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May 10, 2008

「発達障害の子どもたち」

 子ども臨床、子育て支援、教育をしている人にとって、避けて通れないのが発達障害についての理解。
 最近は出版数も多く、とても個人では追い切れませんが、また一つ良書が出ています。

「発達障害の子どもたち」杉山登志郎著,講談社現代新書

 愛知にいる先生ですが、お名前は全国区です。日本の発達障害児臨床を牽引している一人ですね。
 本ブログでも、山梨に来た折りの講演会、先生が訳されたRDIの本を紹介したことがあります。
「RDI対人関係指導法」
発達障害と子ども虐待

 本書の冒頭に先生は、ちょっと挑発的な問題を仕掛けています。抜粋してみます。
 次の考えは正しいか否か。

・発達障害は一生治らないし、治療方法はない。
・発達障害児も普通の教育を受ける方が幸福であり、また発達にも良い影響がある。
・通常学級の中で周りの子どもたちから助けられながら生活することは、本人にも良い影響がある。
・養護学校卒業というキャリアは、就労に際して著しく不利に働く。
・病院に行き、言語療法、作業療法などを受けることは発達を非常に促進する。
・なるべく早く集団に入れて普通の子どもに接する方がよく発達する。
・幼児期から子どもの自主性を重んじることが子どもの発達をより促進する。

 発達障害に接するとき、常識や経験にとらわれてはいけません。
 これらはみんな「誤った見解か、あるいは条件付きでのみ正しい見解であって一般的にはとても正しいとはいえない」のです。

 それなりに長い間関わってきた私にはとても納得がいきます。
 その理由は本書で述べられていますから、疑問に思った方は是非お読み下さい。

 精神遅滞、自閉症、アスペルガー症候群、ADHDらの説明はもちろん、それら発達障害の代表選手に加え、子ども虐待を発達障害と捉える視点は最重要です。

 また、早期療育のあり方、特別支援教育や学校の選び方、著者が行う薬物療法の実際などとても参考になります。

 実際に臨床や特別支援教育に携わる人や学生にも役立ちますし、親御さんにも(実際我々より勉強されている方は多いわけで)、親の思いを大事にしながらも少し俯瞰的な視点から我が子の方向性を見直すにはよいのではないかと思いました。

 本書の良さはいくつもありますが、私が深く同意したのはそれら「診断名」がつくものだけではなく、曖昧な領域、境界知能についても言及しているところです。
 その辺は次回に。

 

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Comments

こんにちは。
こちらでこの本を知り、斜め読みをしているところです。
というのも、子供が書字に関して学習障害のようなところがあるのでは、と感じてきたからです。
何箇所かに相談しましたが、どこでも「鏡文字のようなものを書きますか」と聞かれまして、そうではない、と、この子の心配な点を話しましたが、「心配ありません」ということでした。単に能力の問題、と言われてるみたいでした。そうかもしれませんがどうも納得いかないのです。
一口にLDと言っても、さまざまな症状があると思います。
また、正直LDであろうがなかろうがどっちでも良いのです。
困っている点について、どうしたら本人にとって良い方向に変化させられるか、工夫の仕方を知りたい、ヒントをいただければ・・・と思っているのです。もちろん、親としてもない知恵を絞っているのですが、専門家の意見をお聞きしたいのです。
思ったのですが、学校や専門家は、良いほうにも悪いほうにも大きく外れている子供にしか注意が向かないのでしょうか。仕方のないことですが。だから親がこうして一人、なんとかしてやりたいとじたばたしているわけです。
あー、山梨県人になりたいです。信頼している方に「心配ない」と言われれば納得できるような気がしますしね。
長くなりました、すみません。今後もブログ、楽しみにしております。

Posted by: akino | June 04, 2008 at 01:59 AM

 akinoさん

 ありがとうございます。

 お子さんが書字障害かどうか、心配されているのですね。
 どのようなところがそう思えるのかわかりませんが、専門の先生がはっきりいえないということは、なかなか微妙なのでしょうか。

>困っている点について、どうしたら本人にとって良い方向に変化させられるか、工夫の仕方を知りたい、ヒントをいただければ・・・と思っているのです。もちろん、親としてもない知恵を絞っているのですが、専門家の意見をお聞きしたいのです。

