「カール・ロジャーズ入門」
カウンセリングといえばやっぱり何といってもカール・ロジャーズ、20世紀に最も影響力のあった心理学者といっても間違いはないです。
非指示、受容、共感、傾聴、自己一致、純粋性・・・・
私の上の世代の臨床家への影響力は絶大で、私以降の世代でもやはり無視できない存在です。
今でも「カウンセリングはロジャーズを基本にすべきだ」という信念を持つカウンセラー、心理臨床家は多いと思います。
今回ふと思いついて、改めてロジャーズの本を読もうと思って手にしたのが、「カール・ロジャーズ入門 自分が“自分”になるということ」諸富祥彦著,コスモス・ライブラリー。
これがめちゃくちゃ面白かった。
内容はロジャーズ派心理学・カウンセリングの入門書としてももちろん最適ですが、何よりあまりにステキな用語群、理論のために日本では神聖視されてきた感のあるロジャーズの苦難に満ちた人生、極めて人間くさい側面を暴露、いや明らかにしているのです。
しかしそれはけして悪意によるものではなく、そのことによって著者の「ロジャーズ愛」が余計際立っています。
ロジャーズだって人間なんだとわかります。
その具体的な描写をまとめると、
実際のロジャーズはけして温厚なだけでなく、相手次第では冷淡で尊大、かなりの戦略家、よく言えば自分に素直な人物だったようです。
キリスト教原理主義の抑圧的な家庭に育ったロジャーズは、自分のマイナスの感情を素直に表現することに対するためらいは中高年になるまで強くあったようです。
またそのためか、「最高に成功した心理学者」になった中年期の後は、欲望が全開したかのようになります。
70歳を過ぎて、魅力のなくなった病床の妻を置いて、若い愛人バニースとの恋に燃え、他にも複数のセックス・フレンドがいたそうです。
まあ、あのスキンヘッドはなんか精力絶倫そうだもんね・・・。
また兄弟仲も良くなく、長兄の皮肉めいた手紙に激怒して彼の葬式にも出なかったり、
娘ナタリーの離婚した夫のことを、名を変えても明らかにわかるような形で勝手に事例として著書に書いてしまい、彼からの再三の抗議の手紙を無視し続けたり、
70代では毎日一瓶のウォッカを空けるほどのアルコール中毒で、心配した子どもたちの忠告も無視し続けたり、
長男デイビッドの強引な離婚に手を貸して、その女性は自殺してしまったり、
50代半ばにはCIAによる敵国兵士の洗脳の研究に協力していて、ロジャーズはそれを誇りにしていたり・・・
他にもいっぱいあるらしいけど、すべて丹念に調べられた事実だそうです。
いやあ、いいねえ、ロジャーズ、見直したぜ。
清濁併せのむというか、節操がないというか、大物はやはり違います。
私はこれまで聖人君子ぶっている風の日本的ロジャーズ派カウンセリングにはちょっと敬遠気味だったけど、改めてなんか勉強しても良いかなと思ってしまいました(笑)。
Comments
はじめまして・・・あたしは山梨に住む森のナースの伏見です。あたしは准看護師ですが、目に見えないものを大事にして自分の勉強したいエッセンスがある仕事をし、そこから仕事をしながら学ぶことを仕事としています。あたしもこの本を読んで、今の自分に重なる部分の多いことで、共感をし、カールさんの思考をどこで学べるか検索していたらこちらを見つけました。色々心理のこと・・・もっと勉強したいので、色々と教えていただけませんか?個人的にメールをいただけるとありがたいです。
この本、一般の人にもわかりやすいので本当に面白いですよね。
ながながすみません。ではまたお邪魔します。
Posted by: 森のナース | November 29, 2011 02:41 PM
森のナース様
コメントありがとうございます。
准看護師をしてらっしゃるのですね。
私たちはアドラー心理学を中心にした勉強会をしています。もしよろしかったらご参加下い。
Posted by: アド仙人 | December 01, 2011 10:05 AM