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July 18, 2007

甲野善紀さんのこと

 先週9日の「報道ステーション」、13日の「ナンだ!?」(いずれもテレビ朝日)に甲野善紀さんが出ていましたね。

 甲野さんの古武術で再生、レベルアップした桑田真澄投手や卓球全日本王者などが紹介され、最近甲野さんがよく取り組んでいる介護への応用を放映していました。古館アナやナンちゃんも驚きや感心を表しながら、好意的に接していたようです。

 スポーツ選手やアスリートの極意に迫るのがうたい文句の「ナンだ!?」に、いつ甲野さんが出るかと思っていましたが、ようやくの登場という感じです。内容がかなりマニアックですから、一般大衆の目に甲野さんが留まるまでには、やはり相当の時間が必要だったということなのかもしれません。

 有名税というか、甲野さんが知られるようになるにつれ、武道家や身体論に関心のある専門家(ブロガーも含む)から様々な批判や疑問も出されるようになったようです。
 特に時折熱心にする反科学的な発言に向けられることが多いように思います。

 ただ、これにも構造構成主義という新しい科学論を唱える人たちからは、好意的に迎えられていることもあり、科学に対する考え方、姿勢の違いにもよるのでしょう。

 私的には、古武術というフレームで人間、とりわけ日本人の失われた文化、身体の可能性に目を向けさせてくれた先駆者、第一人者としての栄誉は受けるべきだと思っています。

 齋藤孝や高岡英夫の出るはるか前の80年代半ばから、彼は活発な発言をしていましたからね。
 日本がバブルに浮かれて浮き足立っていた頃でも、和服と高下駄で通し、自身の考えを発表し続け、全くぶれなかったのは大したものだと思います。

 武道家で有名になる人は、嘉納治五郎にせよ大山倍達にせよ、大きな組織作りと強さを売り物にして「成長」していくケースが大半ですが、甲野さんは単身、自身の稽古と思索を感性的に紡いでいくだけで、人々の耳目を集めてきたのがすごい。

 しかも孤独なわりに、なぜか周囲に人が集まります。本人もおそらく人一倍寂しがりやで人を求め、人も彼にカウンセラーに話を聞いてもらいたがるように集まるのかもしれません。
 やさしそうな感じがしますものね。

 武術以外に、人と出会い、人と人をつなげる才能もあるように見受けられます。

 実は、私は僭越ながら、いまだに甲野さんとは会ったことも師事したこともないながら、いち早く甲野さんを見出し、注目していたと密かに自負しています。

 あれは昭和63年(1988年)、大学4年生だった私は、精神世界雑誌「たま」の書評欄を担当していました。
 生まれて初めて、ものを書いて原稿料をいただいていたのでした。
「たま」は今はなんか変な編集長が、たけしの番組で変な発言をして大槻教授と論争したりバカにされてますが、当時は静かな紳士の方が編集長で、古神道やニューエイジ、ポストモダン的な記事も載せた、落ち着いた内容の雑誌でした。
 トランスパーソナル心理学の吉福伸逸さんや中沢新一さん、ジャズ・トランペッターの近藤等則さんの対談なんかもありました。

 その書評欄で、私は甲野さんの「表の体育、裏の体育」(当時は壮神社、現PHP文庫)を取り上げ、激賞したのでした。

 そのせいか(マイナーな雑誌だったから関係ないと思うけど)、甲野さんはその筋では注目され、徐々に世間に名を成していったのです。

 その他、私のアドラー心理学の先生にはいつも甲野さんから献本が送られてきていると仰ってましたし、同じくアドレリアンの精神科医名越康文さんが甲野さんの畏友であったりと、何となくでも、甲野さんの空気が時に漂う世界にいたのです。

 私はこれから特に甲野さんとの縁ができるかどうかはわかりませんが(多分ないでしょう)、同時代の希有な感性を持った人材を見守っていきたいとは思っています。

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