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September 17, 2010

歴史に学ぶ民主代表選挙

 管直人勝利で終わった民主党代表選挙、しかし、「あまりにもおかしいのではないか?」「不正が行われたのではないか?」という有力な意見がきっこの日記小野寺光一さんなどから出されています。

 もはや真相はわからないでしょうけど、もしかしたらそうかもしれない、権力を得るためなら何でもするのが政治というもので、こういう見方を陰謀論だとして排するのは優等生の子どもの見方だと思う。
 日本が大好きなアメリカ大統領選挙始め諸外国の選挙事情を見よ、何で日本の選挙だけが間違いないといえるのかが私にはわからない。もう時代は変わったのだ。これからの世はまず不正ありきから、考えるべきです。

 ともあれ、今回の選挙をどう考えるか、です。
 天下分け目の関ヶ原の戦いに例えることも可能かもしれない。確かに小沢一郎が勝利すれば、佐藤優氏が言うとおり、まさに大化改新以来、日本にいまだに本当は続いている律令制度がついに終わる大チャンスだった。明治維新なんてもんじゃなかったのにねえ。

 しかし結果的には、担ぎ出されたというか、表に出ざるを得なくなった国民政治家(正しい意味でのポピュリスト)小沢一郎とその一党が、既存のシステムの強固さに跳ね返されて討ち死にしたようなもので、これは西南戦争と西郷隆盛そのものではないか

 そう喝破した「ジャパンハンドラーズと国際金融情報」に、私は腑に落ちる思いがしました。

 私は岡山の講演会の帰りに新幹線でツイッターを眺めながら、江藤淳の『南洲残影』(文春文庫)を読んでいた。この本は西郷隆盛と官軍(山縣有朋)との戦いを江藤氏が追想するという珍しい種類のエッセイである。その内容は、今の時代に通じるものがある。維新(政権交代)を成し遂げた官軍の権力闘争ということもあるが、民草の声を無視して暴政を行おうとする姿勢は昔も今も変わらない。私は司馬遼太郎の小説を読んだことはほとんど無いが、少なくともあの「坂の上の雲」に描かれた近代日本とやらを手放しで賞賛する気にはならない。

 その江藤だが、『南洲残影』の中で以下のように不思議な予言めいたことを書いている。

(引用開始)

  私の脳裏には、昭和二十年(1945)八月末日、相模湾を埋め尽くすかと思われた巨大な艦隊の姿が甦って来る。日本の降伏調印を翌々日に控えて、敗者を威圧するために現われた米国太平洋艦隊の艨艟(もうどう)である。(中略)その巨大な艦艇の幻影を、ひょっとすると西郷も見ていたのではないか。いくら天に昇って星になったと語り伝えられた西郷でも、未来を予知する能力があったとは思われないというのは、あるいは未来の合理主義者の賢しらごとかもしれない。人間には、あるいは未来予知の能力はないのかもしれない。しかし、国の滅亡を予感する能力は与えられているのではないか。その能力が少なくとも西郷隆盛にはあり、だからこそ彼は敢えて挙兵したのではなかったか。

江藤淳『南洲残影』(50頁から)

(引用終わり)

 ご存じの通り、「坂の上の雲」を目指してイギリスの手先をやってきた大日本帝国は、途中で天狗になって当時の先進国である英米に無謀にも挑戦した。西郷は薩長の維新の中心人物であるから、日本がイギリスと手を結ぶことで、イギリスと属国契約を結ぶことで自らを守ってきたことは知っていたはずである。それで、イギリスと結んだ維新内閣に対して決起した。

 小沢一郎も同じである。小沢はもともとは『日本改造計画』の出版に当たってアメリカの支持を得た。にもかかわらず、政権交代を成し遂げた後は、“見かけ上は”反米のスタンスを取るようになった。

 小沢は代表選の演説の中で「このままではこの国が危ない」と何度も訴えた。具体的政策も理に適ったものだったが、それよりも重要なのは、小沢が民主主義国家の基本原則を何度も訴えたことである。すなわち、政治家が国民の代表であり、官僚はその政治家のグランドデザインを実行するという主張である。官僚を排除するのではなく官僚を上手く利用し、最後は政治家が責任を取るというまさに教科書のような主張である。この民主主義の基本を菅に投票した一年生議員はどのくらい理解していたか。(これを知りたければ、故・小室直樹先生の『田中角栄の遺言-官僚栄えて国滅ぶ』クレスト社を読んで欲しい)

 なるほどなあ。

 でももしかしたら、小沢一郎は負けて良かったかもしれない。

 もし小沢が首相になって今の流れに抗しようとしていたら、確実にさらなるスキャンダルに見舞われるか、殺されていたかもしれない。「命を懸けて」とはまさにそういう覚悟だったのかもしれません。

 拙いながらも武術家としての「戦いの勘」では、そう感じる。

 ここは、次があるかわからないけど、臥薪嘗胆ですな。

 

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