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February 17, 2010

「ブラザー・サン・シスター・ムーン」

「ブラザー・サン・シスター・ムーン」恩田陸著,河出書房新社

 私にしては珍しく小説です。しかも青春小説!

ねえ、覚えてる? 空から蛇が落ちてきたあの夏の日のことを――
本と映画と音楽……それさえあれば幸せだった奇蹟のような時間。
『夜のピクニック』から4年、恩田陸が贈る、青春小説の新たなスタンダードナンバー誕生! (amazon内容紹介)

 新聞書評で取り上げられたのを見て、ずっと気になっていたのでした。

 時代は80年代半ば、 同じ高校を出て同じ大学に進学した三人(女の子一人、男の子二人)の微妙に重なりそうで重ならない、それぞれの四年間の大学生活を描いたものです。

 舞台は明らかに早稲田大学、恩田陸さんは初めて読んだけど、私より一つ年上で同じ早稲田出身なんですね。
 つまり同じ時代に、同じキャンパスで時間を過ごしていたことは間違いがないわけです。お会したことはないけど、きっと学食や生協や早稲田通りの古本屋なんかで、すれ違うくらいはあったでしょう。
 小説には、80年代半ば頃の時代状況や大学の様子が絶妙に描写されていて、その空気感を共有した者として、読んでいると何度も「あの時代の自分」が甦ってフラッシュバックのようになって自身の記憶が甦り、ページをめくる手が止まったのでした。

 最初に出てくるミステリー小説好きの綾音という女の子のつぶやきです。

 記憶って本当に不思議だ。一年、二年、三年、四年と順ぐりにおさまっているのではなく、まさに「順不同」で四年間があたしの中でひとまとめになっている。
 こうして思い出すのも断片ばかり。
 それも、毎日のように行っていた喫茶店の、トーストの付け合わせのサラダのドレッシングの味とか、大学から駅までの続く古本屋の店頭の百円均一の文庫本の灼けた背表紙、店内に入った古本の匂い、がらんとしたラウンジの不思議な静けさ、半地下の部屋の中にこもった空気の独特の肌ざわり。大教室の後ろの方に座ったときの奇妙な安息感。そんなものばかりで学生時代の記憶はできている。p22

 私は作品の登場人物たちとは全く違う活動をしていたけど、「こんな青春だったよな」という感慨に耽ってしまうことしばしばでした。
 それは単純に懐かしいだけでなく、胸がうずくというか痛むというか(別に悪いことはしてないけど、ちょっとしか・・・)、さらに充実感というかあの年頃にしか味わえないポジティブな気持ちも重なって、不思議な感じです。

 小説的に、恩田ファン的にどう評価されているかは知らないけど、私にとっては久々にヒットの小説でした。

 

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