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November 03, 2006

「貧困」という装置

「発達」108号(ミネルヴァ書房)の連載、「家族パスワード」に面白い記事が載っていました。「『貧困』という装置」
 著者は家族療法家団士郎氏、長く京都の児童相談所にお勤めしていた方で、家族療法の草分けの一人です。
 一コマ漫画家の肩書きも持ち、軽妙な語りと含蓄のあるエッセイにはファンも多くいます。講義も関西の乗りの話術で笑いが絶えません。
 児相の世界では、はっきりいって「団さんを知らない人はもぐり」といってもいいくらい有名な方でもありますね。
 今は退職されて立命館大学大学院の教授らしいですが、研究者というより「実践家-アーティスト」モデルという感じのユニークな方です(ご本人はどう思っているか知りませんが)。

 その団さん、長年福祉臨床をやっているだけに、児童家庭問題と格差社会について感じさせる文章を書いています。長くなりますが引用します。

 格差社会が話題になる昨今ですが、何かあったときの備えという視点から見ても、とても危うく手薄い家族が増えています。保険ばかり掛けていても仕方がないのですが、綱渡りのような生活の家族が増えているように思えてなりません。

 全くです。現場にいると肌で感じますね。急増する虐待ケースの背景の多くに生活苦、貧困があるのは間違いがありません。そこを無視して、「母性の欠如」だの「心の問題」にしてはいけません。

 近年、誰かの身の上に起きた不運や不幸を自己責任で片づける傾向がますます強くなってきていました。私たちもそれに慣らされてきているように思います。でも、どう考えても不公平だったり、政治的無策の結果の貧困が個人に被せられています。

 団さんがある勉強会に出たら、経済的理由で修学旅行に参加しない子の話題が出ました。

 中学校ですから無論海外などではありません。積み立ても合計数万円。月額ならせいぜい千円か二千円くらいです。しかしこの準備のできていない生徒が、毎年複数あります。修学旅行期間中、彼らはいつものように登校して、留守番教員と過ごすのだといいます。そして悲しいことですが、これに学業不振がぴったり重なっています。
 あらかじめ奪われた希望といういい方があります。望んでも手に入らない状態が重なると人は、欲しくなくなってしまうというのです。与えられないことより、希望を持てなくさせられてしまうことの残酷さを思います。修学旅行なんて行きたくないという子は、勉強なんかしても仕方ないと思っている子なのです。そしてやっと高校に入っても、あっという間に退学してしまったりします。・・・・(中略)・・・・
 思春期を生きる子どもたちに、希望することから疎外されていることも気づかないような人生を生きさせるのは、あまりにも不公平だと思います。
 親の生き方の巧みさ、拙さが経済格差を生み、そこに育つ子どもたちには、準備される学習環境の格差として届きます。その結果が成績に如実に表れ、それが将来を大きく支配するかのような前提が成立しています。そして何も用意してもらえず育った子たちの中に、修学旅行も欠席だったという記憶が残ります。

 福祉臨床で出会うのは先ず貧困です。社会の矛盾の狭間に落ち込んだ子どもたちとどう付き合うのか、私たちは問われているはずなのに、どうも全体の流れはそれをネグレクトしようとしているように思えてなりません。
 

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