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May 06, 2009

樹林気功の師

 私が学んでいる気功法は、王向斎-王樹金という世界最高峰の実力と伝統を継いでいると誇っていいものだと思います。もちろん自分ができるという意味ではないですが。
 その伝統との出会いを作ってくれた我が師には本当に感謝しています。

 現在大成気功と呼ばれるその気功法は、健身や養生の要素を持ちながらも、伝人が武術の達人であったこともあって、基本的に武術の基礎鍛錬のための気功法といえます。

 私は日々それに取り組んでいますが、若い頃はその傍ら自分なりに気を研究すべく、様々なところに出向いていました。その中で、私に深い影響を与えてくれた気功の達人に何人か出会いました。
 そのお1人を、今は消息不明なので(ネットで検索してもはっきりしない)、思い出を残す意味でしばらくここに書き記そうと思います。

 その師は、今田求仁生(いまだくにお)、という人です。

 今では気功をやっている人でも知らない人がほとんどだと思いますが、ある時期、日本の気功のあり方に静かだけど大きな影響を与えたといえる人です。

 80年代末から90年代の初頭、既に日本にはちょっとした気功ブームが起こっていました。
 先進的なカルチャーセンターや武道場では、気功法を取り入れ始め、太極拳は楊名時氏の24式を中心にかなり普及していましたが、太極拳と同時に気功法をもうたい文句にし始めるところが増えていました。

 しかし、そのブームの中で宣伝や参加者たちの姿勢として目立っていたのは人を倒すとか、超能力を得るとか、病気から治るといった「パワー志向」「自分本位」の気功ばかりでした。
 そんな状況下で、今田氏は突如気功界に現れ、自分が強くなるためのパワー志向の気功ではなく、樹木などの自然との気の交流、人との気の交流を通して、「いのちの営み」に気づき、癒し合い、いのちの質を高めていこうという主旨の樹林気功を提唱したのです。

 今田氏は、本来弱い存在である人間が他者とつながり合い、他の生物や自然とつながるためのエコロジカル・エクササイズとしての気功が本来の気功の姿だとしたのです。

 万物斎同、とでもいえ、いのちひとつらなりを訴えておられました。

 今田氏が提唱した樹林気功という言葉は、新鮮な響きを与え、当時出始めた森林浴という考え方ともマッチしたのか、気功業界で取り入れられ、急速に広がっていきました。
 今田氏は、当時日本の気功を先導していた津村喬氏と共に活動したこともあったようで、津村氏が積極的に樹林気功を実践して見せたことも大きかったと思います。

 私は山梨で今田氏と親交のある人たちと出会い(その中に前々記の羽中田氏がいました)、彼らが気功の会を開いて今田氏を呼び、山梨に来ていただいた時に何度もお会いし教えを受けました。

 今田氏は、当時40代はじめ、いつも作務衣に草鞋姿で、たくましい体躯に日焼けした髭面の男性でした。一見おっかないお顔なのですが、眼差しは柔らかく、笑うと深みのあるやさしい表情になりました。
 自然や植物のことに造詣が深く、一緒に山の中にいると「食べられる植物がいくつもあるね」と一目ですぐに分かるようでした。この人と遭難しても大丈夫だ、なんて思ってしまいます。しかし、よくいるアウトドア派というには全く甘く、佇まいや動きはまさに野生の動物という感じでした。
 私は初めて会うなり、「この人はただ者ではない」と確信しました。

 実際日本中の森や山岳を踏破しているといってよいくらいで、ある時お会いしたら、「京都から山梨まで山中を歩いて来た」と聞いたこともありました。
 昔の忍者や山伏や山の民が動いた「裏の道」が日本列島にはあるのだというのです。信じられない話ですが、今田氏を見ると、「この人なら山を越えて日本中歩けるだろう」と納得してしまうのです。

 その今田求仁生とはどのような人か、まず略歴から紹介します。これがまたすごい。

1948年 福岡県生まれ。11才の時から老師に中国拳法、気功、東洋医学の手ほどきを受ける。
1973年 渡仏。クロード・ルフォール国立社会科学高等研究院教授につきメルロ・ポンティ研究。77年ジャック・デリダ国立高等師範学校哲学教授につき「身体概念と言語」について研究。
1978~83年、インド、ネパール、中国にてアーユールヴェーダ、チベット医学を調査研究。パリ大学医学部医療人類学研究所にて、比較医学を研究。
1987年より 樹林気功を提唱。
1988年 ペルーの第2回国際伝統医療会議に出席。
1989年 樹林気功に基づいた「みどりといやしの会」発足。代表世話人。

 なんとポストモダン思想のあのデリダに師事していたとは。 
 それだけでも破格の知的・行動的スケールを感じてしまいましたが、その今田氏がどうして樹林気功を提唱するに至ったのか、その道程がまたすごいので、次回に記します。

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Comments

こんばんは。
以前、大麻の記事で、
一度オリーブというHNでコメントさせて頂きました。
アド仙人さんは今田求仁生先生と面識がおありなんですね。すごい。
 
>>樹木などの自然との気の交流、人との気の交流を通して、「いのちの営み」に気づき、癒し合い、いのちの質を高めていこう

今田求仁生先生のお人柄がにじみ出ているように感じます。
 
氣功をやりたいといろいろ探しても、なかなか「お!」というものには出合えず、特に「スーパーマンになれます!」のような気功法にはちょっとウンザリしていたところ、
とあるネット書店のメルマガで、藤田雅子さんという今田先生のお弟子さんが書かれた「やさしい樹林気功」というすばらしい本を知ることになりました。

木や森から、「気をもらいに行く」という動機が無くなってしまいました。

いつかアド仙人さんにヒューマンギルドでお会いしたいです。
ありがとうございました。
次回も楽しみにしてます^^

Posted by: 勇樹 | May 08, 2009 at 09:46 PM

 勇樹さん

 今田さんの名を知っておられたのですか!
 藤田さんとは住処が離れているのでお会いしたことはありませんが、今田さんと共に学んだ気功仲間は知っていると思います。

 樹林気功の発想はすばらしいですよね。

 私も大いに啓発されて、今でも影響を受けています。

「気をもらいに行く」のではなく、「樹木と気の交流をする」という発想でやっていけばいいですね。

 いつか勇樹さんの体験も教えて下さい。

 

Posted by: アド仙人 | May 09, 2009 at 12:15 AM

今田さんを検索していたらたどり着きました。

COP3の後
1998年に屋久島にお邪魔したのを覚えています。

愛知県で脱原発の運動をしております。

Posted by: 宮井留志(ミヤイ ルウシイ) | August 25, 2011 at 04:37 PM

 宮井留志さん

 今田さんにお会いしたことがあったのですね。
 1998年というと、私がお会いした後のころですね。

 亡くなったという噂がありますが、どうなのでしょう・・・。

Posted by: アド仙人 | August 25, 2011 at 05:08 PM

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