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March 01, 2010

アドラー式ペアレント・トレーニングの効果

 アドラー心理学の教育や臨床への貢献として代表的なのは、世界に先駆けてペアレント・トレーニング(親教育、以下ペアトレ)を導入し、多くの悩める親や子どもに関わる人を支援してきたことでしょう。

 アドラー心理学に基づいたペアトレの特徴は、原因志向ではなく目的志向で未来志向、「深い内面」より行動に重点を置くが、問題行動の消失というより「勇気」や「所属感」といった心理的にポジティブな性質に焦点を当てていること、「結末の体験」などのように操作性より子どもの主体性を重視し、子どもにいかに民主的な人間関係を学んでもらうかに焦点を当てているところでしょう。

 日本にも既にいくつもの団体やコースがありますが、私が所属するヒューマン・ギルドのSMILEはすでに20年以上の歴史を有し、数千人が受講しているはずです。

 受けてみて、やってみると、このアドラー式ペアトレはとてもいいものだと思えるのですが、それをどのようにアピールしたらいいのかと考えると、意外にその資料は少ないところがありました。

 最新の北米アドラー心理学会誌(volume65, Number 3, Fall 2009)に、その一つとしてこんなのがありました。

The Impact of Adlerian-Based Parenting Class on Self-Reported Parental Behavior

Jody Mcvittie and Al M.Best

Abstract

Public health research shows that the authoritative parenting style protects youth from risky and dangerous behavior.The purpose of this study was to evaluate whether Adlerian-based parent education classes influence parental behavior in the direction of being more authoritative.To this end,over 1,250 participants completed assessments at the end of 110 Adlerian parenting classes in the United States and Canada.Parent-guaidians reported statistically changes in behavior:setting clearer limits,increasing their sense of positive connection, and decreasing harshness.These changes toward a more authoritative parenting style (based on parent report of their own behaviors) were statistically significant.The greatest changes were in younger parents, women, those with the lowest income, and those fewer children.Results were also useful for the parent educators in assessing their teaching.

 効果的なペアレンティングとはどのようなものがあって、どれが良い子育てといえるのか、著者はいくつかのパターンを先行研究から示します。

 子どもに対して要求的で指示的、でも応答的ではない「独裁主義的親(authoritarian parents)」
 要求的であるよりも応答的で、子どもとの直面を避ける「許容的で非指示的親(permissive or nondirective parents)」
 要求的でも指示的・支持的でもない「拒否的、無視、関わらない親(rejecting-neglecting or disengaged parents)」
 要求的で応答的で子どもの行動にはっきりとした基準を示す「権威的、毅然とした親(authoritaive parents)

 このうち、子どもの心の健康や学業成績に最も良い影響を与え、非行や薬物へ走るリスクを小さくするのが最後のauthoritaiveな親ということです。「権威的」と訳すべきかは迷いますが、「毅然とした」といった意味でしょうか。

 つまり甘やかすのではなく、罰や叱責的な指示で脅すのでもなく、もちろんネグレクトするのではなく、ある程度しっかりとした一貫性のある態度で、しかし民主的にきちんと子どものニーズに応答する態度が最も有効だということです。

 そういう親を作るのにアドラー心理学のペアトレは大変有効だというのが結論です。
 実際、「毅然さとやさしさfirmness and kindness)」がアドラー心理学の育児の基本ですからね。

 著者はアメリカとカナダに広がるアドラー式ペアトレの110の講座の1,250人の参加者に自己評価式の調査をして、多くの親が講座を受けたことで、「明確な限界を設けること」「子どもとの肯定的なつながりを持てるようになったこと」「荒っぽいやり方は減ったこと」へと変化したことを報告したそうです。

 1,000人以上もデータを集めたとはなかなかすごいですね。裏を返せば北米にそんなにアドラー式ペアトレの講座があるということです。

 最初に言ったように、日本にも既にたくさんの方がアドラー式ペアトレ講座があるので、こういう調査は是非やってみるといいですね。
 誰か一緒にやりませんか?

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Comments

こんばんは!
いつも深沢先生の記事は大変勉強になります。

調査・・・いいですね~^^
やってみたいです!

ただいま学会の原稿に苦戦中です。
急がねば・・・(><)


Posted by: 勇気づけママ | March 02, 2010 at 10:11 PM

 勇気づけママさん

 ボクは原稿出しちゃったもんね!ヽ(´▽`)/
 がんばって下さい。

 日本中のスマイル関係者と共同研究なんていいですね。
 それにはデータ処理のできる心理統計の専門家がほしいな。ボクも苦手で。
 ぐうたら三昧君にお願いするか・・・。

 なんて、ついマジに夢想しちゃった。

Posted by: アド仙人(深沢) | March 02, 2010 at 10:58 PM

すごい!
興味のある記事です。

Posted by: カリス魔保育士 | March 18, 2010 at 12:33 AM

 面白いですよね。

 カリス魔保育士さんも大学関係者だから、研究をやりませんか?
 
 アドラー心理学の良さをうまく研究に乗せることが必要だと最近思っています。
 
 
 

Posted by: アド仙人 | March 18, 2010 at 10:37 PM

こんばんは

もっか10年以内に、投稿しようとちびちび動いております。
研究費用がないのがたまに傷です(゚ー゚;

Posted by: カリス魔保育士 | March 22, 2010 at 03:00 AM

 カリス魔保育士さん

 期待しています!
 でも、アドラー関係はマイナーだから研究もいろいろ大変ですよね。

 できることがあったら協力させていただきます。

Posted by: アド仙人 | March 23, 2010 at 12:11 AM

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