成長とは体が固まること
体がゆるんでいるとスポーツなどの運動パフォーマンスが上がることはよく知られていますが、それらは人間関係にも当然影響します。
「蔓延する心の問題は『ゆる体操』で解決できる!」高岡英夫著から。
長年の研究の結果、私は一人の人間の体がゆるむと、ゆるんでいない他者にも影響を与えるのではないかと推測しています。
これは、人間本来の動物的なコミュニケーション能力によるものです。別の表現をすれば、「共感能力」という言い方ができるでしょう。人はこの共感能力が高いがゆえに、人のなかで育つことによって、言語をはじめとする膨大な記号体系や習慣を習得していくのです。
最もゆるんでいるのは、赤ちゃんです。ぷにょぷにょのあの体は、ゆるみすぎてて、立つことも首を支えることもできません。
生後1年をかけて、首が固まり、腰の付け根が固まり、次第に座位からハイハイ、立っちができるようになっていきます。
つまり、
人間の成長というのは、『体が固まるプロセス』なのです。逆にいえば、人は生まれたときがもっともゆるんだ体をしています。さらにさかのぼるなら、お母さんのお腹のなかではゆるみきった状態だったといえます。
赤ちゃんっていいよね。
よく他の生物に比べて、早産として人は生まれてくるというけど、その分あらゆる可能性に開かれていて、見ているこっちまで幸せになります。
しかし、人はいつまでも至福のゆるゆる状態に留まることはできません。
時間と共に、人間という修羅の世界に入る準備をしていかないといけません。
注目すべきことは、このプロセスが進む一年間の間に、言語体系の原形-喃語であるにしろ-が、赤ちゃんのなかでできあがってくることです。
これはつまり、“立ち上がる”という身体の硬縮プロセスと、“言語を習得する”という人間の根源的な能力の発達が、同じ期間に行われているということです。
そうしてわたしたちは言語から始まって社会的ルール、規範、知識、労働を学んでいきながら大きくなり、どんどん体は固まっていきます。
何十年も生きて、中年にもなるとガチガチ、カサカサでゆるみも潤いも何もあったもんじゃない。
いやになっちゃうな。
しかし、一部にはその赤ちゃんの時の「ゆるみ」を維持して、あるいは育ててさえきた人がいると高岡氏はいいます。
それが例えば、スポーツや武術の世界の達人、超人といわれるような人や、学問や芸術の天才たちだといいます。
この辺は高岡氏の他の著作にたくさん「実例」があげられています。
本書には、その逆の体と心が固まるとどうなってしまうのか、どうしたら脱出できるようになるのかが語られています。
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