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May 10, 2006

日本の伝統?学級崩壊

 発達臨床の専門誌「発達 106号」(ミネルヴァ書房)に興味深い記事がありました。「孔子の国の子供たち 理想の先生」山本登志哉

 幕末から明治にかけて埼玉県で寺子屋を開いていた大野雅山(1825~1901)という先生の日記が実におもしろい。この先生はとても生徒達に慕われていたようで、村に報徳碑が建てられて祝われたほどの偉い人らしいです。

 その雅山先生が、手を焼いた「問題児」文吉(10歳)の記録をつけていました(「文吉行作日記帳」)。

 三月一七日 今日は小刀を持って裏庭に植えておいた木を切り歩き、それを止めるとののしり、また友達の持ち物を切る。机の下で昼寝をし、机を重ねてその上に座り、全然言うことを聞かない。全く困り切ってしまう。
 四月三日 この日も一字も習わず読まず、ただ机や文庫の上を歩き回って、教室中を騒がせ、止めればののしる。
 四月一七日 実に師匠を師匠と思わず、困り果てて筆舌に尽くしがたい。全く言うことを聞かず、教室でおちんちんを出して他の子に見物させ、これを止めようとしても全然聞き入れない。こんな子どもは百人に一人もいない。
 五月二日 千人に一人もいない(現代語訳)。

 いいぞ、おもしろいぞ、文吉君。幕末のADHD児に困り切った雅山先生は、「実に難渋至極、これ師匠の不運なり」という嘆きの言葉も記していたそうです。
 でもさらに興味深いのは、

 それほどの「問題児」に対し、雅山先生は口で止めるばかりでそれ以上に断固とした対処をせず、ただ困った困ったとぼやくだけだということです。少なくともこの日記が続く六月一五日まで、文吉はほぼ毎日のように寺子屋に通い、そして雅山先生はそれを追い出すことをしていません。

 それでは雅山先生は「指導力」がなかったかというとけしてそうではなく、みんなから尊敬される先生でありました。実はこんな光景は当時の日本の寺子屋では日常茶飯事、当たり前のことだったらしいのです。
 寺子屋を描いた当時の浮世絵には、やんちゃをして先生を困らせる絵がいっぱいあり、また当時の日本の教育水準をほめていた西洋人の記録にもそういうことがあるそうです。

 そもそも古来より日本には、子どもには本来「野生」というべきものがあり、むやみに押さえつけるのはよくない、伸び伸びとさせるのがよいといった子ども観があったらいいですね。
 筆者の山本氏は、

「日本の伝統学級崩壊」と表現できそうな姿が見えますが、そこには日本的秩序がある。明治以降の軍隊式一斉授業とこの伝統的日本的秩序の矛盾が噴出しているのが現在ではないでしょうか。
 いずれにせよこの「おおらか」な教育への姿勢は、文吉に断固として対処しない雅山先生にもよく現れており、そういう先生が多くの門弟から慕われて顕彰されていたということになります。

 と述べています。
 本誌には、雅山先生の肖像画も載っているのですが、これが実に優しそうなお爺ちゃんなんだな。文吉君に振り回される姿が、目に浮かびます。
 こんな寺子屋みたいな学校だったらいいな。
 

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Comments

アド仙人さま

面白い!

考えてみれば,そうですよね。
ADHDの概念が出来たからADHD児が発生したわけではなく,
ADHDに限らず,人間って,昔でも今でも,
そんなに変わらないはず。

ADHDなどとわざわざラベリングしなくても,
いつでもいろんな人がいて,
さらにいろんな人の周りに,さらにまたいろんな人がいて,
上手に対応できる人もいれば,困り果てる人もいるわけで,
「どう対処すべきか」などと新たな対処法を考え出すことも
もちろん大事ですが,
「これまでどんなふうにしてきたか」という視点から
さまざまな対応のあり方を発掘するということが大事だし,
何よりも楽しいのだ,ということがよくわかる記事でした。

私も自分の「野生」を大事にしようと思います(笑)。

Posted by: coping | May 12, 2006 at 11:16 PM

 copingさん

 ありがとうございます。
 私など、きっと文吉君と一緒になって悪ふざけをして雅山先生を困らせるクチで・・・。
 昔のエピソードっておもしろいですよね。今だったら解決できると思えることもあるけど、反対に現代にも通じる知恵が見つかったり、昔も今も変わらないのがわかって妙にうれしかったりで。
 お互い「野生」を大事にしていきましょう。

 ライブCBTも楽しみにしています。
 
 

Posted by: アド仙人 | May 13, 2006 at 12:44 AM

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