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October 25, 2011

達人の証言

 戦後圧倒的な強さで多くの武道家、格闘家を退けたという太極拳・形意拳・八卦掌の達人である「王樹金老師」を検索したら、大変興味深いサイトを見つけました。

 ブルース・フランチスという、私は存じ上げない人です。アメリカ人の武道家のようですが、けっこうというかかなり本格的に日中の武術・武道を研究した方のようです。読む限り、真摯な求道者のように感じました。
 サイトは日本語にもなっています。

 そこにはその方が若いころ、実際に見聞きした達人たちとのエピソードが満載です。合気道の植芝盛平翁、太気拳の沢井健一先生もあります。武道マニアならビックリしてしまう。

 その中に私の師匠の師である王樹金老師が登場し、なんとスパーリングの様子が描写されているのです。とても貴重な証言だと思います。
 当時19歳で空手チャンピオンだったというブルースさんが、手もなくひねられる様子がとても興味深く、内家拳の戦いの特徴がよく出ていると思います。一部転載します。

 王老師は、わざわざ訪ねてきたアメリカ人青年に最初はぶっきらぼうに対応したようです。

 王樹金(Wang Shujin)、驚くべき気を持つ達人

その頃の私にとって空手は人生の大きな部分を占めていて私の情熱そのものでした。このぶっきらぼうな発言は私にとって芯からの侮辱でした。しかし私は怒りを飲んで堪えました。私達のスパーリングでは、私の防御に対し簡単な立ち回りを披露して私の体中を思いのままに軽く叩きながら、あらゆる場面で王は私を完全に打ち負かしました。

私の最善の努力と王の巨大な胴回りにも関わらず、彼の八卦掌は私の殴打を全て楽に避け、思い通りに私の後ろに回りました。4、5日彼に学んだ後、まだたくさん学ぶことがあるのを解らせるために、私に彼の体を思い切りフルパワーで打たせました。

私は懇親の力を込めて思い切り打ちましたが、それはまるで3歳児の打撃のようでした。私はひざと股間を蹴り、首を打ち、肋骨に肘鉄を食わせましたが、その効果はむなしいものでした。多くの八卦掌達人たちのように、彼は殴打を怪我も無く吸収する能力を持っていました。

私が彼の向う脛を蹴った時、私の足は長いこと痛みました。私が拳を彼の腹部に入れた時、私の手首は壊れたかのように感じました。

王はスパーリングの間、彼にとって私を倒すのが如何に易しいかを見せるために、私の頭を時々軽く叩きました。一度、実際に彼は私の頭を叩いて、瞬時に私を地に倒しました。私は全くの驚きであたかも高電圧の電流にショックを受けたようにその場に座ってしまいました。

しばらくして、私は自分の低レベルの技術と彼を傷めつけられない無能さに退屈しただろうと確信しました。

時々彼は私を腕で掴んで、私の足は宙に舞い、まるでヨーヨーのように3、4回前後に彼の腹部に弾ませ、そして王は私をすばやく元の状態に戻しました。

実際王は若い時、中国本土の挑戦試合で敵の脊椎をこの方法で壊したと後で聞きました。「この方法に対する唯一の防御法は、腹部でなくて腰骨が彼の脅威の腹部に接触するようにして横へ回ることだ。さもなければ終わりだ。」と私は他の先生から何年か経って学びました。

私が受けたこの教化(即ち王の実力に初めて挑戦したこと)の次に欲しいものは、19世紀後半の八卦掌の創始者として名高い董海川(Tung Hai Chuan)の弟子であったChang Chao-Tungから学んだという、王老師の八卦掌を学ぶこと以外にありませんでした。

 そうして、ブルースさんは王老師に弟子入りしたそうです。

 在りし日の武道家同士の邂逅のエピソードって、おもしろいですね。

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Comments

たいへん興味深く読ませていただきました。
沢山こういうエピソードは有るのでしょうけど、文章になっているものは少ないのでしょうね。

Posted by: 渡辺 | October 26, 2011 02:06 AM

渡辺さん

ほんとに貴重ですね。もう大分昔のことですけど、集めてみたいと思います。

Posted by: 深沢 | October 26, 2011 07:11 PM

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