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April 01, 2006

心理療法の方程式

 異動のために机や本棚を片づけたり、整理していたら、ヘイリーの「戦略的心理療法」を見つけたり野田俊作氏の論文集を発掘して、読んだりしたので全然進まない。
 そんな中、この二人が言語化しようとした心理療法の戦術とか方程式といったものについて考えてみました。

 野田氏によれば、すべての心理療法は同じ論理構造を持っているといいます(「心理療法学の科学性をめぐる電子書簡より」)。その公式とは、

 随意的なAをしなさい→そうすれば、不随意なBが起こるだろう

 私の目を見なさい→そうすれば、眠くなるだろう
 自由連想をしなさい→そうすれば、治癒するだろう
 箱庭をしなさい→そうすれば、心の中がわかるだろう
   ・・・・・・

 Aには他にも催眠や行動療法の各技法など心理療法の技が何でも入ります。Bにはクライエントが望んでいる現象なら何でもよいのです。

「すべての治療的コミュニケーションの構造はこうなっていて、催眠も精神分析も来談者中心療法も、その他治療というものは、みんなこの点では共通だ」
 というのです。
 でも、これでは範囲が大きすぎるきらいがありますね。

 先祖供養をしなさい→そうすれば、~がよくなるだろう
 憑き物祓いをしなさい→そうすれば、以下同文

 なんてのも入ってしまい、「真っ当な」心理療法家、カウンセラーが一緒にされたくないものまで入ってくる恐れがあります。でも、もしかしたら真実はそうかもしれませんよ。

 AとBには、真の意味での因果的/論理的な関連はなくてもいいのです。Aは随意的な行為であればなんでもよく、Bは患者が起こることを望んでいる不随意な現象であればなんでもよくて、その上で治療者と患者との間に、「AをすればBがおこる」という公式についての(明示的もしくは暗黙の)合意がありさえすれば、実際に、AをすればBが起こるのです。

 まさに「魔術の構造」です。一般の人や科学に携わる人たちが、心理療法に抱くいかがわしいイメージは、きっとどこかでこの論理構造に気づいているからかもしれません。
 ポイントは、セラピストとクライエントが、共有し同意し合っている「心の文化」があり、その上で共有する「治癒の論理」があれば、後はなんとでもなるかもしれない、ということです。「『Aの手続きをしてもらえば治る』と信じている人にはAの手続きしてあげれば治る」(野田)のです。
 私はこの日本のある地域では有能なセラピストでいられるかもしれませんが、アフリカの何とか族ではまるで役立たずになってしまうでしょう。 

 私はこの発想を知ったとき、ちょっとした解放感というか自由の感覚を得ました。アカデミックな狭いパラダイムにこだわることなく、エスニックなものに依拠することの方がより治療的になれる可能性があるからです。多少いかがわしくても、それが相手と共有できていればいいんだ、と。
 もっとも今の日本はとても均質化しているので、あえてそこまで思考の前提を掘り下げる必要はないことが多いと思いますが。

 現代のシャーマンになれる秘訣がここにあるかも。

 

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Comments

>随意的なAをしなさい→そうすれば、不随意なBが起こるだろう

確かにそうですね。
CBTの場合,理屈っぽいので
(いちいち理論的根拠を示すので),
また「協同作業」を重視しますので,

随意的なAをしてみませんか?。なぜなら理論的には,あるいはこれまでの研究によると・・・ということが言えるからなんです。
→そうすれば,不随意なBが起こるかもしれませんよ。それが起こる
かどうかを,一緒に確かめてみませんか?

ということになるかと思いますが,形式は一緒ですね。

このような形式は,すべての「相談」「アドバイス」「コンサルテーション」に共通するのでしょうね。弁護士なら,法的根拠をもとにアドバイスするのでしょうし,タロット占い師なら,タロットの理論をもとにアドバイスするのでしょう。カウンセリングの成果がいまいちで,その後,占いにいって突然霧が晴れたかのように調子がよくなったというケースがありましたが,それが生死や犯罪に関わることではなく,その人の生き方における意思決定の問題であれば,それでいいのではないかと思います。

またまた思いつきのコメントで失礼しました!

Posted by: coping | April 02, 2006 10:37 PM

 copingさん

 まさにCBTは、現代の「心の文化」にぴったりフィットしますよね。おっしゃている論理は、私も実際に心がけているところです。強制的、カリスマ的、父権的、また変に宗教的なのは自分の趣味ではないので。ただでさえ妖しい奴といわれているしね(笑)。
 ところで、書店で子供のための認知行動療法の本(題名忘れた)が出てるのを見ました。また児童臨床する事になったので、勉強してみようと思います。
 

Posted by: アド仙人 | April 02, 2006 11:31 PM

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