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November 16, 2010

「いつまでも経済がわからない日本人」

 ものごとには階層性というものがあって、例えば、人体は原子あたりから始まって基本物質、細胞、臓器、臓器同士のネットワーク、体全体といった無数のレベルのシステムが複雑に重なり合ってできています。

 社会も同じく、個人から家族、会社や仕事をする世界、地域、県、国、国際関係と階層のレベルが上がっていきます。

 そして、下位レベルで通用する法則は、そのまま上位レベルでは当てはまらないことがあるわけです。上位レベルには、下位レベルの個々の法則を包含しながらも、そのレベル独自の法則というものがある。
 例えば、胃の臓器の動きや性質は、上位レベルの人間全体に影響は与えはするが(空腹とか胃痛になればそれに沿った行動を取る)、その規定性は100%ではなく、意識を持った人は独自の判断で動くこともできる(我慢するとか時には断食もする)。

 そういう階層的でシステム論的見方を、「ホロン」と呼んだのが科学思想家のアーサー・ケストラーで、生物学者のフォン・ベルタランフィーは「一般システム論」と呼びました。
 発表されたのはもう大分前ですが、臨床心理学ではシステム論的家族療法に根底から影響を与えている思想でもあります(若い心理士は知らないかもしれませんが)。しかし、今でも十分に当てはまるものの見方だと思います。

 どうしてこんなことを持ち出してきたかというと、こういう見方が身についている私には、昨今のマスコミなどの政治・経済の主張に以前から違和感があったからです。

 例えば「市民目線」とか「素人感覚」で自分たちの生活感覚だけで政治を批判すること、「日本の財政は破綻する」「公共事業はなくせ」「国の借金である国債が増えるのはけしからん」「役人が日本には多すぎる、減らせ」といったものです。

 もしかして、こういうマスコミを中心にしたよくある意見は間違っているのではないだろうか。

 経済について私は全くの素人ですが、国の財政の在り方を、家計や企業会計になぞらえて理解するのは、とてもまずいのではないかという気がしてならないのです。

 家計や企業の場合は、基本的にはお金の出と入りの関係で記述することができ、赤字は良くない、黒字が良いと考えるのは多分、理に適っていることだと思います。

 でも、それより上位レベルの国は同じでいいのだろうか?
 国の予算にも歳入と歳出はあります。そこだけは同じに見えます。
 しかし、国には通貨発行権があり、お札をジャンジャン刷れます。私がやったら捕まります。
 しかも強力な暴力装置があり、いざとなれば戦争というカンフル剤でチャラにできます。私が個人でやったらもちろん殺人で捕まります。

 我々のできないことが、たくさんできる。
 きっとその辺を考えるのが、マクロ経済とか国際政治学なのでしょうけど、ちょっととっつきにくい。

 そんな思いにフィットする経済本が最近は出てくるようになりました。

 例えば三橋貴明氏の「いつまでも経済がわからない日本人」徳間書店は、大変勉強になりました。

 本書は、「日本は借金大国というのは大ウソである」「財政健全化を目指すと、逆に財政は悪化する」「公共事業悪玉論は間違っている」「日本の財政をギリシャと同一視するのは完全に間違っている。そもそも日本の財政破綻はあり得ない」「国債は将来世代へのツケではない」と、これまで財務省やマスコミが主張し、私たちに信じ込ませてきたことと正反対の主張をしています。

 橋本政権以降、小泉政権で最悪になって、鳩山・小沢政権で盛り返そうとしたら、再び米勢力につぶされて小泉以上の最悪になりそうな予感の管政権がいかに間違ったことをしてきたががよくわかりました。

 普通に考えて、幸せな国家とは、
「自殺率が低く、給与水準が上がり続け、失業率が低く抑えられている国」
 のことだろう。
「自殺率が高く、給与水準が上がらず、失業率が高まっている国」
 は、間違いなく不幸である。
 そういう意味で、橋本政権以降の緊縮財政強行が、日本国や日本国民を「それまで以上に不幸にした」のは間違いない事実なのだ。

 洗脳された頭を切り換えて、日々のニュースを違った見方で考えるのに役立ちます。
 

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Comments

三橋氏の主張をうさんくさく感じています。
借金大国でないのなら、好きなだけ赤字国債を発行すればよいのでしょうか?
いずれつけはだれかが支払うのではないでしょうか?

