RDI・2つの知性
発達障害の援助で効果的なRDIの考え方で、私がなるほどな、と思ったのは、人間の知能・知性のモードは2つあるとしたことです。
スタティック・インテリジェンスとダイナミック・インテリジェンスです。
スタティック・インテリジェンスとは、固定的な知識や行動パターンの蓄積や、それらをコピーのように再現・反復する能力のことで、より具体的には、知識や概念操作、ルール、特定の課題に対する特定のスキル、マニュアル的行動などを意味します。
教科学習や知能テストのような課題には有効で、変化のない状況での問題解決には役立ちます。
ダイナミック・インテリジェンスとは、、絶えず変化する複数の情報、同時に生起する情報を処理する能力で、複雑な現実の生活や対人関係の中で問題解決し、学習するのに必要な能力のことです。
ものごとを多面的、多方向から見る能力であり、獲得したスキルや知識を実際の状況に柔軟に応用することには不可欠な力といえます。
また経験の共有や共同作業につながる能力でもあります。
どちらも人間には大切ですが、とりわけ、今の複雑・高度化した社会ではダイナミックに複雑な刺激、情報を処理することが求められているので、ダイナミック・インテリジェンスの不調、欠陥は大きなハンデとなります。
特に自閉症、アスペルガー障害の人は、このダイナミック・インテリジェンスの発達が何らかの生来的な脆弱さのために阻害され、やむを得ず、生きるための適応戦略としてスタティック・インテリジェンスの使用に頼ってしまう、偏ってしまう状態と容易に想像がつきます。
彼ら特有の極端な収集癖やこだわり、関心のあるものの名前を覚え続けたり、決まり切ったパターン的な順序や生活にこだわる、驚異的な記憶力は、その現れでしょう。
しかし、SST(社会生活技能訓練)などで、トレーニング場面でのパターン的な挨拶や断り方などやり方を覚えても、いざとなった日常生活では、全然うまく使えない、応用が利かない、つまり般化しないという話はよく聞きます。
スタティック・インテリジェンスしか使えていないからです。
スタティック・インテリジェンスをいくら伸ばしても、ダイナミック・インテリジェンスを伸ばすことはできないとRDIは考えているようです。
よく発達障害教育・臨床でいわれる「本人の得意なところ、良いところを伸ばしましょう」は、短期的な目標達成には良いけれども、本質的な解決にはなり得ないのです。
むしろ、自閉児の強さ(知識・パターン・スキルの蓄積)を強調し、それを伸ばそうとすることは、彼らの発達・能力の偏りを強化、増やしてしまうと考えられます。
難しいところですが、たくさんの発達障害児に会ってきた身にとっては、とても納得のいく話でした。
そして、アドラー心理学でいう共同体感覚は、このダイナミック・インテリジェンスの働きが関わっているのではないかと思いました。
高度な協力の姿勢、状況判断が求められるからです。
発達障害児とは、共同体感覚の発達において、ハンデを背負っている人たちといえるかもしれません。
では、ダイナミック・インテリジェンスを伸ばすにはどうしたらよいか、これがRDIの眼目ですが、私にもまだ十分に学べていません。ヒントは得ましたが、これから、さらに学びを進めていきたいと思っています。
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