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January 05, 2009

「子どもの最貧国・日本」

 大学駅伝は、母校早稲田と地元山梨学院大は優勝争いに絡んでただけに残念でした。
 家の近所には学院大の寮があって黒人選手がよく走っていたけど、あれがモグズ選手だったのかな。

 今年最初に取り上げる本は、正月にもかかわらず、全然景気のいい話ではありません。

 年末から世間では派遣切り、リストラの嵐が吹き荒れているのは、周知の通りですが、そのような経済弱者の家庭はどうなってしまうのか、取り分けそこの子どもにはどのような影響があるのかを詳細に分析し、対策を論じている好著があります。

山野良一「子どもの最貧国・日本-学力・心身・社会におよぶ諸影響」光文社新書

 著者はなんと同業者、神奈川の児童相談所で児童福祉司を現役でやっている人であります。
 お会いしたことは多分ないと思います。

 児童福祉司は若い頃私もやっていた時期がありましたが、一般にケースワーカーといわれる職種で、児童福祉、児童虐待対応の現場の最前線に立つ仕事です。
 いわば社会の貧困層、下層階級的立場の家族に対して、日々緊急的、切迫した対応を強いられる、相当にストレスフルな毎日です。
 もし、子どもの命に万が一のことがあったら、マスコミや世間からいの一番に責めを追うことになってしまいます。
 だから、福祉に携わっている人たち同士の中でも、命じられなければできればやりたくない人が多いといわれるくらい大変な激務なんですが、なんと著者は日本の児童福祉司だけでは飽き足らなかったのか、途中、3年間休職してアメリカのワシントン大学ソーシャルワーク学部の大学院に渡り、児童福祉の最前線を学んできたというかなりの強者です。

 家賃を払えず児童養護施設に預けられる3歳のミヤと4歳のシン。生活保護の申請を受理してもらえず、給食の時間までぐっとお腹が鳴るのを堪える小2のタクヤ・・・今や7人に1人の児童が経済的に困窮しており、ひとり親家庭はOECD諸国中で最貧国である。
 日本は、アメリカと並ぶ最低水準の福祉となってしまった。しかも、日本だけが事実を無視し、対策を取らず、貧困の子どもたちを社会的にネグレクトしている。
 本書は、この問題に対して私たちの認識を研ぎ澄ますために書かれたものだ。日米の児童福祉の現場経験を踏まえ、理論・歴史・統計などの多角的な視座で実態を検証し、解決策を考える。

 本書は、日米の貧困と子どもを巡る深刻な問題を、統計的研究やアメリカの貧困研究の蓄積の整理・紹介、著者が体験した実際の貧困家族の姿の描写、日本の貧困対策のお粗末な実体の告発まで、実にわかりやすくまとめてくれています。
 素晴らしく充実した内容です。

 私のように現場に立つ人間としては、個々の事例やそこから導き出される結論はほんとに共感できることばかりで、しかも経済的、政策的なマクロの視点もきちんと抑えていて、ほんとに素晴らしい。

 元々著者は経済学部出身らしく、社会科学的な視点もしっかり持てるところが、私のような現場しか知らない人間にはない強みになっています。

 とまあ、絶賛ばかりしていても仕方ないので、是非、多くの方に知っていただきたい内容ばかりなので、しばらくかいつまんで紹介していきたいと思います。

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