ウィキリーク事件の深層
意拳のことを書く前に興味深い記事を紹介。
世界を驚愕させたウィキリークス事件。
日本では海老蔵事件に熱中して、このニュースは外国の変な奴が悪いことをやったという感じの何かキワモノ扱いみたいですけど、ホントに世界は驚き、アメリカに怒っているそうです。
田中宇の国際ニュース解説がいろいろな解説の中で最も面白いと思いました。
ウィキリークス事件の裏表を是非お読み下さい。
ウィキリークスの代表発言者であるジュリアン・アサンジュは、米国に脅威を与える「ネット界のオサマ・ビンラディン」と呼ばれて、米議会などから敵視され「コンドームを使わずに性交した」という、スウェーデンの法律違反によって英国で逮捕され、米国に身柄送致されようとしている。「どんな罪で逮捕するにしても、アサンジュは米国に脅威を与える悪い奴なのだから、かまわない」と米国のタカ派議員らは息巻いている。「911の直接犯であろうがなかろうが、ビンラディンは悪い奴なのだから殺せばいい」という理屈と似ている。(Wikileaks founder Julian Assange refused bail)
性犯罪で捕まったと報道があったけど、まさかコンドームを使わないで性交したから性犯罪で逮捕されたとは知らなかった!
しかもスウェーデンの法律でイギリスで捕まるってどういうこと?
今回アメリカのトップシークレットが暴露されたという話だったけど、実際はそうでもないようで、かなりが機密指定されていないし、イスラエル関係など肝心要の最重要なものは出ていないそうです。
ウィキリークスの情報暴露やアサンジュ逮捕をめぐって、米英マスコミは、日本マスコミの海老蔵騒動にも似た大騒ぎをしている。だがウィキリークスが暴露した電文の内容を見ていくと、大騒ぎをする話でもないと思えてくる。ウィキリークスが欧米マスコミ5社に流した25万件のうち、半分以上を占める13万件は、機密指定されていない。残る12万件のうち10万件は、米政府の機密指定のうち最も低い機密区分である「コンフィデンシャル」に分類されている。その上の「シークレット」に指定された文書が1・5万件で、そのさらに上の「トップ・シークレット」は1件もない。今回の暴露は、機密情報として大した価値がない。(United States diplomatic cables leak From Wikipedia)
それでも暴露されたものだけでも、当事者たちには深刻なようで、相当頭に来ている国もあるということです。カードの暗証番号を調べられたり、協力しているのに悪口言われ放題で、そりゃそうだわな。
さらに重要なのは、今回の暴露が、米国と同盟諸国の関係をも悪化させていることだ。フランスやイタリアの首脳に対する中傷電文が暴露されている。またドイツ外務省の高官や、オーストラリア与党の重鎮政治家が、米国大使館に機密情報を積極的に提供するエージェントだったことも暴露された。(German FM's Chief of Staff Sacked for Being US Informant)(WikiLeaks outs Mark Arbib as US informant)
独豪でさえ、上層部に米国のスパイがいるということは、ぬるぬるの対米従属でしかも機密保持が弱い日本の官界や政界には、米国に喜んで国家機密を献上するスパイが多数いそうだ。それが隠れた国是として奨励されてさえいるかもしれない。ウィキリークスがこれから暴露する電文に、自分のことが書かれているのではないかとびくびくしている日本の官僚や政治家が何人もいるかもしれない。
日本では誰がアメリカに通じているのか、その名が暴露されるか興味津々ですね。
そして世界の情報戦はどう変わるか。
アメリカの汚い諜報システムを壊すことで何がこれから起きるのでしょうか。
全体として今回の暴露は、世界の国々の高官たちに、これまでのように米大使館員に情報提供したいと思わなくなる新事態を招いている。米大使館員に情報提供すると、自分の名前まで含めて暴露され、自分の政治生命を絶たれかねないからだ。米国の歓心を買うために世界が米国に情報提供する時代は終わったのかもしれない。米国の外交覇権の失墜である。これがドルに対する信用失墜や、イラクとアフガンの泥沼化を通じた軍事覇権の衰退と同期しているのも興味深い。外交力は、経済力(ドル基軸)、軍事力と並ぶ、米国覇権の3大柱の一つだった。今や米覇権の大黒柱は3本とも崩れかけている。(WikiLeaks: Demystifying `Diplomacy')
米国務省は、世界各国の大使館の高官たちを配置換えすることで信用失墜を防ごうとしているが、これはその国の専門家でない人がその国の米大使館に来ることを意味しており、うまくいくと思えない。(US Eyes Embassy Shake-Ups in Wake of WikiLeaks Shaming)
今回の件は、世界的な外交システムの崩壊につながるかもしれない。近現代の外交システムは、フランス革命後のナポレオン戦争に勝って欧州の覇権を獲得した英国によって形成された。英国は、各国をうまく競わせる諜報力によって覇権を維持したから、近代の外交システムにおいて、外交と諜報(スパイ)、プロパガンダ(マスコミ)は、もともと三位一体の関係である。
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