 そこでしょうね、問題の要点は。
 僕だって的確に判断できるか心許ないですが、お子さんの「個性」をどう見るか、そしてそれを限界のある教育環境の中でどう生かしていくか、ということだと思います。

「診断」がつかない場合、かえって難しいことがあるのはよく経験します。

 またわからないことがあれば、お尋ね下さいね。

Posted by: アド仙人 | June 04, 2008 at 11:03 PM

こんにちは。お返事どうもありがとうございました。
たぶん、「障害」といえるものではなく単なる「能力が劣っている」ということなのだと思います・
ただ、それを「個性」と言ってよいのかどうか。私には“真実に目をつぶった、見栄えのいい表現”としか思えません。アド仙人様を批判しているのではありません。今の教育界では良く使われているようですが、能力が劣っていることがプラスに働くことがあるでしょうか。「能力の低さ」を「生かし」ていくことのできる事柄があるのでしょうか。明らかなハンディでない限り、それは考慮されることはありません。この子は生まれつきの片耳高度難聴です。それでさえも明らかなハンディではありません。傍から見たら普通に見えるし、実際本人も慣れたのか、何とか普通にやっています。片耳難聴は、結構いるらしいですね。でも先日、私も何かの拍子に片耳に膜が張ったようになり、あまりの聞こえにくさに驚きました。
単に「能力の低さ」と見られることならば、何とか向上させたいと思うのは親心でしょう。
毎日あっという間に過ぎていきます。これをしたらどうか、と親が思うことも、ろくにできずに過ぎていきます。だから、ヒントがほしいんです。
では、読んでいただいてありがとうございました。

Posted by: akino | June 10, 2008 at 02:19 AM

 akinoさん

 確かに世間では「個性」が体のいい建前になっているきらいはありますね。
 話がプライベートな部分に入りそうなので(お困りでしたらメールででもお聞きします)、ここでは、「行き詰まっていいるときは原理原則に帰れ」という習った教えに基づいて、大枠を述べます。

 アドラー心理学は個性を大事にしますが、ごまかしはしません。
「器官劣等性」というその人の弱いところが人格形成に大きな影響を与えていることを認めています。

 しかし、それをどう捉えるか、「劣等感」を本人がどのように感じて、「補償」しようとしているかを重視し、建設的な方向に進めるように「勇気づけ」をしていきます。
 客観的なハンデの大きさと心理的なハンデ感はあまり関係がないと思います。

「能力の低さ」を向上するには、その領域で克服するか(ひどいどもりだっのにアナウンサーになった小倉アナのように)、違う領域で補償するか(盲目で音楽家になったスティービー・ワンダーのように)、大きく二つの方向性があるといいます。

 でも、あくまでそれは本人の課題、親やカウンセラーにできるのは当事者との話し合いと勇気づけだけだと思います。
 

Posted by: アド仙人 | June 11, 2008 at 12:10 AM

お返事ありがとうございました。
おっしゃることはわかります。そのとおりですね。
自分の浅さ、狭さを感じます。
もっと先を見て、待つことも大事ですね。
そして、その子の意思と自主性を信じて待つことでしょうか。 
今のところ本人は、不都合を感じてはいても親ほどには深刻に受け止めていないように思えます・・・。
「あまり大げさに騒がないほうが・・・」とある教師にも言われましたが、自分の子供しか知らないせいか、どうしても目先のことを心配してしまいます。
以前アド仙人様が紹介されていた『よい子のお母さんは聴き上手』を、ぱらぱらとめくり返してみました。
できるならもう一度子育てをやり直したいです。
こうなったのは長年にわたる私の子育ての結果なのですから。
修正するにも同じだけの時間がかかることでしょう。
一番行き詰っているのは、私自身です。
もしご迷惑でなければ、メールさせていただいてもよろしいですか。そのうち・・・。

Posted by: akino | June 13, 2008 at 12:07 PM

 akinoさん

 もし必要なら、かまいませんよ。
 あまり責任を持ったお答えはできませんが。

Posted by: アド仙人 | June 15, 2008 at 12:33 AM

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