「ゆがめられた地球文明の歴史」
栗本慎一郎先生の「ゆがめられた地球文明の歴史」(技術評論社)を読みました。
政治的思惑に歪められ、塗りつぶされてきた世界史の真実を大胆に暴いて書き換えようという試みで大変読みごたえがありました。
私たちの世界史理解の大きな枠組みは、おそらく高校で習った世界史の範囲を超えていないと思います。専門の研究者もほとんどそうでしょう。それを栗本先生は、ゲルマン人中心の西欧中心史観と中国人中心の漢民族中心史観であり、ほとんどが虚構に過ぎないと断じています。
世界史の真の主役はゲルマン人や中国人たちが無視しようとしてきた領域、地域、民族にこそあり、古代のメソポタミアやイラン高原や「草原の道」を巡って覇権を争った遊牧騎馬民族たちの作った「帝国」である、との説明はとてもエキサイティングでした。
栗本先生の言う草原の道の重要性は、以前先生の著書を紹介させていただきました。
「シルクロードの経済人類学」
中国中心部を通り、砂漠から中央アジアを目指すいわゆるシルクロードなんて実際は大したものじゃなく、その上(北方)にははるかに安全で水の豊富な草原があり、それが本当の道だったようです。
ただ、本書で言及している中央アジアや中近東の地名や民族名になじみが薄いので、なかなかイメージが浮かばずスッと頭に入ってこないのが少々つらかった。
しかし、21世紀は中央アジアが世界の中心になると予測する人もいるので、今後はこの地域は注目かもしれません。
老後に時間があったら中央アジアやカザール帝国(アシュケナージ・ユダヤ人のルーツの地、現在のユダヤ人は何とかしてその事実を隠ぺいしようとしているらしい)の研究をしてみたいです。
歴史とは固まった通説だけと思うのは全く間違いで、まだまだ調べられず、語られていないことがたくさんあることを本書で実感しました。
また、同書の編集者による栗本先生のインタビューがあるので、先生のお考えに触れることができますよ。
http://seimei-kagaku.info/archives/2170
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ごぶさてしております。栗本先生の本、読んでいただいたんですね。ありがとうございます!
テーマはすご~く面白いのですが、知らない地名とかたくさん出てきて読むのが大変だったと思います。笑
栗本先生も難しくなりすぎたと思ったらしく、刊行されたと同時に「2冊目を書きたい」と連絡してこられました。で、いまその2冊目が進行中です。
今度は日本史にもだいぶ言及しているので、先生が脳梗塞からの復帰以降に取り組んできた「世界史の再編成」の、文字通り集大成になると思います。
来年にはなんとか世に出したいので、お楽しみにしてください!
Posted by: takanorix | November 09, 2012 09:23 AM
takanorixさん
いつも好著をありがとうございます。
栗本先生もお元気そうで何よりです。
次回作を楽しみにしていますね。
Posted by: アド仙人 | November 09, 2012 10:48 AM