今の子どもはゆるめない
高岡英夫氏の「ゆるめる身体学」に少し戻りたいと思います。
本書は以前の記事に紹介したように、 「ゆるめる身体学」 ゆるむことは全ての根底 心身をゆるめることの重要性とメカニズム、効果を説いていますが、その後で最近の社会状況を「ゆるむ」という視点から考察しています。これがとても面白い。
高岡氏は、子どもや若者の問題、特にひきこもり・ニートなど不適応を来している青少年について、彼らは世間の言うような「たるんでいる」という見方は全く間違っていると主張します。
むしろ「彼らは心身がゆるめていない状態である」のです。
その辺の考え方を追ってみましょう。
彼ら(社会不適応症候群と本書では呼んでいます)がそのような事態に陥る原因は資質や家庭環境、学校のいじめなど千差万別ですが、共通しているのは、
普通の人だったらそれほど緊張したり恐怖を感じたりしない場面でも、過剰な反応を起こしてしまう。緊張や不安を感じるというのは、これまでお話ししてきた「締まる」・「たるむ」、「ゆるむ」・「固まる」の概念でいえば、締まることである。筋肉のレベルで見ても、精神のレベル見ても締まるのである。
では心身が締まっていると人はどうなるのか?
では、なぜ、この場合、締まることが問題なのかというと、彼らは普通ならそこまで締まらなくていいときに締まりすぎる。さらに、普通だったら締まらないような場面でも締まってしまうからである。だから、彼らは締まるという反応を、強度的にも頻度的にも多くしているのだ。
締まってばかりいると人間は固まる。広範囲で変化幅に富んだ、「締まる」・「たるむ」の反応を、状況に合わせて自由自在にできなくなってくる。つまり、ゆるみがなくなってしまう。「ゆるむ」・「固まる」の数直線でいうと、固まる方に偏ってしまうのである。その結果、全身的に血液・体液の循環が悪くなる、代謝が衰える、脳活動も衰える、全体的にも精神的にも、機能が低下してくるのだ。
対人関係と心身の悪循環が強化され、エスカレートされた結果がひきこもりだったりニートだったりするわけです。
まともな大人が彼らを前にして、「おまえら、たるんでるぞ!」と怒りたくなる気持ちもわかりますが、それはやはり的はずれ。
ところが、厳密にいえば、彼らはたるんでいない。というよりもたるめない人たちなのだ。なぜかといえば、すでに固まっているからである。ニートの特徴は固まっていることなのだ。だから、彼らはたるむこともできなければ、締まることもできないのである。
私はニートの青年たちにずいぶん会ってきたが、彼らは一様にボーっとしている。ボテッとしている。その様子を、普通の人たちはたるんでいると批判するのだが、本当のところは、たるんでいるのではなく、固まっているのだ。
これは本当によくわかる!
完全に同意します。
精神病圏であれ、神経症圏であれ、発達障害系であれ、不適応になってしまった子ども(もちろん大人も)の共通性とは「固まっていること」に尽きると思います。
だからこそカウンセラーやセラピストに最も求められるのは、自身が無上にゆるんでいること、そして相手をゆるめさせる存在であることです。
プレイセラピーはもちろんそうだし、カウンセリングでのユーモアが必須なわけがそこにあります。
そのためにも、催眠や自立訓練法のような静的なリラクゼーションだけでなく、ゆる体操や気功法のスワイショウなど、ダイナミックなリラクゼーション法は身につけていた方がよいでしょう。
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