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August 23, 2012

ヒトラーは受身下手

 現在発売中の「月刊秘伝9月号」(BABジャパン)で、内田樹さん、甲野善紀さん、光岡英稔さんといった武術家と精神科医・名腰康文さんの対談が載っています。みなさん、一家言お持ちの方ばかりでかなり盛り上がっています。

 その中で名越さんが、「受身」ということについて術技だけでなく、生き方全般に広げた話をしています。

名越 盛り上がってましたね(笑)。あの時はヒトラーの話をしていたんでNHKのBSの番組の企画があって、それでずっと分析をしていて、昨日からもう8時間くらいその資料を読んでいて達した結論が「ヒトラーは受身が下手」ということで(笑)。ヒトラーほど受けができない人はいないんじゃないか。
 で、特徴を一つひとつ箇条書きにしていったんです。そうするとヒトラーは、心理学でよくいう「男性的抗議」というのがあって、これはまさに精神的にマッチョになって「自分こそは男の子だ」という、何故か男という性に対する欠落を感じて、男を補完し続けないとすまないという。

一同 ほう~。

名越 男性的なもの父親的なものに対する決定的なコンプレックス。コンプレックスというのは複合体という意味なんですけど、つまり複雑に絡み合った自分の劣等感というものがあって、それが幼すぎてなにか分からない。それで後になって不安から来る怒りというものに変わっていくんだけれど、何とか補完する。補完するためにやたらマッチョになる。肉体的にマッチョになろうとする人もいますけど、精神的にマッチョになろうとする人もいる。で、こういう人の特徴というのは、まずは討論に絶対負けない。なぜ負けないかというと、相手の話を聞かないから。聞いているのは相手の論理の齟齬とか過ち、間違いを突くことだけに集中しているわけです。

内田 嫌な奴だねえ(笑)。p52

 「男性的抗議」を名越さんは「心理学でよくいう」といっていますが、実際は心理学者や臨床心理士、カウンセラーで知る人は少ないと思います。これは完全にアドラー心理学の用語だからです。

 劣等感の過剰な補償の一形態で、やたらと男性性を誇張したり、それを身につけようと奮闘することで、アドラーが命名しました。

 さすが、アドラー心理学ベースの臨床家だけあって、名越さんはヒトラーを分析する際にも自然にアドラー心理学の思考を使っているようです。

 ヒトラーは、読書では相手を論破するために大量の本を読破し、女性とは徹底的な片思いで完全に空想の中で彼女との完璧な恋愛生活を夢想していたそうです。そのために現実の女性とは付き合えず、「結局夢破れて、そこから彼は『力を持ちたい』『国家を変えたい』という方向へシフトしていった」と名越さんは述べています。

 容易に想像がつきますが、武道、格闘技系に入る人の多くに、この男性的抗議的な劣等感の補償を求めている人が多いですね。

 程度の問題ですが、中には攻撃や強さや力にこだわってばかりで、また男らしさにもこだわり、万柔らかく受けることができない人もいるかもしれません。

 武道家の成長には、いかに男性的抗議的なマインドから抜け出て、心身の「受け」ができるようになるかという課題があるように思われます。

 また名越さんは、今の閉塞した社会の雰囲気で、大衆はこのような人物を求めるようになるだろうと、警告を発しています。

 

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