解説・風林火山2 諏訪の秘密
大河ドラマ「風林火山」は最近諏訪を巡る攻防がテーマになっていますね。
領主の諏訪頼重を自刃に追い込み、その娘(ドラマでは由布姫)を自分の側室にするなんて、武田晴信は当時から今でもひどい印象を持つ人がいるようですが、ことはなかなか単純ではないようです。
諏訪頼重は「風林火山」に限らず、これまでの小説やドラマでは、武田にあっという間に滅ぼされたことと神職であったということからか、何となく弱々しげに描かれることが多かったと思います。
しかし、諏訪は、大きな丸太を急峻な坂から落としてそれに乗っかろうとする有名な御柱祭にあるように、なかなか荒い気性の土地らしいですね。
そのルーツにはやはり、武田と同じく朝鮮騎馬民族の影が見えるのです。
岩崎正吾著「武田信玄はどこから来たか」(山梨ふるさと文庫)から引いてみます。
いうまでもなく、諏訪には諏訪大社がある。全国に5600ほどある諏訪神社の本社である。古くから神の土地なのである。
ここには明らかに渡来系と思われる神事が、さまざま伝えられている。御船祭りといって、船を御輿にして担ぐ。山国に御船祭りはおかしいが、祖先が海を渡って来たことを神事にしているのだろうと言われている。同じ性質のものだと考えられる神事に、御渡りという冬のものがある。諏訪湖が結氷した時、諏訪大社の神官が氷の上を渡る儀式だ。
御渡りは、大河では山本勘助が初めて由布姫を見た場面に出ていましたね。最近は温暖化で諏訪湖も結氷しないらしいけれど、なかなか神秘的な光景らしいです。
大陸や朝鮮から渡ってきた自分たちのルーツを、思い返す行事だったのでしょうか。
また、正月に氷の中から冬眠中の蛙を掘り出し、串差しにして、神に捧げる儀式がある。昔は蛙などではなく動物を生け贄にしたらしいが、近年は蛙で代用している。蛙こそいい迷惑だが、生きた動物を殺して捧げるというのは、農耕民族における神事ではなく、狩猟民族、騎馬民族に特有のものである。
ほう、これは珍しい。旧約聖書なんかによく出るけど、生け贄の儀式が日本でもこんなところにあったとは。
大祝(諏訪頼重もそうだった)の即位式の服装には、北方騎馬民族の影響があると、地元の考古学者、藤森栄一氏は述べている。・・・・ここでいう北方騎馬民族とは、一応高句麗ではないかと考えられている。諏訪付近には、高句麗遺跡だと考えられている積石塚が分布しているからだ。
積石古墳は、私の家の近くにもありますね。長野から山梨一帯にあるようです。やはり古代朝鮮の人たちが移り住んできた名残なのでしょうか。
渡来系、騎馬民族系の影響が見られる諏訪の湖には、その水底に巨大な竜蛇が住んでいるといわれている。諏訪大明神が竜蛇であることは、古来からよく知られている。そして、この竜蛇信仰は、新羅において盛んだったものである。
こう考えると、諏訪という土地は、高句麗系と新羅系が交じり合い、融合している場所ではないかという気がする。
高句麗系の諏訪氏と、新羅系の武田氏、両者の歴史は相当に深いといえるでしょう。
晴信(信玄)はそれを統合しようとしていたのかもしれません。
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