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February 28, 2012

ソフトタッチは強い

 月刊「秘伝 2月号」(BABジャパン)に「合気特集」があって、いろいろな角度から合気の技について研究、考察されていました。

 触れた瞬間に相手を無力化してちぎっては投げちぎっては投げ、またはふっ飛ばす合気と呼ばれる技は見るからに神秘的で、我々を魅了すると同時に「ほんとにあんなことができるのか?」と懐疑の対象になりやすいものでもあります。

 また太極拳の化勁(力をいなす)や発勁(力を発する)との共通性も以前から指摘されていました。共に修練から生み出される非常に高度な身体と力の操作です。
 私も日々それを目指しているのですが、本誌の特集記事の中で、ヒントになるのと思ったのが、

「皮膚感覚に合気の秘密あり」のタイトル、半身動作研究会、中島章夫先生の記事です。中島先生はあの甲野善紀先生のお弟子さんのようです。

 これによると、相手が触れられたかどうかわからないほどの圧で接すると、相手は抵抗感を感じないまま導かれてしまう、というのです。

 接触した相手と力勝負になってしまうのは、、必要以上に押してしまうからである。しかし人には抵抗する気を起こさないぎりぎりの接点圧力というのがある。それを「臨界圧力」といい、松聲館の初期から使われている述語である。p11

 臨界圧力で接触すると相手の皮膚は、引っ張られたり押されたり、何らかのテンションがかかる。それがあまりに微妙すぎると「崩す」という運動に結びつかない。しかしこれ以上力を加えると抵抗が起こるギリギリの圧、すなわち「臨界圧力」で接すると人は反射的に皮膚に生まれたテンションをゆるめて、ニュートラルの状態(元の状態)に戻ろうとするようなのである。・・・

 さて、元の状態に戻るといっても元の位置にはこちらの手があるので、ほんのわずか後退して皮膚の状態を戻そうとするのである。ここでこちらが何もしなければ、相手の皮膚がゆるんでそれで終わってしまう。しかし相手がわずかに後退した分こちらの手がついていったらどうなるだろうか。ゆるめようと後退したはずなのにまだ変わらずテンションがかかっている。皮膚は反射的にまたゆるめようとわずかに後退してしまうのである。そこでまたテンションをゆるめないように手がついていくると、反射的に皮膚をゆるめようと・・・・と繰り返される。
 このようにして相手が後退した分だけこちらの手がついていき、皮膚のテンションを変えないようにすると、相手は自ら少しずつ後退して崩れてしまう。p12

 「臨界圧力」という相手が感知ししきれないほどの薄い接触を維持することで、知覚の混乱を起こして対応が遅くなってしまうようです。
 確かに、太極拳では「粘」とか「連」とかいって、相手の腕に粘っこくくっつくように動いていくことを求められますが、そうなるためには柔らかい接触状態を作り出し、維持することが必要なのでしょう。
 この説は分かる気がします。

 普通は相手の腕や体が触れると、ついガッシと手ごたえを感じるように動いてしまうのですが、それでは相手も自分の力の所在を感じやすくなってしまいます。

 上級者や先生たちと推手(太極拳の組手)をすると、触れているのにまるで雲の中をさまよっているような感じがして、気がつくとやられているのですが、きっと臨界圧力内で動かされて自分の知覚が混乱したのかもしれません。

 というわけで、最近自分の稽古でそれを意識したら、少しうまくなって相手の力をよりスムーズに受け流し、自分の力がより楽に伝わるようになった気がしました。

 柔らかく、力を抜くことの重要性はわかっていましたが、いつも同じ視点だとマンネリ化してしまうので、少し違う切り口や表現を知ることでさらに理解や実践が深まることがありますね。

 他に本誌ではロルフィングを指導する藤本靖氏の連載「動きのホームポジション」で、筋膜の感覚を磨いて維持することの重要性を説いているのですが、この臨界圧力の感覚と通じるように思いました。
 こちらもとても興味深い記事です。

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Comments

はじめまして。
心のことと身体のことの両方が書かれているので
時々読ませていただいています。
ソフトタッチは強いというタイトル、抵抗する気を起こさないぎりぎりの接点圧力というところに心惹かれました
私は現在、刺さないで皮膚に接触させるだけで治療する鍼を勉強中なのですが、鍼を持っていない方の手は、相手が心地いい圧で皮膚を撫でていくことを求められます。
刺さないで治療すると言うと、そんなんで変わるのか?と初めての人にはたいてい驚かれます
なんか似てるなぁと思いました。

皮膚っていろんな可能性を秘めていそうで、
もっと注目したらもっといろんなものが見えるかもですね。

Posted by: papierluftballon | March 05, 2012 01:13 AM

 papierluftballonさん

 コメントありがとうございます。

 刺さない針というのは興味深いですね。聞いたことはあるのですが、実際のことは知らないので、是非教えてください。
 きっと本記事と何か関係があるかもしれませんね。

 皮膚と気の関係は感覚的にはわかるんだけど、学問的というか、どう表現したらよいのか難しいところです。
 面白い、未知の分野ですね。
 

Posted by: アド仙人 | March 05, 2012 06:54 PM

言葉が違うけれど、心身統一合氣道 藤平光一先生(昨年亡くなりました)の説明が同じかと思い当たりました。

藤平先生は植芝先生の直弟子ながら、方向性の違いのため合気会を出て、新しい「氣の研究会」を発足しました。一言で言うと、「力を抜いて氣を出す」ことをその基本のひとつに掲げました。力を入れて見た目に強そうなのは、実は固まっているためちょっと押されるとすぐ倒れてしまうというのです。

それにしても欧米の心理学者、関係者は合気道実践者が多いですね。機会があってそういう外国の有名な学者と合気道の話をしたことがありますが、ちょっと私の腕を取って型をとっただけでも力は抜けていました。上手な方はどんな派であっても力は抜けて「ソフトタッチ」なのだと実感しました。

刺さない鍼もいいですが、鍼は力を抜いて挿入するとぜんぜん痛みを感じることはありません。押し手も指し手も力を抜くためには下半身(臍下丹田)が大事かと思います。腰を安定させその上に上体を乗せ、腕の力を抜くというか。

流れるような合気道・早乙女貢氏の動画(合気会)
http://www.youtube.com/watch?v=JbogWP7knu0&feature=player_embedded#!

Posted by: 知足不足 | March 06, 2012 05:01 PM

 知足不足さん

 コメントありがとうございます。

 合気道は高校時代やっていましたし、藤平先生の合気道は私のアドラー心理学の師匠が学んでいましたから、とても親しみがあります。

 おっしゃる通り欧米でも、日本でも心理療法家で合気道家は何人もいらっしゃいます。太極拳でもそうですが、自分を主張せず相手に合わせながら導いていく考え方や術理が、治療に通じるのでしょう。

 両方学ぶといいと私も実感しています。

Posted by: アド仙人 | March 06, 2012 09:47 PM

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