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August 01, 2007

「ADHD 医学モデルへの挑戦」

 発達障害は、子ども心理臨床のメイン・テーマのひとつになった感がありますが、その中でもADHD(注意欠陥多動症候群)ほど、捉えがたいものはないでしょう。
 病気?個性?障害?才能?

 実際に「確かにこれは大変だ」と納得できるものから、「なんでこれが『問題』なんだ?」と周囲が騒いでいても納得できないケースもあり、実に判定や助言に悩ましいことが少なくありません。

「ADHD 医学モデルへの挑戦-しなやかな子どもの成長のために」R・シュミット・ネーブン他著,明石書店

 ネーブンはイギリス精神分析の拠点、タビストック・クリニック出身の心理療法家、他に小児神経科医と行動科学者の共著です。
 訳者は、日本における発達障害臨床の代表的格の児童精神科医、田中康雄氏。

 十分に信用できる陣容です。

 「発達障害」ADHDは医学的診断名でありながら、「生物学的マーカーの不在」であり、「行動を観察し、行動に注目し診断するしか方法のない」根拠あやふやなものであることを本書は訴えています。

 著者たちは、英米においてもたくさんの子どもがADHDと安易に診断され、投薬されている現状に強い危機感を感じていて、訳者の田中氏も昨今の状況に同じ思いを持っていたそうです。

 僕も同感でした。

 医学的診断が無駄といっているわけではなく、むしろそれを含む生物心理社会的視点biopsychosocial perspective(健康であるか病気であるかは、生活上の生物学的、心理学的、社会的因子の複雑な相互作用によって決まるという考え方)によって多次元的にADHDを捉えるべきだというのが基本的主張です。

 当然といえば当然の考え方なのですが、どうしても問題をはっきりとさせたくて、医学的、直線的因果論に陥りがちな現場にとっては大切なことです。

 アドラー心理学は元々文脈心理学といわれるほど、個人と対人関係、社会とのつながりを強調するものですし、児童相談所は児童福祉司の社会診断、児童心理司の心理診断、医師の医学診断を総合して判定することになっていますから、組織として生物心理社会的視点をもっているところが有利ではあります。

 ADHDについて、専門的に、かつ広い視点を学ぶには必須の本だと思いました。

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