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December 09, 2008

アドレリアン・大前研一

 もう一月前になりますが、ビジネス誌「週刊ダイヤモンド」「使える心理学」特集というのをやっていました。

 同誌は神田昌典さんとか人気のビジネス・自己啓発リーダーがいつも出ているらしいのですが、畑が少し違う私はこれまで読むことはありませんでした。

 しかし今回は得意の心理学の特集、「心理テストはウソでした」の村上宣寛富山大学教授が「ビッグファイブ理論」を紹介したり、ハイダーのバランス理論、交流分析やグリーフケアなどの基礎的理論から、血液型性格診断のウソ、商品開発やセールス、宣伝での心理学の利用(悪用?)の例がたくさん出ていて、けっこう真面目に心理学していて、「なるほど、こうやって心理学は使われているのか」と知ることができてためになりますよ。

 しかもその中で、アドラー心理学が取り上げられていたのです。

 アドラー心理学を絶賛していたのはなんとあの大前研一氏

 実は大前氏は以前からアドラー心理学に密かに注目し、社員、部下に書籍を勧めていたという情報を得ていましたが、今回それを初めて明らかにしたようです。
 大前氏はアドラー心理学を本当に気に入ってくれ、自らの生き方、考え方に取り入れていました。
 経営者らしく好奇心旺盛で、頭の回転が速く、やたらパワフルな人だと思っていましたが、正直、これほどアドラー好きとは思いませんでした。

 大前氏の「特別提言 ビジネスに心理学を活用せよ!」は6ページに及ぶのですが、その中でアドラー心理学に関する部分を全文引用します。

「心理学に2つの大きな流れ プラス思考のアドラー心理学」
 心理学は根本的には二つしかないと私は思っている。フロイト心理学とアドラー心理学である。
 フロイト心理学はたとえば幼児期の怖い体験が一生トラウマになるといった考え方で、リビドー(本来強い欲望を意味するラテン語。ジグムント・フロイトの解釈では性的なエネルギー)という概念に基づいて構成されている。

 一方のアルフレッド・アドラーは、フロイトと同じ研究室にいたのだが、考え方はフロイトと正反対であり、心の持ち方によって人生はいくらでも変わるという心理学を唱えた。要するに「この世の中は楽しいものだ」とポジティブに考える。ポジティブに考え始めると、人生にはよい回転がおこるというのだ。

なにか課題に対して、常に「私にはできるに違いない」と向き合い、今できなければ「あと三年かけたら絶対にできるようになる」と考える。そのように考えて努力を続けるアドラー派と、「子どもの頃にああいう恐怖の体験をしたから、今の私はこうなっている」などと、運命論を語るフロイト派では、人生に大きな開きが出ることだろう。

 いきなり大前さん、素人の強みで「心理学にはフロイトとアドラーしかない」などと極端なことを言いだしましたが、関係者の皆さん、怒ってはいけません。
 でも、これ、特に臨床心理学に関しては、いいところを突いていると思います。

「哲学の歴史はプラトンとアリストテレスの焼き直しだ」みたいなことを哲学の世界ではよくいわれると、哲学科出身の認知科学者の友人に聞いたことがありますが、臨床心理学が誕生して100年余り、全ての学派はフロイトとアドラーの創ったパラダイムに乗っかっているかのように私には思えるからです。

 私が出会った賢者はアドラー派がほとんどだ。松下幸之助さんは小学校中退だからもちろん英語を喋れないのに、フィリップスがすごいと思ったらオランダのフィリップスに勉強しに行ってしまう。そこで、経営を徹底的に学び、事業部制の骨格を作ったのだ。ヤマハの中興の祖である川上源一さんは、ピアノを作るためになんと会社の資本よりも大きいピアノを造ってしまった(1947年ピアノフレームの鋳造を開始。後にピアノ生産量世界一に)。

 他にも私はさまざまな戦後の経営者と仕事をさせていただいたが、偉業を成し遂げた経営者は皆「できないかもしれない」とはほとんど考えない。超ポジティブ思考でずんずんと進み、次々と壁を突破していくのである。稀代の経営者である稲森和夫さんや本田宗一郎さんもまさにこのタイプだ。

 じつは私も典型的なアドラー派である。どのくらいアドラー派かというと、人生で「私にはできない」と思ったことがない。阿呆なのである。戦後、日本を世界第二位の経済大国にした原動力は、後先考えない超ポジティブ思考。アドラー心理学であったと考えている。

「後先考えない超ポジティブ思考」がアドラー心理学かどうかは、しかも「阿呆」と一緒にされてしまって、真面目な正当派アドレリアンの「玄人」には疑義のあるところかもしれませんが、でもそういうところがあるのも事実でしょう。

 むしろ精神分析学のように文学的でもなく、行動療法のような科学そのものでもない、しかし臨床という弱者の救済から、教育、自己啓発、そしてビジネスという強者同士の競争社会のトップクラスまで幅広く魅了し、使いこなせば大いに役に立つアドラー心理学の真骨頂だと思います。

 まさに阿呆=愚者の知恵=真の賢者といえるでしょう。

 ここまで褒めちぎってくれたのだから、大前研一氏を名誉アドレリアンに認定したいと思います!

 同誌はもう書店にはありませんが、バックナンバーがあるようなので、よかったらこちらからお買い求め下さい。http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001HZFQ92/yamanashirito-22

 

 

 

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