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July 25, 2005

アドラー心理学の種6・対人関係論

「精神医学は対人関係論である」といったのは、確かサリヴァンでしたが、アドラー心理学もそれに先立ち、まさに対人関係論であるといえます。

「心理学が対人関係を扱うなんて、当たり前じゃないの」と思われる方がいるかもしれませんが、臨床心理学の考え方のパラダイムには、大きく分けて対人関係論と精神内界論という二つの思考法があって、アドラー心理学はもっぱら前者なのです。

 精神内界論とは、心の中に何か問題を起こす実体のようなものがあって、それが原因となるという考え方です。何か人目を引く問題や事件が起こると、マスコミなんかで学者や評論家が登場して、「無意識」「葛藤」「トラウマ」「欲動」「攻撃性」「心の闇」などなどの概念がよく使われ、お馴染み(?)の「心理学的説明」がなされていますね。

 対人関係論では、あらゆる行動は、対人関係上の問題の解決を目的としてデザインされ、実行されると考えます。行動の「意味」は、心の中にあるのではなくて、対人関係に及ぼす影響から判断されます。

 人がある行動をするとき、それには相手役と呼ばれる人がいるはずです。その人に対してある目的(注目を引く、支配する、優位に立つなど)を持ってある行動(認知、感情、症状など)をします。それを受けて、相手役の人はその人なりの目的を設定してある行動を選択して反応していく。それを受けた人はさらに・・・とその繰り返し。そうしていくうちに、あるパターンが見えてきます。その人個人のパターンとして見えるものを「ライフスタイル」、その場の人間関係全体で繰り返されるパターンは、家族療法やシステムズ・アプローチでいう「関係性のパターン」といえるかもしれません。

 子どもの問題行動(神経症的症状、不登校、非行など)に対して、親は何らかの対処をしなくてはなりません。それを解決行動と呼びます。叱るとか、なだめるとか、お小遣いをあげるとか、泣くとか。それで解決すれば御の字ですが、相談に来られるからにはうまくいかなかったから来るわけで、その意味で親の解決行動は実は偽解決行動であったと呼ぶこともできます。そこで、ブリーフ・セラピーでは問題行動/偽解決行動の悪循環を絶つべく、働きかけるわけですが、もちろんアドラー心理学でも同様です。

 こんな風に、コミュニケーションの場で生起している行動や認知、思考、感情、症状、あるいは身体感覚などの連鎖を丁寧に追っかけていこうとする態度を、対人関係論と呼べるのかもしれません。

 この考え方でいくと、こちらの観察力やコミュニケーション力に自覚的になるので、臨床的実力は自然に高まるような気がします。面接の場では、自分自身は傍観者的、中立的態度でいられることはあり得ないと悟るからです。

 人間の行動の中には、一見他者との対人関係とはまったく無関係で、個人の内的世界とのみ関係しているように見えるものがあります。そのような行動も、よく考えれば対人関係の中でのみ意味があるのです。     「アドラー心理学基本用語集」

 でも実は、僕がアドラー心理学をマスターする上で一番苦労したのが、この対人関係論でした。考えてみれば、当たり前の考え方なんだけど、なまじ心理学(精神分析やユング心理学などなど、勉強家だったもんで(苦笑))なんかかじっていたものだから、何かというとつい「心の中」に何かがあってそこから説明しようとしてしまう癖があったからでした。特に児童相談所にいた時期は、昨今のトラウマ・ブームはやっかいでした。今でも「100パーセント純粋正統派アドレリアン」ではないので、精神内界論的発想を完全に捨てたわけではないのですが、不可解な精神現象を何でもトラウマから見ようとすることは避けるように努めてきました。

 また、奇妙な性的な問題、非行を起こした少年には、とかく周囲は大慌て、大騒ぎになりがちです。校長なんてもう「何かあったら困る(ホンネ:マスコミに出たら困る)、すぐ施設にやってくれ」という剣幕だし、ご家族もどうしても扱いきれない感じを持ちがちです。それでもこちらは、彼の頭の中に「異常性欲」があると思わず、彼の目的、対人関係のあり方を一緒に探っていくことはとても有益でした。その上で、女の子と仲良くなるにはどうすればよいか、あるいは一人の過ごし方、または単なる猥談をするなど、問題とは違ったいろいろなテーマが出てきて扱いやすくなります。

 アドラー心理学だけでなく、対人関係論は問題にとらわれず、問題とうまく付き合っていくための基礎的発想法だと思います。これからもさらに精進して、しっかり身につけていきたいものです(前向きだなあ)。

 

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