武術と心理臨床シンポジウム・2
自主シンポジウム「武術に学ぶ心理臨床の知恵」の話題提供者の3人の後は、指定討論者として老松克博先生(大阪大学)の登場です。
先生は取り組んでおられる杖道の話から、どのようなものを求めて武術の道を歩まれているのかをユング心理学の観点から実に興味深い話をしてくれました。
ただ、私のユング心理学理解は浅いので、下手に書くと多分に誤解を与えかねないので、詳細は省き、印象に残った言葉だけ記します。詳しい方は類推して下さい。いつか老松先生による武術/心理臨床論を読ませていただきたいものです(これは他の先生方も同じ)。
・ユング心理学の主要技法であるアクティブ・イマジネーションの実践から、身体を使うことの必要性を感じ、武術の世界に足を踏み入れた。ブロックされていたものが突き抜けることが、武術による身体を通じてできるのではないか。
・型とは、名人・達人同士の試合を想定しているもの。
・神話的身体をたどることであり、個性化のプロセスそのものである。
・武術により「古い身体」を追求している。古い身体とは、心と体が分化する前の領域、サイコイド(類心的無意識)の領域に通じる(そのもの?)であり、武術が関わるのはそこではないか。
「古い身体」とはとても良い言葉だと思いました。
極めて厳格で保守的なうちの流派を学んでいて、まるでかつてのチベット仏教・ニンマ派を学ぶ中沢新一やネイティブ・アメリカンのシャーマニズムを学ぶカルロス・カスタネダなどの人類学者みたいなことを、東京でしているような気分になったことがあります。
学校体育や西洋スポーツで作られるのが「新しい身体」だとすれば、特に古武術系で探るのはまさに「古い身体」そして「古い心」なのかもしれません。
それが遠い異国や山奥とかでなく、身近な場で探っていくことの醍醐味、楽しさが武術修行なのかもしれないと思いました。
その後の質疑も活発で(女性ばかりから質問が出たのが興味深かった)、さらに刺激を受けました。
最後に黒木先生が、今後もこのテーマを追求していくことの必要性を訴えて、シンポジウムは終わりました。
会場には私の元同僚や稽古仲間だった先生が見に来てくださっており、終了後は長年中国武術など拳法をやっているという女性心理士さんや意拳をやっているという男性心理士さんが挨拶にきてくださり、うれしい交流もありました。
今回やってみて、改めて武術と心理臨床学の接点をもっと研究してみたくなりました。その可能性は意外にあるんだなと改めて実感しました。
とても刺激的でした。
しかも武術も心理臨床もたくさんのアプローチ、流派があるように、その切り口は極めて多様なようです。
それには私のような実際的、現場的な人間からきちんとした研究者まで、幅広い人材が集まることが必要だと思いましたね。
今回の意欲的な試みが、いつか大きな実を結ぶことを願いたいです。
その端緒を開いてくれた黒木先生と老松先生には、本当に感謝したいと思います。
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