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February 07, 2006

アドラー心理学の種14・ライフタスク

 アドラー心理学の基本用語は大体取り上げたかなと思ってましたが、一つ忘れてました。ライフタスクという概念です。私たちが、実人生、生活の中で常に直面し、対処を求められ続けている課題のことです。

 あるライフスタイルを持った人があるライフスタスクに出会うと、必ずある一定の行動をします。たとえば、「すべての女性が私のことを軽蔑している」というライフスタイルを持ったひとが、女性というライフタスクに出会うと、必ず避けて逃げ出してしまう、というように。
 ライフスタイル×ライフタスク=行動

 アドラー心理学では、私たちが人生で対処、解決するべき課題を3つに整理しています
 仕事のタスク:職業、学業、家事や育児など生きていくのに必要な一切の生産的活動。子どもにとっては遊びも仕事のタスクに入ります。
 交友のタスク:他者とどう付き合うかとか、対人関係一般に関する課題。職場、友人、隣近所との関係。他者と人間同士として出会い、相互に尊敬し合い、協力するという、仕事のタスクに比べるとやや困難な課題。
 愛のタスク:主に異性関係と家族関係で、「運命共同体」的な関係に関すること。最も距離の近い関係で、クリアするのにかなり困難なタスク。

 他にもレジャー・タスクやスピリチュアル・タスクといった自分自身や宗教性との付き合い方などいろいろ考えられているようですが、実際の生活や臨床上ではこの3つに集約されてしまうはずです。
 これを学んだ若い頃の私は、人生をそんなに単純にまとめられるかと思いましたが、よくよく振り返って考えてみると、自分の生活は確かに3つのタスクに直面する連続なのだということに気づかざるを得ませんでした。
 私たちの人生は、これらにどう応えるか、ということを巡って様々な色合いが現れてきます。

 対人関係の距離でいえば、仕事のタスクが最も遠く、愛のタスクが最も近いので、愛の課題をうまくこなすことは、誰にとっても大変難しいものなのはわかるでしょう。もしかしたら100%成功している人なんていないかもしれません。
 愛のタスクで失敗すると、何らかの臨床的問題になりやすいかもしれません。だからといってそれで「病理が深い」という言い方はできません。
 仕事のタスクさえ何とかこなせていれば、愛や交友で失敗してても生きていけるからです。むしろ仕事のタスクがうまくいかないということは、その人はかなりしんどい状態で相当深い問題を抱えていたり、援助が難しいこともあるかもしれません。

 臨床的には、その人がどのタスクでどのような問題を抱えていて、どのタスクがよりうまくいっているかをアセスメントことが大切になるでしょう。仕事のタスクについて援助するか、当面交友関係についてカウンセリングしていくか、親との関係について絞っていくか、などとクライエントと協同で検討していきます。

 パーソナリティーとか無意識とか自我とか病理とかトラウマとか・・・は、いかにも心理学っぽい魅力に満ちていて専門家やマニアの関心を呼びそうですが、私たちがほんとうに最も大事にしなくてはならないものはそんな「心の中」ではなくて実はこれ、ライフタスクという世界からの問いかけなのだと私は思います。
 その問いかけに建設的に、創造的に応えるように自分や他者を勇気づけていくこと、大げさにいうと、ここに生きることの極意が秘められているのだと思います。

 ライフタスクに対して、われわれは態度決定を迫られます。ライフタスクへの応答の中で、われわれの共同体感覚が試されるのです。

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Comments

お久しぶりです。
アド仙人さんのブログを拝読するようになって,CBTの起源の一つにアドラー心理学があるということが,理論だけでなく実感を持って理解できるようになりましたが,この「ライフタスク」はCBTでいうところの「スキーマ」「ビリーフ」と同意概念であると思いました。どのタスクもしくはスキーマが重要か,ということは人によって違うのでしょうね。重要だからこそ,それがその人の脆弱性にもつながるのでしょう。(ただ,もともと基礎心理専攻の自分としては,CBTでいうスキーマと,たとえば認知心理学でいうスキーマという概念の整合性が不十分であることが,どうにも気になっているのですが)

> 私たちがほんとうに最も大事にしなくてはならないものは
> そんな「心の中」ではなくて実はこれ、ライフタスクという
> 世界からの問いかけなのだと私は思います。

このフレーズには全面的に同意します。私たちは心の中ではなく,世界の中で生きているのですから。言い換えれば,心とは世界との関係性のなかで機能するものですから。

クライアントさんとクライアントさんを取り巻く世界との関わりにおいて,さしあたってどのタスクないしはスキーマが問題となっているのかということを,仮説としてクライアントさんと協同的に検討していくということが,セラピーであるのだと,当記事を拝読して改めて整理できました。ありがとうございました。

Posted by: coping | February 08, 2006 at 12:42 AM

  copingさん

 いつも過分なお言葉ありがとうございます。
 CBTやアドラーのようなタイプの心理学は、理論システムが世界に対して開かれていることじゃないかと思います。「心の中」や「関係」を扱うとどうしても観念的というか、難解になりがち(それはそれで面白いけど)だけど、こちらには具体的な手だても豊富にあるし、やってて明るくなって楽しいし(笑)。

 スキーマなどの基礎心理系との理論的つながりなど、興味深いので是非貴ブログなどで勉強させて下さい。

Posted by: アド仙人 | February 09, 2006 at 12:22 AM

ライフタスクの考え方は、アセスメントの際にとても役に立つような気がしますし、聞き落とし防止にも効果を発揮する感があります。

分類系(?!)では、頼藤和寛先生の『正しく悩む』(新潮社)も四苦八苦ごとに大まかな対応(?!)が書かれていて参考になっています。

Posted by: ぐうたら三昧 | February 09, 2006 at 08:02 AM

 ぐうたら三昧さん

 そうですね。確かにアセスメントやインテークの際の情報収集で、これが頭に入っていると、効率的で整理しやすいですよね。やっぱり実践的な心理学だと思います。

 頼藤ファンとしては大体の本は読んでいましたが、その本はまだでした。いっぱい出していたんですね。先ずは図書館とかを当たってみるかな。

Posted by: アド仙人 | February 09, 2006 at 11:57 PM

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