ベイトソン・セミナー
6月初旬に東京代々木で開かれた日本家族研究・家族療法学会のワークショップに上京。
私は「ベイトソン・セミナー」に参加しました。
20世紀最高の思想家・グレゴリー・ベイトソンを改めて見直してみるという試みです。
講座ではベイトソンが定式化し、家族療法の理論的、認識論的基盤となったダブル・バインド理論を打ち出したことで超有名な(はずの)「精神分裂症の理論家に向けて」(精神の生態学)を事前に読んできた参加者がいろいろな感想や思いを出し合って議論し合うという、ある意味シンプルなものでした。
講師は文化人類学者・野村直樹氏、家族療法家・吉川悟氏。
お二人とも若い頃からベイトソンに深い影響を受け、人生や学問の指針にしてきたようです。
しかも野村氏は、カリフォルニアのエサレン研究所でベイトソン本人に会ったことがあるとか。
うらやましい。
私自身は、何を隠そう、大のベイトソンかぶれだったのです。「精神の生態学」、「精神と自然」など、ベイトソン自身の著作はもちろん、関連書で邦訳されたものはほとんど読んでいると思います。「精神の生態学」は、ウンウン言いながら原書でも読んだな。
その事情は以前に書いたことがあります。http://taichi-psycho.cocolog-nifty.com/adler/2005/08/post_318d.html
だから普通学会のワークショップというと、何か新しい技法を学び取りに行くことが多いのですが、今回はベイトソンを取り上げると聞き、学会員でもないのに思わず飛び込んでいったのですね。
私の思想スタイルというものがもしあるとするなら、それはまさしくベイトソンの影響があるのは間違いがありません。
アドラー、ベイトソン、ウィルバーが私の若き頃の座右の書でした。
いずれも異端の巨人といえますな。
参加者は、若き家族療法家や心理学者で「ベイトソンは今回初めて読んだ」、「大学院で読まされたけど何だか全然わからなかったから改めて勉強しようと思った」という方から、私と同様若い頃ベイトソンの思想に大きなインパクトを受けた臨床家や医師まで、ベイトソンにはまり度は様々でした。
でも、みんなベイトソンの面白さや革命的な認識論的展開に気づいて、参加したみたいです。
私も、公の場で大勢の人とベイトソンを語り合うことができて大満足でした。
しかし、読んで下さった方は、ベイトソンなんて知らない人がほとんどでしょうね。
多分家族療法をやっている人だって、ダブル・バインドは知っていてもベイトソンの論文を読んだ人は少ないようです。
「だって、ベイトソンって難しいんだもの」
という感想をよく聞きます。
確かにそうかもしれない。
でも、まだ心理学や哲学を学び始める前にベイトソンを知った私は、「そんなものかな」と正直あまり難しいと思ったことはありませんでした。
むしろ、その後、大学でおこなう「まっとうな」心理学に適応するのが大変でしたね。
そんな思想や抽象的なことが苦手な人でも、ベイトソンの思想に触れることのできる格好のやさしい本が出ました。
それは次回に。
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