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September 08, 2005

アドラー心理学の種9・個性記述的

 今日は台風一過で暑かったけど、秋の気配も濃くなってきましたね。例年の夏は不登校や発達障害の子どもたちとバーベキューしたり山に登ったりと、仕事でもけっこうアクティブなんだけど、今年はそういうこともなくて静かに過ごしていました。ブログのおかげで退屈はしなかったけどね。秋はお勉強すっかな。

 アドラー心理学による人間の見方、表現の仕方は、ライフスタイル診断として比較的定式化されて示されることもありますが、その態度は常に個性記述的(idioglaphic)でなくてはならないとされています。人は一人一人ユニークな存在であり、その人を理解するとはそのユニークさをまるごと知ることであり、レッテルを貼ることではないと考えています。だから基本的に人格類型論をあまり役に立たないものと否定しています。

 その反対に人をある概念的枠組みに当てはめて理解する態度を法則定立的nomothethicと呼びます。概念的枠組みとは、何とか症とか何々障害であるという診断名とか、性格が何々タイプとか、ある基準から判断してその人にレッテルを貼ることです。そのことをもってその人を理解したと考えます。当たっているかはともかく、血液型や星占いもその一つでしょうね。

 私たちは、人間のタイプには関心はありません。なぜならあらゆる人間は、固有のライフスタイル持っているからです。1本の木に全く同じ葉を二枚見つけることはできないように、全く同じ人を二人見つけることはできません。自然は非常に豊かであり、刺激、本能、誤りの可能性は非常に数が多いので、二人の人が全く同じということはありえません。それゆえ、私たちがタイプについて語るとすれば、個人の類似性について、よりよく理解するための知的な手段としてだけです。        アドラー「個人心理学講義」                                               

 僕みたいな心理屋は、心理テストや精神医学の知識なしに仕事をすることは不可能だから、必然的に法則定立的な見方に偏りがちです。知能テストではこういう結果だから能力はこうだ、DSMやICDではこれに該当すると医師は言っている、だからこういう病気なんだ、小さい頃こんなひどいことがあった、だからこういう問題なんだ、といった具合に考えがちです。でも、それでは目の前の人を理解したことにはならない、とアドラー心理学では考えます。人は一人一人、よく見ればみんな違う、そんな決まり切った、出来合いの概念的枠組みに入らないところだって、実際にたくさんあるはずだ、それらをそのまま理解しようとする態度を維持しなくてはならないと教えているのだと思います。

 もちろん、レッテルといって悪ければ、診断的理解のメリットもあります。問題について考えるとっかかりになるし、他の人と共通の理解が得られることができます。特に最近は、例えば発達障害(LDやADHDやアスペルガー症候群など)としての診断を受けることで、本人の状態が前向きに概念化されて、問題と自分が切り離されてホッとする(外在化というようです)、救われるということも少なからずあるようです。でもそれは、それ以前の「診断的理解」が「性格が悪い」とか「子育てが悪い」とか、何か本人などのネガティブな属性として周囲から「実体化」されていたから、専門的な診断がその毒消しになったということが大きいのかもしれません。

 でも実際に仲良くなる、そして援助するには、結局「その人」と付き合うわけで、特に「うまく」やれている時は、諸々の法則定立的概念は吹っ飛んでたり小さくなっているはずです。きっとコミュニケーションや治療の上手な人は、法則定立的理解と個性記述的理解をうまく使い分けているのだと思います。ただ、これは言うは易く行うは難しで、僕も充分にうまくやれているとはまだいえませんね。特に性格類型論っておもしろくて誘惑的なんだよね。それから、ホントに気にくわない奴はやっぱダメね(^_^;)。まあ、だから無理はしないことです。

 何年か前、以前からファンだったスコット・ミラーというブリーフセラピーの最前線にいる人の来日ワークショップに出た時、ミラー先生が「アメリカはいつも最悪のものを輸出する。ひとつは戦争で、ひとつはDSMだ」と宣ったのを聞いて、さすが、と心の中で拍手を送ったことがあります。心理学なんて、もっと最悪(なものも多いかも)。だから言葉を大事に扱いながらも、既成の言葉にとらわれないようになりたいと思うわけです。

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