甲野古武術の科学性・3
「構造構成主義とは何か」より、甲野善紀氏の古武術を科学論から評価してみるとどうなるか見てみましょう。
そして、甲野はその技の改良・進展過程を数十にわたる著書や雑誌、ビデオの中で説明し、また、そして自身のwebサイト(http://www.shouseikan.com/) に克明に記録していることから、「構造化に至る軌跡」を残しているということができる。
さらにいえば、甲野善紀は一度身につけた技は、場所や相手を選ばずに繰り返し再現できることから、再現可能性は担保されている。また、その技をかけられた人がどのようになるか宣告した上で、実際、技をかけることによりその通りにすることも可能なので、この意味で、予測可能性も制御可能性も担保されているといえよう。また、甲野は「稽古会は実験室」と述べているように、・・・・(中略)・・・・その技の有効性は常に現実で試されることから、反証可能性も確保されているといえる。
以上のことから、甲野善紀の古武術は、再現可能性、予測可能性、制御可能性、反証可能性を満たしており、まぎれもなく人間科学の実践に位置づけることができるといえよう。
このように一見科学とは見えない甲野氏の武術的実践は、立派に科学の要件を満たしていると考えられるのです。
こう考えると、これまで人目をはばかるように(?)続けてきた武術の稽古が、「実は科学的営為だったんだ!」「僕も『科学者』だったんだ!」と思えてきてうれしくなりますね。
そして、甲野氏の古武術が生み出した身体技法が、バスケットボール、野球、卓球、サッカー、ラグビーなどのスポーツから楽器演奏、工学、介護、精神科医のカウンセリング、JAXA(宇宙航空研究開発機構)まで幅広い分野で応用されてきていることから、
このように領域やテーマを問わず援用(継承)可能なのは、それが「原理」と呼ぶにふさわしいほど抜本的に動き方の質を変更する「理路」を提供しているからに他ならない。
と普遍性・応用可能性を指摘しています。
多くの普通の人は、目に見えるものや数値化できるものを語ることが科学的だと思い込んでいるでしょうけど、科学とは「考え方」「現象との付き合い方」であり、武術は科学の原理を満たし得ると知ることは大事なことだと思います。
甲野氏が研究し、武術の先人たちが作り上げてきた身体技法や思考法は、本質的に科学的精神の賜物なのです。
長年「非科学的なことをやっている」と思われていた身(被害妄想?)としては、科学とは何かを考えるときに、また理論武装をするときに、構造構成主義科学論はとても参考になり、役に立つような気がしました。
どういうものか知りたい方は同書をお読み下さい。
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