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September 01, 2011

「アスペルガー症候群」

 岡田尊司著「アスペルガー症候群」(幻冬舎新書)

 発達障害の代表格、アスペルガー症候群を理解するのに実によい本だと思います。

 アスペルガー症候群とは何か、どのような状態でどんなタイプがあるのか、原因はあるのか、どうやって接したらいいのかが、問題とは何か、などが適度に詳しく、突っ込んで書いてあります。
 発達障害の概念が巷に知られるようになって、もっと優しく解説した本はたくさんありますが、その意味は分かったけどもう少し詳しく知りたい人(教師とか親とか、専門家も含めて)にはうってつけではないかと思います。

 わかりやすく、厳密に書く著者の作家としての力量はいつもすごいと思います。

 私にとっては、最近講演などで発達障害の解説をすることが増えてきただけに、アスペルガーと思われる著名人のエピソードがたくさん出ていて面白く、使わせていただきたい話がいっぱいあり、ありがたかったです。

 アインシュタインやビル・ゲイツはもちろん、劇作家のイエイツ、進化論のチャールズ・ダーウィン、童話作家のアンデルセン、哲学者キルケゴール、ジョージ・ルーカス、本居宣長、電話を発明したグラハム・ベル、哲学者・西田幾多郎、インド独立の父・マハトマ・ガンジー、「不思議の国のアリス」のルイス・キャロルなどたくさん登場します。

 実際の事例の話も豊富でわかりやすかったです。

 著者も言いますが、現代社会への道を切り開き、人類に多大な貢献をした人の相当数が、アスペルガー症候群と考えられます。
 一方でそのユニークな特性ゆえに、生きづらさを抱え、時に悲劇を巻き起こしてしまうことがあるのも事実です。

 臨床家の中には(特に伝統的は心理臨床の立場の方)は、昨今の発達障害の「診断」の増加ぶりに、「なんでもかんでも発達障害にする」と反発する人がいます。
 それも当たっている面もありますが、それでもアスペルガー的特徴のために困っている人が増えているのもまぎれもない事実です。

 むしろ私は、アスペルガーも含めて「なんでも発達障害にする風潮」は基本的に良いものだと思っています。

 それは心の問題の基盤にある「気質、器質への着目」と「障害と健常(自分自身)との連続性の意識」が増えることが期待できるからです。

 つまり、生まれ持った体質が性格形成の大きな基盤であり、心の中の病理云々が問題の本質ではなく、環境との相互作用が問題であり、「どうやってそれを使って生きるか」という主体性を重視した視点が重要になり、自分自身にも多かれ少なかれ発達障害的特徴があることに気づき、障害となるかどうかは、その「強度」の違いに過ぎないという思いに至るからです。

 よく私たちは「PDDやADHD傾向」「アスぺチック」と専門家同士で人物を評したりします。それは悪口やレッテル貼りではなく、そう考えた方が便がよく、説明もしやすいからです。

 誰もがいくらかはアスぺ的特徴を(特に男性は)持っているものです。自閉症スペクトラムといいますが、まさに様々な特徴のスペクトラム(連続体)として自分と障害者はある、という気づきは、発達障害の理解につながるかもしれません。

 そして日本人の、とにかく「普通であることにこだわる傾向」、意味もなく人並みを目指し、「空気」を読ませようと圧力をかける傾向が緩和されることが期待されます。

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