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January 26, 2008

「気の心理臨床入門」

 中国武術と共に気功法をたしなんで20年あまり、自分の入門した道場の気功以外に機会を見つけていろいろな気功法のグループや指導者に接してきました。

 やってみると、気の修練は体だけでなく、「心」に影響を与える良質な心理療法ともいえることに気づきました。

 同じ道場に通う人で、コンピュータ・サイエンスをやっているある大学の先生と仲良しなのですが、彼は科学研究の傍ら、長年様々なサイコ・セラピーを受けて「自己探求」の道を歩んでいました。彼曰く、
「トランスパーソナルもユングも、ゲシュタルトも、ニューエイジ系もたくさん経験してきた。しかしこの武術は何かが違う。少しずつ、体と心の深いところから変わっていくような感じがする。白人が作ったものは、どんなセラピーもどこか底が浅いと感じる。これは何かが違う」
 と常々もらしていました。

 私も彼の言うことにとても共感でき、心理臨床に東洋的身体行法を取り入れることは意味のあることだろうと感じていましたが、表立ってやることは意図的に避けてきたように思います。

 それは、公的機関という比較的固い現場にいたせいもあったかもしれません。
 また、私は武術志向が強いので、治療法や養生法、精神的行法としては意識して実践していなかったこともあります。

 ただでさえ「変人」といわれているのに、面接で気功法をやっているなんて知れたら何いわれるかわかったもんじゃない(笑)。
 せいぜい動作法止まりかな。

 誰か気功と心理臨床について書いてくれないかなと思っていたら、出ていたのが、
「気の心理臨床入門」黒木賢一著,星和書店

 アメリカで臨床心理学を修め、神戸で開業している方です。元々トランスパーソナル心理学に関心があったようですが、境界例のクライエントにたくさん会って消耗する中で、境界例の人はダイレクトにセラピストの無意識に進入してくるという「気のパワー」に気づいたそうです。
 そして、日本人には日本人の心身に合ったものがあるのではないかと疑問に思い、気功法に出会ったようです。

 以前から大阪、神戸には津村喬氏はじめ、気功法に先進的に取り組んでいる人たちがいました。黒木氏はそういう方々との出会いがあったのでしょう。

 氏は気功法の修練をしながら、心理臨床にどのように気を取り入れるかを考え試行錯誤しながら実践していき、その成果が本書となったのだと思われます。

 本書では、東洋医学と陰陽五行などの気の思想、気功法の基本的な考え方の紹介・解説が全体の3分の2を占めていて、最後の方に著者が具体的に「気」をどう心理臨床に実践しているのか説明しています。
 スタンス的にはやっぱりトランスパーソナルとユング心理学がベースになっているのかな。確かに相性は良さそうだな。

 心理臨床・カウンセリングに携わっていたり、関心があって、さらに東洋医学や気功にも触れてみたい人には、格好の入門書になると思います。

 そういえば、精神分析系の臨床家にカリスマ的人気のある神田橋條治氏は、かなり気功法に造詣が深く、事例検討会でも気の話や技術を開陳されると聞いています。私の知り合いの精神科医も、肩こりを神田橋氏に気功で治療してもらったと話してました。

 現代社会の「科学的」ヒーラーである心理臨床家にとって、「気」は臨床家の裏メニュー・スキルとなっていることが意外に多いのかもしれませんね。

臨床心理士 黒木賢一ネット

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