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October 08, 2005

パンツを脱ごう!:「パンツをぬいだサル」読了

 パンツを脱ごうといってもヌーディストの勧めではありませんよ(*^_^*)。経済人類学者にして政治家、栗本慎一郎先生脳梗塞からの復活の著「パンツをぬいだサル」(現代書館)を読んで久しぶりに心がグラグラ来たので、感想を載せます。

 栗本さんはこのブログの「恩師」シリーズに載せてもよいほど、個人的には影響を受けた方なのですが、僕と専門領域が違うのできちんとした学問的評価ができるわけではありません。けっこう個性的な人だし、思想的にぴったり合うというわけではないのですが、出世作「パンツをはいたサル」以来著書は面白くて、いつも何かインスパイアーされるのですね。

 本書では、氏が脳梗塞に倒れてからの脳生理学的な知識に基づく氏独自のリハビリの過程やそこから出される現在の医学への批判は、僕の立場でもなかなか鋭くて面白いのですが、何といっても真骨頂は、人類はサバンナにいたからではなく、水棲生物として水辺で生きた時代に直立二足歩行が始まったとする進化論と現在の世界状況に決定的に影響を与える巨額の資金資本とそれ作ったユダヤ人の歴史にまで渡る、気宇壮大な内容にあります。

 パンツとは、人間をただの「裸のサル」ではなく、動物とは決定的に違うところを比喩的に指します。それは、一言でいうと言語、宗教、民族、国家です。

 かくして人は、まずは言語を共有することで同族意識を発達させ、さらに起源神話を作り出すことで自分たちの集団のアイデンティティーの根拠を獲得した。そして、この民族という概念を軸にして、国家という制度が作り出された。

 と、氏はあっさりと人類の歴史を総括します。そういう「パンツ」が現代は異常に肥大化し、人類自身を滅ぼしかねないほど限界に来ているというのが基本的メッセージだと思います。

 本書で説かれている進化論については、次のHPでも紹介されています。 Thunder-r-Revolution

 僕が本書の中で特に面白かったのは、氏が経済企画庁の政務次官だったころ、小泉さん(栗本氏は慶応大での同期生らしい)に経済学を「ご進講」しても、まるで理解する「頭脳」がない、「問題が何かわかっていない」といった裏話的エピソードと、何よりもその小泉・竹中ラインを影で動かし、世界にも多大な影響を与えるユダヤ人の起源についての解説でした。

 およそ今我々が享受している生活や学問の中で、ユダヤ人の影響を受けていないのは皆無でしょう。僕の好きな臨床心理学だって、フロイト、アドラー、フランクル・・・など大きな流れを作った天才、創始者はユダヤ人がとても多いのです。なんでこんなに皆頭がいいの?そして、大戦中はナチスによる悲惨なホロコーストの犠牲者。「シンドラーのリスト」に僕も涙したよ。ところが戦後、イスラエルを建国してからは泥沼のパレスチナ。今のイラク戦争に続く中東の混乱は、すべてイスラエル建国の問題から発しているんでしょ?素朴な疑問として、なんであんなに悲惨な目に遭った民族が、今は絶え間なく人を殺し続けているの?そんな疑問を何となく僕は持っていました。

 人類の栄光と悲劇を背負っているかのごときユダヤ人とは誰か?本書には驚嘆するべき歴史が述べられています。ユダヤ人には大きく分けて2種類いることをご存じでしたか?ひとつは、二千数百年前のパレスチナにいた、アブラハム、イサク、ヤコブの子孫、つまり人種的に「正統」なユダヤ人であるスファラディーというグループ。僕がイメージしていたユダヤ人は、こちらでした。

 ところが、現代のユダヤ人の多数派は、この直系ではないのです。アシュケナージと呼ばれ、直系のスファラディーとは民族的に全く関係のない人々、「10世紀から登場したが、13世紀以降の東欧に突然大量に登場した」人たちなのです。彼らは元々はカザール人、6世紀末から13世紀までカスピ海と黒海に挟まれた広大な領域にカザール帝国を築いた民族の末裔だというのです。カザール帝国は、西のビザンチン帝国と南のイスラム帝国に挟まれ、対等以上に渡り合った強国でした。ところが8世紀頃、なぜかユダヤ民族でもないのに、ユダヤ教を国境に定めたのでした(キリスト教とイスラム教への対抗策らしい)。ユダヤ民族でもないのに「ユダヤ人」になったのです。その彼らが、カザール帝国滅亡後、東欧に大量に流れていったらしいのです。

 アドラーもフロイトもアインシュタインも、きっとアシュケナージだったのですね。そういえば白人の顔してて、アラブっぽくないもんな。

 アシュケナージは、ヨーロッパで不当な差別や虐待、虐殺に遭い続けながらも、金融や商業、学問、情報の世界で頭角を現していきます。それはそれで、すごいことだと思うのですが、今や彼らアシュケナージの一部の人たち(「権力派」というらしい)の作った巨大な金融システムと深刻な中東問題で、世界中が大変なことになろうとしているわけです。特に、彼らの何千年来念願であり「故郷に帰還」したというイスラエル建国は、何だったのか?という素朴な疑問が浮かばざるを得ません。故郷に帰るなら、カスピ海の方だろって思ってしまいます。

 歴史好きといいながら、ユダヤ・中東問題はよくわからない、複雑な問題だからと、僕は認識するのを回避してきたことに本書のおかげで気づかされました(なんかユダヤなんていいうと、陰謀論とかトンデモ本的見方をされそうでね)。世界にはまだ、認識できていない、学んでいないことがたくさんあるのです。

 栗本氏の言うことを鵜呑みにする必要はないし、ユダヤ人に変な偏見を持つことはいけませんが(氏もそんなことは望んでいないでしょう)、歴史のタブーや真実に迫ろうとする氏の気迫は尊敬に値すると思います。

 「人間」について関心がある方なら、お勧めです。

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Comments

リンクありがとうございます。
たしかにユダヤ人は奥深いですよね。「人類」を体現していると言ってもいい彼らが生んだ、キリスト教の原罪思想……。
これをサルからヒトへの進化の問題とつなげた栗本氏の着想は、やはりキレがあります。

そうそう、義経と言えば、ジンギスカン説もありますね。
ぼくは50%くらい可能性があると思ってます。
ということは……。笑。

Posted by: takanorix | October 08, 2005 06:15 PM

 takanorixさん、コメントありがとうございます。
 ユダヤ問題のおもしろさに目覚めてしまって、栗本さんが種本にしていたアーサー・ケストラーの「ユダヤ人とは誰か」(三交社)も今読んでます。これについてはほとんどタブーだったみたいで、歴史の虎の尾を踏んでしまったような怖さも感じますが、これから注目されてくるかもしれませんね。
 勉強テーマがまた一つ見つかって、よかったです。

 そうか、チンギス・ハンも僕の・・・、なんてヤバイヤバイ(笑)やめときましょう。

Posted by: アド仙人 | October 09, 2005 06:49 PM

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