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August 08, 2010

科学に再現性はいらない?

 諸富祥彦著「カール・ロジャーズ入門」(コスモスライブラリー)は前記事の通り、ロジャーズ派心理学、カウンセリングの入門書として最適なのでお薦めなのですが、その他に気になる内容があったので記します。

 同書後半にはロジャーズの主要著作が紹介されていて、その中に「Carl Rogers Dialogues(カール・ロジャーズ対談集)」(未邦訳)という本が出ています。
 ロジャーズと世界的学者との対談集で、対談相手として出てくる名前がさすがにすごい。

「我と汝」の実存思想家マルティン・ブーバー、「存在への勇気」の神学者パウル・ティリッヒ、ロジャーズの論敵ともいえる行動主義心理学のB・F・スキナー、アメリカ実存心理学のリーダー、ロロ・メイ、「精神の生態学」やダブル・バインド理論で有名で家族療法の理論的祖グレゴリー・ベイトソンなど錚々たるものです。

 その中で「暗黙知の次元」で名を馳せた科学哲学者マイケル・ポランニーとロジャーズは対談しています。

 ポランニーは「暗黙知」という概念を出したことで有名で、私は栗本慎一郎先生の著作を通して知り若い頃影響を受けました。

マイケル・ポランニー Wikipedia

 ちなみにマイケルの兄、カール・ポランニーは経済人類学を創った人で、経営学のカリスマであるピーター・ドラッカーの師匠ともいえる人物だそうです。

 著者の言葉を引きます。

 そこでは、まず「科学(science)」と「知識(knowlege)」の関係が問題となります。ロジャーズはどちらかといえば「創造的な直観といった主観的現象も含み入れることができるように『科学』の枠を広げていくべきだ」という説を唱えます。

 それに対してポランニーは、「『科学』という概念は不用だ。誰も実は、『科学』という言葉が何を指しているのかわかっていない。そのくせ『科学的』という言葉を、ほとんど何の疑いもなしに、価値ある言葉として使っている。そのため、さまざまな重要な現象が脇に追いやられて、研究の対象から外されてしまっている。褒め言葉なら他にいくらでもあるのだから、科学者はいっそのこと『科学』とか『科学的』という言葉を使わないようにするべきだ。私はもうずっと『科学的』という言葉の使用を禁じるべきだ、と唱えてきた」とくり返し訴えます。また、ポランニーは「再現可能であるということが、何故そんなに大切なのかわからない」と言い、再現不可能な、つまり一度切りしか起こり得ない現象こそ大きな意味のある現象ではないかとも言います。

 ロジャーズは、厳密な科学的トレーニングを積んできたポランニーのこのような主張に驚きを示します。そして、「科学」にこだわる立場から多少の反論を試みますが、それ以上に共感を覚える部分が大きかったようで、対談の中盤には、「おそらく、私たちが必要としているのは、人間についての科学よりも、人間についての知なのでしょうね」とポランニーに同意を示しています。その後対談は相互主観性や科学における価値の問題をめぐって展開されていきます。

「科学に再現性は重要ではない」なんて、科学性にこだわってきた普通の心理学者には驚天動地の意見ですけど、一体どういう意味か、本文はこれだけなのでそれ以上はわからないのですが、真意を知りたいです。

 ロジャーズも驚いたことでしょう。

 マイケル・ポランニーは科学哲学者になる前は化学者として重要な発見をしたり、息子もノーベル化学賞を受賞したくらいで、兄カールも含め、一家に一流の学者が多く、科学者中の科学者でそこらの学者とはレベルが違います。

 詳しい人に教えていただきたいですけど、何か重要なヒントがあるような気がします。

 ちなみにロジャーズは「人間についての知」が必要と言っていますが、アドラー心理学のことをアドラー自身は「人間知」と呼んでいたそうです。

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