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February 04, 2012

精神障害への解決志向アプローチ

 症状や問題行動が重篤な精神障害者は、「重いケース」と呼ばれて治療がなかなか難しかったりするのですが、それでもって臨床家や教育者があきらめてはいけません。

 しかし、長い間関わっているとついつい弱気になるというか、悲観的な見方をしてそれに実際の支援行動が引っ張られるということがあるのも事実です。

 解決志向ブリーフセラピーというと、ネーミングが多少安易に聞こえるのか、「問題の重くない、軽いケースに使えるのよね」といった評価をする向きがあります。
 しかし、真に効果的で効率的なアプローチであるなら、そのような重いケースほど「使える」はずです。

ティム・ローワン、ビル・オハンロン著「精神障害への解決志向アプローチ-ストレングスを引き出すリハビリテーション・メソッド」(金剛出版)は、そんな思いによって解決志向ブリーフセラピーの発想、原理を統合失調症など慢性的で重度の精神障害者に適用していった実践録です。

 著者のオハンロン先生は、偉大な催眠療法家ミルトン・エリクソンの弟子で、何度も来日していて、私も参加して学んだことがあります。とても穏やかで優しい人で、芸術家かミュージシャンのような雰囲気を感じました。

 本書は「慢性的で重度の精神障害への希望に満ちたアプローチ」「傷つけられたアイデンティティーについてのストーリーを書き換える」「新しい未来の創造」「危険な状況や暴力的な状況への対応」「境界例のクライアントに対する効果的で尊厳のある治療」など、どうやって患者、クライエントとうまくやっていくか、その発想とやり方のコツが事例とともに描写されています。

 オハンロン先生らしい、エッセイのような柔らかい描写で、認知行動療法系のようなキッチリした感じではないのですが、これはこれで味わいがあります。

 そして、後半に本書のアプローチに対する考察の章があって、アドラー心理学との共通性が指摘されているので、引用します。

 ティムとビルの取り組みの中で描かれている臨床応用の背後にあるものは、臨床上の態度と心理社会的視点であるが、それはアドラーやロジャーズのような著名な臨床家の初期の著作に登場する視点と類似している。アドラーのように、彼らは人間を目的志向とみなす一方で、個人の基礎的問題を克服する能力は、社会的背景、社会的興味の構築/再構築、より効果的な社会的相互関係の学習/再学習により、大きく左右されることを認識している。p137

 アルフレッド・アドラーの、セラピーをパートナーシップとする視点は、調和的に作用した時、相手に対する受容と尊敬の態度を伝える。このことは、希望を維持し自尊心を養う上で重要な要素である。援助の成功には、セラピストとクライアントによる本物のパートナーシップを作り上げることが欠かせないという真実を、ティムとビルの取り組みが物語っている。クライアントの潜在的な力や長所を信じ、また、クライアントの潜在能力がセラピストの技術やストレングスと同じくらい大切であると理解することにより、セラピストはより調和の取れた非言語的メッセージを送ることができ、また、クライアントの好ましい変化や成長を妨げるのではなく助長するような言語的メッセージを選択することができるようになる。p138

 まったくその通り、逆にアドラー心理学ももちろん精神障害者に実践可能であることを示していると思われます。

 医療や福祉で「難事例」に日々出会っている支援者に特にお奨めです。 

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