愛の頭突き?
W杯決勝、フランス対イタリア戦での問題のシーンといえば、ジダンがイタリアのマテラッツィに頭突きをして倒した場面でしょう。
ジダンは退場してしまいましたね。
試合後、ジダンは暴力行為をはたらいたことで世界中から非難を浴びます。しかし、それにもかかわらず、ジダンは大会のMVPを受賞します。これは異例中の異例のことらしいです。それほどジダンが素晴らしかった、その辺がサッカーに不慣れな日本人はわかっていないのかもしれない。
前回紹介の「サッカー世界一になりたい人だけが読む本」から、高岡さんの見方を聞いてみましょう。
松井(以下-)W杯ドイツ大会で、最も印象に残った選手は誰でしたか?
高岡 もちろんジダン(フランス)ですね。
- 私もジダンでした。今回のドイツ大会はロナウジーニョ(ブラジル)の大会になると予想して、最初のうちは彼に注目していたんですが、準々決勝のブラジル対フランスを見てもジダンの存在感は圧倒的でした。ただ、イタリアとの決勝戦の大詰め(延長後半3分)で、あの頭突きが・・・。
高岡 ああ、あれね、素晴らしいヘディングだったよね。
- ヘ、ヘ、ヘディングですか。
高岡 しかも、相手の心の中心めがけてね。
- はあ。
高岡 僕は、テレビで見た瞬間、「うわぁ、いいなあ」と思いましたよ。あれは暴力ではなくて、素晴らしいパフォーマンスですよ。
- 世界でも、そんな感想をもった人は珍しいでしょうね。
高岡 まあ、珍しいかもしれないね。でも、武術の専門家として見るとね、ジダンが暴力として攻撃するつもりなら、頭突きを相手のアゴか鼻に入れてますよ。鼻の下には急所があるからね。そして、鼻を狙っていたら間違いなく鼻骨が折れていただろうし、悲惨な光景になっていたでしょう。だけど、ジダンは、そうしなかった。実はとても優しく、いたわるように諭しただけだったんですよ。
- マテラッツィに、「君、そんなこと言うもんじゃないよ」って?
高岡 そんなところだろうね。だから、ジダンは、マテラッツィの心の中心に頭を埋めるようにしたんだろうと思うんですよ。ビデオで、もう一度あのシーンを見返してもらえばいいんだけど、頭突きといっても、ジダンは、とてもソフトに軽くコンとやっただけなんですよ。だけど、ジダンの体が非常にゆるんでいて(脱力していて)、バランスも最高だった。
- いわゆる「自然体」ですね。
高岡 自然体といっても、もう究極に近い自然体だからね。あの状態で「ヘディング」すれば、そりゃあ威力がありますよ。仮に、あれがゴール前でのヘディングシュートだったら、ボールはゴールネットに突き刺さっていたでしょうね。それほど素晴らしいヘディングだったから、マテラッツィの胸に軽くコンとやっても、その威力が素晴らしかった。
結果、どうなったかというと、マテラッツィは「ヘディング」が決まった瞬間には、何が起きたのか気づいてないよね。ジダンの頭が胸にソフトランディングしているんだもの。ガツンじゃなくて、ホワーンと当たったからね。それからジダンの体重が徐々に乗っていくと、マテラッツィにも衝撃が伝わり、ホワーンとひっくり返っていった。僕は、それを見た時に「さすが、ジダン、世界最高のパフォーマンス!」と思いましたよ。
- そういう見方もあるんですね。
ほんと、そういう見方もあるんですね。
暴力絶対反対の考えの人から見たらとんでもない暴論に見えるかもしれません。
でも、私は「さすが、高岡先生」と思いましたよ。常識にとらわれず、純粋に運動パフォーマンスと身体意識の世界の優劣から判断しているのですから。科学的思考ができ、武術という「暴力」の専門家だからこそ言えたのかもしれません。
実際、世界のサッカー界はジダンの「暴力」にもかかわらず、それを凌駕する何かを感じ、評価したのでした。
ロナウジーニョはフランス戦での敗因を、
「ブラジルにはジダンがいなかった」
からと答えたそうです。達人は達人を知る、ですかね。
高岡先生は、ドイツ大会でのジダンを、
サッカー界でいえばペレやマラドーナ、バスケットボールの世界では、あの「神」といわれたマイケル・ジョーダン、スキーの世界だったら1970年代に「北欧の天才スラローマ」と呼ばれ、アルペンスキーのW杯で歴代1位の86勝をあげたイエゲマル・ステンマルク、武術の世界では宮本武蔵とか、中国武術の王向薺とかね。
に匹敵する人物と評価しています。ちなみに私の気功は、王向薺老師から伝わるものです。がんばらなきゃ。
私のレベルでは、とてもわかりませんが、おもしろくて、おそらく本質に届いた視点だと思いました。
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