感していました。が,最近自分が意識しているのは,腰やハラは当然として,さらに内股や背中(仙骨)あたりに意識を置くことです。ヨガを習ってから,そういった箇所に意識をおくことによる心身の安定性に興味を抱きましたが,武道の世界ではそんなの常識!ということだったりして。・・・相変らずとりとめなくてすみませんです。

Posted by: coping | May 25, 2005 at 01:05 AM

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