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January 26, 2010

ポジティブ心理学とアドラー心理学

 アドラー心理学をベースに心理臨床をしていて最も不自由なのが、参照すべき日本語の文献があまりに少ないことです。
 ワークショップや研修で直接学んだことを思い出しながら、数少ない翻訳されたアドラー心理学の専門書と子どもの教育向けの一般書を手がかりに、現場で試行錯誤しているというのが現実です。

 そんな欲求不満を少しでも解消すべく、英語がろくにできないのを省みず、北米アドラー心理学会(The North American Society of Adlerian Psychology)に入り、できるだけアメリカの文献に当たるようになりました。

 四苦八苦しながら読んでいると、アメリカのアドレリアンたちの研究や実践がうかがえるようになって、よくわからないなりに、とても面白く感じるようになりました。
 そこで、最近届いた最新号(Volume65,Number3,Fall.2009)から、面白そうなのをピックアップし、関心のある方の参考に供したいと思います。

 英語の得意な方やアドラー心理学による臨床や援助活動に関心のある方、一緒に勉強しませんか?
 助っ人待ってます。

 まず1本目は、最近日本でも紹介され始めたポジティブ心理学とアドラー心理学の相似性についての研究論文。

Social Interest and Positive Psychology:Poedsitively Aligned

Partick J.Barlow,David J.Tobin,and Melissa M..Schmidt

 ポジティブ心理学とは、これまでの病理解釈中心の臨床心理学では十分に人間を捉え、援助することはできないと考え、より健康的な側面、強みや長所をいかに伸ばすかを重視する心理学のようです。

ポジティブ心理学: Positive psychology)とは個人や社会を繁栄させるような強みや長所を研究する、近年注目されている心理学の一分野です。1998年にマーティン・E・P・セリグマンが米国心理学会会長のときに提唱しました。その後、その趣旨に賛同する多くの学者や応用実践者が集まり、共に研究や応用を進めています。

今までの心理学は非健常者に焦点があてられ研究されてきました。精神的障害やその克服がおもなテーマでした。多くの理論が発表され、セラピーも生まれました。ポジティブ心理学は対象や方向が違います。健常者がより良い生活やイキイキと仕事が出来るための研究を進めているのです。

ポジティブ心理学の定義

普通の人がより仕事のやりがいを感じ、より生きがいを感じ、本当に幸せに生きるための科学。それが「ポジティブ心理学」です。(Wikipediaより)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%82%B8%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6

 私はポジティブ心理学について詳しいわけではないのですが、知り合いの若手アドレリアンの中にポジティブ心理学に注目していた人もいて、何となく知ってはいました。

 しかし、今回チェックしてみると、知れば知るほど、ポジティブ心理学はアドラー心理学とクリソツなのにビックリ。

 なのに、日本でもアメリカでもポジティブ心理学側からアドラー心理学への言及はあまりないようで、ポジティブ心理学はもっぱらそれまでの病理中心の心理学(おそらく精神分析学や精神医療で主流の臨床心理学)との対比で自己の差別化を図っているようです。

 本論文は、アドラー心理学の重要概念である共同体感覚(Social Interest)とポジティブ心理学で重視している諸概念(希望Hopeや楽観主義Optimism、強みStrengthsなど)との関連性を試行的に検討したものです。

 アブストラクトだけ引用します。

To investigate the influence of Individual Psychology on positive model of mental health,the researchers examined the relationship between Individual Psychology and positive psychology by predicting that social interest would be correlated with the constructs of hope and optimism.Participants included 43 students from graduate program in counseling.Social interest was significantly correlated with hope and optimism,and optimism was more significant than hope as predictor of social interest.These results support the contention that social interest and positive psychology are positively correlated.Recommendation for further research are discussed.

 アドラー心理学の共同体感覚(social interest)を測定するSosial Interest Indexとポジティブ心理学のポジティブ度を測定するLife Orientation Test と希望の程度を測定するAdult Trait Hope Scaleの相関を研究したもののようです。
 そんな尺度があるのですね。どのようなものか全く知りませんが。

 著者たちは、アドラー心理学とポジティブ心理学は「個人の強みに重きを置くアプローチ(strength-based approach)」であること、「人の行動は目標志向的なもの(goal oriented)」と見なす点で同じであり、連携できるものであり、アドラー心理学の影響とポジティブ心理学の最近の貢献を互いに認め合うことが、メンタルヘルスの向上を促進するだろうと、結論づけています。

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Comments

アブストラクトを翻訳してみました。
しんぷるの愚訳でございます。


『個人心理学が精神的に健康な実際モデルに与えている効果を調べるために、研究者たちは、個人心理学とポジティブ心理学の関連性を研究した。
共同体感覚と、希望・オプティミズムを合わせた概念は、相互に関連し合っているのではないか、という予測を基に調査をすすめた。
研究班の中には、大学院のカウンセリング研修科の学生43名が加わった。
共同体感覚と希望・オプティミズムとの関連性が顕著であることは、明らかとなった。しかも、共同体感覚についての予見どおり、オプティミズムのほうが希望以上に重要な意味を持っていた。
この調査の結果は次の説を有力にした。つまり、共同体感覚とポジティブ心理学が相互関連しあっていることは、明らかな事実である。
今後の更なる研究の必要が、検討されている。』

文学・文芸の翻訳家を目指していますが、英語力と文化理解キャパが不足しています。日本語表現力は(国語教師でもありますので)わるくないようです。

アドラー心理学も、できるだけ英書で勉強して行きたいと思います。

ポジティブ心理学のご紹介、ありがとうございました。

Posted by: しんぷる | January 27, 2010 at 05:09 AM

 しんぷるさん

 わかりやすい訳をありがとうございます。
 これですっきりした感じですhappy01

 短時間でさっと訳されるなんて、すごいですね。
 これからもこういった紹介は続けていきますので、是非協力して下さい。

Posted by: アド仙人 | January 27, 2010 at 11:59 PM

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