Posted by: 三橋氏のうさんくささ | November 21, 2010 03:52 AM

 コメントありがとうございます。

 しかし胡散臭くない経済評論家がいるんだろうか?
 私見では、三橋氏の胡散臭さは他の同業者と同レベルか、むしろ銀行や証券会社、体制側の「ひもつき」エコノミストの連中の方がもっと胡散臭いと感じています。

 三橋氏の著書は論旨が明快ですから、議論が可能なはずです。貴方が疑問のところはすでに答えが書いてありますよ。実際、そういうことを言う人が後を絶たないようです。印象ではなく、論理をご確認下さい。
 経済学は思想、宗教的なところがありますから、賛成できないところはあるかもしれませんが、私はとても筋の通った論旨だと感じています。

 おそらく「赤字国債」、「つけ」という発想自体が本当なのか、誰か(財務省やマスコミ)に吹き込まれただけではないのか、と振り返る契機を氏は与えてくれたと思っています。

Posted by: アド仙人 | November 21, 2010 11:47 PM

wikiによると、 

日本は外国から借金をしていない。日本経済が財政破綻を起こすなどありえない(これは財政破綻を「債務不履行」、「対外債務返済不能」に限って定義した場合の話であり、「国民経済に何らかの深刻な問題を引き起こす事態が何も起こらない」とは言っていない)。

だそうです。私は 郵貯や銀行預金に預けている国民の資産で国債を買い支えることができなくなると、国債価格が暴落し、年10%を越えるようなインフレとなり、国民経済に深刻な影響を与える事態になる可能性があると考えています。ので、わずかな資産は、円高の今、外貨へとシフトしているところです。三橋氏の著書を金をはらってまで買うつもりはありませんが、図書館で見かけたら読んでみようかと思います。

Posted by: 三橋氏のうさんくささ | November 22, 2010 09:18 PM

 お金があるなら買えばいいのにとは余計なことですね。
 私も図書館で借りてますよ。

 三橋氏も「財政破綻とは政府のデフォルト(債務不履行)を、財政悪化とは、政府の負債対名目GDP比率が高まること」と定義してから論を出発させています。

 インフレは私も心配ですが、それによる統制経済・社会になることの方が心配です。
 貴方の作戦が成功したら教えて下さい。

 私はわずかな資産もないので、健康な体作りにいそしみ、いざというとき凶暴な権力者と戦う気概を育てたいと思います。

Posted by: アド仙人 | November 22, 2010 10:42 PM

>>インフレは私も心配ですが、それによる統制経済・社会になることの方が心配です。

国の借金が加速度的に増加して(すでにそうなりつつありますが)、日銀が国債をどんどん買うようなことになれば、大インフレとなるリスクが飛躍的に高まります。インフレにより国の借金は実質的に減らせるけれど、それは国民の資産(国債)の価値の目減り分が国に移るということにすぎないわけで、国の借金が、雪だるま式に増えてゆく状況はなんとしても避けるべきだと思います。現実的には難しいを思うけれど。ハイパーインフレの焼け野原から、もう1度やり直すしかないのかもしれませんが、、、

Posted by: 三橋氏のいかがわしさ | November 24, 2010 02:21 AM

 さて、どうなるのでしょうね。

 ある意味楽しみといえば不謹慎ですが、諸氏の意見の何が正しいのか見ていきたいと思いますね。

Posted by: アド仙人 | November 24, 2010 10:47 PM


「ある意味楽しみといえば不謹慎ですが、諸氏の意見の何が正しいのか見ていきたいと思いますね。」のは同感です。しかし、国債暴落で国民に大きな悪影響が及ぶと、「自殺率が低く、給与水準が上がり続け、失業率が低く抑えられている国」からはさらに遠ざかることになる。自殺する人が、大きく増加するのは避けられなくなるでしょう。そういう意味で楽しみにするのは不謹慎です。下記のような見方をする投資家もいるようです。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aA7gQW9esz40

Posted by: 三橋氏のいかがわしさ | November 27, 2010 02:55 AM

しかしね、やはり私のような立場からは、「楽しむ」のが正しい態度でしょう。
 諸子百家の正しさは、今は誰も証明できない、それぞれが実現を待つしかないのですから。信仰の問題ですね。

 もうすでに「自殺率が高く、給与水準が上がらず、失業率が高まっている国」になっている中で、少しでも良くなれば良し、悪くなっても自分の立場ですべきことをして、人生を楽しむだけです。

 一応今は三橋氏の所論にチップを賭けておきます。

 今の心配は経済より、政治、米中の代理戦争に巻き込まれないか、落ち目の米国に抱きつかれ心中となりそうな状況です。

Posted by: アド仙人 | November 27, 2010 10:57 AM

 日本経済が将来どうなるかは、信仰とは関係ないとは思いますが、カオス的で予測困難であることは間違いありません。あまりひどいことにならずに軟着陸というか、持続可能な形になることを祈ってますが、、、長くなったのでこのへんで終わりにします。

Posted by: 三橋氏のいかがわしさ | November 28, 2010 12:55 AM

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