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January 20, 2006

可能性療法とスピリチュアリティー

 昨年の終わり頃ですが、ブリーフセラピー系の代表的なセラピストの一人、ビル・オハンロンという方の来日ワークショップに参加したので、その感想を述べてみます。
 以前からこの先生の著書は翻訳されたものは読んでいて、特にエリクソン催眠についての本はとても面白くて自分にとって役に立ったので、楽しみにしていました。オハンロン先生は、とても柔らかい感じの方で、学者というよりアーティストという風情の方でした。予想通りで大変好感を持ちました。こんな方です。Bill O`Hanlon

 ブリーフセラピーは理論的には、未来志向、問題や病理より解決や変化を強調する、指示的カウンセリングであるなど、アドラー心理学と発想や理論は似ていますが、さらに面接現場で使いやすいように、たくさんの巧妙な質問技法がマニュアル的に構成されているところに特徴があります(特にソリューション・フォーカスト・セラピーと呼ばれる一派ですね)。
 けっこう便利で実践的、効果的で、私もお気に入りです。

 オハンロン先生は、とかく解決に向けてマニュアル的、機械的に適用されがちなブリーフセラピーに対して、クライエントの訴えにも十分な配慮を行うことの大事さを強調しています。今回は、「ロジャースを一ひねり」したとおっしゃいながら、あまり形やマニュアルにとらわれすぎない柔軟なやり方を提案していました。その自らのやり方を他のブリーフセラピーと区別するために、可能性療法と名づけています。
 その内容は多岐に渡り、とても実践的でしたが、二日間のワークショップの終盤になって人の健康さ、リソースを考える時に、スピリチュアリティーがとても重要であることを訴えていたのが私にとっては特に印象的でした。

 スピリチュアリティーは、「小さな自己」あるいはパーソナリティーを越えたものを意味しています。「より大きな自己」あるいは制限されたパーソナリティーを越えたものの体験は、どんなものでもスピリチュアリティーの構成要素であります。その中に人々が自分を越えたものとつながることを可能にする道筋があります。どんな体験でもその道筋たり得ます。ある人々にとっては、役に立たない、あるいはアピールしないものもいくつかあるかもしれません。

 まるでトランスパーソナル心理学ですね。
 単に症状や問題がないだけでなく、自己意識を越えた大きいものにどう関わっているかが、精神の健康にとって本質的に大切だというのです。
 そこで関わる対象や方法は、必ずしも狭い意味での宗教的なものではなくてもよく、ダンスやセックス、運動などの身体を通して学ぶもの、コミュニティーに貢献すること、自然の中で過ごすこと、芸術作品と接することなど、その人にとって最適なものであればよいのです。
 オハンロン先生は、スピリチュアリティーの中身について、3つのCとしてまとめています。

1 つながり(Connection)-あなたの小さな孤立した自我やパーソナリティーを越えて、あなたの中の、あるいは外にある、より大きな何かへとつながりましょう。
2 思いやり(Compassion)-自分や他人、世界に対抗するよりも、むしろ「ともにいると感じる」ことで、自身や他の人への態度を和らげましょう。
3 献身(Contribution)-他の人や世界に対し、利己的でない奉仕をしましょう。

 まるでアドラー心理学の共同体感覚みたい。同じように共同体感覚も精神的健康のバロメーターと言われています。
 比較的ドライで現実的なブリーフセラピストの中で、オハンロン先生は、けっこう宗教性も大事にする、柔軟で広い視野をお持ちの方のようです。お若い頃ヒッピーをやっていたこともあったというので、当時のことだからニューエイジ・カルチャーにも親しんでいたのかもしれません。また、オハンロン先生は、アメリカのブリーフセラピーはアドラー派との交流もあるとおっしゃっていたので、あるいはその影響もあるのかもしれません。

 当たり前だけど、アメリカ人もブッシュやネオコン連中のような凶暴な思想の持ち主ばかりではないのですね。特に弱者の側につくのが使命のセラピストに、そういう人がいるのはよくわかります。

 割りにその雰囲気が濃いユング心理学やトランスパーソナル心理学だけでなく、スピリチュアリティー、精神性を、新しくて実践的なセラピーの中にもどう位置づけていくかという流れが生まれつつあるのかもしれないと思った研修でした。

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Comments

オハンロン先生の本は、2冊購入してはいるのですが、挫折中です(*_*)。
アドラー派のスピリチュアリイティに関する話は、スピリチュアルタスクとの関連で述べられていそうな気配がしてはいますが、勉強不足のため定かではありません(>_<)。

Posted by: ぐうたら三昧 | January 26, 2006 at 09:43 AM

 ぐうたら三昧さん

 オハンロン先生はなかなかよいですよ。
 彼が言っていることは、まさにアドラー心理学のスピリチュアル・タスクそのものだと思いました。あまり詳しくはないのですが。
 ただ、「宗教国家」アメリカ合衆国とそういうものに対して何だかよくわからない態度の日本の違いか、正面切ってスピリチュアルなんてまともな心理学者や臨床家が言いにくい雰囲気がありますね。
 私は嫌いではないけど、ただでさえ「怪しい心理士」といわれているので、語り口には気をつけないとね(^^)。

Posted by: アド仙人 | January 26, 2006 at 11:59 PM

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