潜在能力と武道
年度末と障害者自立支援法と異動が重なって超多忙を極める中、のんびりブログを見たり更新する余裕もなくなってます。
それでも現実逃避で巡回してたら、内田樹先生のブログがおもしろかったのでご紹介。
猫型合宿(くう・ねる・あそぶ・フロ・めし・さけ・ねる)
合気道の目的は(というよりひろく武道の目的は)、人間の潜在能力の最大化である。
「潜在能力」という言い方をすると、まるでひとりひとりの人間の中に固有の「能力の芽」のようなものが潜在していて、それに水をやったり肥料をやったりすると、だんだん開花する・・・というイメージを抱くかもしれないから、ちょっとまずいのであるが、ほんとうを言うと「潜在能力」は私たちの中に「潜在」しているわけではない。
それは「外部につながる」能力のことである。
たしかに人間の内側には「宝庫」があるのだが、その「宝庫」の扉を開いても、そこにダイヤモンドがあるわけではない。
扉が開くと、その向こうには「見たことのない風景」が拡がっているだけである。
人間の「中にあるもの」というふうに観念されているものは、実は人間の「外にあるもの」なのである。
内側に向かうのは、外に出るためである。
内側に向かうのは、「内と外」というスキームそのものの無効を宣言するためである。
そうなんだよな。自分が長年細々と武道をやってきたのは、ひとえに潜在的な何かを伸ばすためだったのは間違いがない。
でも潜在能力というと、何か超能力的なものをイメージされたり、一昔前の自己実現やニューエイジやヒューマン・ポテンシャル・ムーブメント的な感じがして、言葉に出すのをためらってしまうところがありました。
潜在能力は潜在しない、外部につながる能力である、「内と外」というスキームそのものの無効を宣言するためである・・・。
うーむ、いい言葉だ。さすが。
太極拳などの内家拳の体験やアドラー心理学でいう共同体感覚(「生得的な可能性」として潜在するものといわれる)やライフタスクをどう表現していくか、いつも悩むのですが、そのヒントを得たような気がしました(でも思想家の言葉は言い回しが高度すぎて、自分には使いこなせそうもないな)。
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Comments
私は潜在能力について、「耳を動かすのと一緒」と説明します。
誰でもできることだけど、出ない人には理解できない。
できる人には当たり前。できたからといって何がすごいわけでもない。
俗っぽい意見ですみません。
そういえば、内家拳という言葉でビビッときたのですが、
昔、某雑誌に載っていた大陸の先生の言葉で
「心意六合拳は内家拳」というものにすごいショックを受けたことを
ふと思い出してしまいました。
形意拳が内家拳というんだからきっとそうなんでしょうが、
なんて内家拳のイメージからほど遠い内家拳なんだろうか・・・と。
その時のショックが脳内で鮮やかに思い起こされました。
Posted by: ぺぺ | March 30, 2006 04:55 PM
ぺぺさん
そうでしょうね、できる人、わかる人にはわかるものでしょうね。ただ、そのままでは一部の才能のある人にしか伝わらない。武道の型、学問の理論、文学のメタファーは我々一般人がそれを学び、味わい、身につけるためのテキストだと思います。
心意六合拳はよく知らないのですが、形意拳の源流とか、いや同系統の別の発展形とかいろいろ説があるらしいですね。同種の趣があるということでしょうか。行き着くところは同じといってしまうとおしまいですが。
Posted by: アド仙人 | March 30, 2006 10:47 PM
潜在能力というと何か胡散臭いイメージを持っている人もいるようですが、要するに「できないと思っているだけで本当はできる」能力が潜在能力なのだと思います。詮ずる所「できないと思っている」壁の存在を一番知らないのが「できないと思っている」張本人なのではないでしょうか。
また、武道と潜在能力との関連については、日本の剣道と禅の関係を見ると何か見えてくるのではないかと思っています。
http://ameblo.jp/xyvero-haan/entry-10011761330.html
Posted by: xyvero-haan | May 06, 2006 07:08 PM
xyvero-haan様
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、私たちは自分のポテンシャルがわからない(だからポテンシャルなのですが)のでしょうね。だからこそ希望やら幻想が持てるのかもしれません。
知らないでいるのも素敵だし、そこへ探検するのも素敵だと思っています。
日本武道は禅や密教、中国武術は道教や仙道がバックボーンにあるのはよく言われることですね。私も太極拳や八卦掌という武術の稽古をすると、ほんとにこれは「瞑想」であり「行」だなと思います。
今後ともよろしくお願いします。
Posted by: アド仙人 | May 06, 2006 11:42 PM