« 心理臨床学会自主シンポジウム | Main | 統合失調症の背景 »

August 17, 2009

「精神分裂病者への接近」

「精神分裂病者への接近」B・H・シャルマン著,岩崎学術出版

 精神分裂症schizophreniaは、今は統合失調症と名を改められていますが、本書は原書が1968年、この訳書が1978年に出ていますので、その改名がされるはるか前なので、病名が古いのですね。
 だからその辺はご容赦を。

 ISBNもなく、もう古書といえる本をなぜ今回紹介するのかというと、日本語で読めるアドラー心理学に基づいた統合失調症について書かれた数少ない、ほとんど唯一の書だからです。

 本書には統合失調症の内面と対人関係の有様が実にわかりやすく描かれており、さらに個人精神療法での対応のコツ、治療技法もふんだんに説明されています。

 アドラー心理学は子育てとか教育とか、いわゆる「病気でない」人を対象にする「健康人むけの心理学」と思われることが多いようですが、しかしアドラー自身も精神科医でしたし、著者のシャルマンも相当に力量のある精神科医であったことがアドレリアンの中では知られています。
 アドラー心理学を使いこなして精神医療を行うことは十分に可能だったのです。

 私は現在児童相談所から精神病院に勤めが変わって、これまでの子どもから、たくさんの大人の統合失調症の患者さんと付き合う生活になり、若き日に読んだ本書を今、改めて読み返してこの病気について勉強することにしました。
 そして、発見と確認を繰り返しています。

 これから自身のためにも本書から内容を引用、メモしていきたいと思っています。

 それにしても、本書は「精神分析双書」のシリーズの一環として、出されたもので、他にはウィニコットやカーンバーグなど名だたる精神分析家が出ています。
 面白いのは精神分析を専門にされていたと思われる訳者たちが、本書の内容のあちこちにつまづき、戸惑っている様子が読みとれ、「そんなはずはない。精神分析ではここはこういうべきだ」みたいな納得いかないといった反応を、訳注やあとがきなどで縷々述べているところです。

 気づかぬうちにマギャクの精神分析学とアドラー心理学がぶつかっていて、苦笑いというか、アドラー心理学が日本に紹介される前の時代であり、仕方がなかったのでしょう。

 認知行動療法やナラティブ・セラピーのような、ほとんどアドラー心理学と相似形のアプローチが台頭している現在、温故知新じゃないけど、アドラー・マニアとしてはこれから本書も折に触れ、取り上げていきます。

|

« 心理臨床学会自主シンポジウム | Main | 統合失調症の背景 »

Comments

「本書からの内容の引用とメモ」を、たのしみにしております。
僕には、統合失調症の友人がいます。
どうすれば治癒が進むのかということよりも、どういう生活を保つことが「本人にとってより幸福なのか」ということを、少しでも知りたいと思っています。
心の優しい穏やかな人です。社会に出て働くことは、多分できないだろうと思われますが、競争のない場所では、たくさんの人に慕われている温厚で柔和な性格の持ち主です。

神経症とかアルコール依存症の人たちには、医療の援助以外に自主的に参加する「自助グループ」があり、自助グループが、助け合いと学習・自己教育・社会生活トレーニングの場として大きな機能を果たしています。
回復と治癒の過程で、自己への責任能力も再育成され得るし、社会復帰も可能な種類の疾患だからだと思います。

しかし、統合失調症の場合は、もちろん重軽度にもよりますが、学習や訓練によって社会復帰と社会適応を目指すべき疾患ではないように(自身の素人目で観て)感じております。

その人個人にとってのベターで「幸せな生活スタイル」というものを考えてしまいます。

障害者や精神疾患者に限らず、老人や子供、また宗教や文化の異なる人たちについても同じですが、各人や各グループの「幸福な生活スタイル」が尊重され・保障される社会&世界であってくれればいいなぁ、と願っています。

理想を語らせていただきました。

Posted by: しんぷる | August 18, 2009 03:02 AM

 しんぷるさん

 おっしゃるとおり、統合失調症の方は、ほんとに心穏やかで優しい人が多いですよね。私もいつも癒されています。
 でも、世間一般のイメージがその正反対になりがちなのが悲しいです。
 何とかしたいと思っていますが。

 選挙も近いですが、私もそれぞれの夢と身の丈に合った「幸福な生活スタイル」が保障される社会になればいいと思います。

Posted by: アド仙人 | August 18, 2009 09:56 PM

アドラー心理学は読んでいるとたしかに『ふむふむ』と思うのですが、私は教科書に載っているようなことしか存じませんので引用・メモの記載を楽しみにしております。
久しく日心臨へもご無沙汰をしていますし、このblogを非常に楽しみにしています。

Posted by: ゆうぼう | August 22, 2009 11:23 AM

 ゆうぼうさま

 コメントありがとうございます。

 アドラー心理学は難しいことは書いてないのですが、かえって本だけではなかなか実際の姿はわかりにくいような気がしています。

 できるだけアドラー心理学をご存じない方にもわかるように書きたいと思っていますので、よろしくお願いします。

 

Posted by: アド仙人 | August 23, 2009 01:36 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 「精神分裂病者への接近」:

« 心理臨床学会自主シンポジウム | Main | 統合失調症の背景 »