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March 01, 2013

フレームワークを信じない

 内田樹・光岡英稔著「荒天の武学」(集英社新書)から覚えとしてメモをします。

 晴天とは予測ができて、あるパターンの中で動けること、想定内の世界です。シミュレーションがきくわけです。

 荒天とは、想定が通用しない、予測や期待をしても意味がない世界です。

 スポーツや競技武道は晴天向きであり、本来の武術は荒天にこそ存在意義があり、人は荒天の時は自らの想定したものの見方(本書ではフレームワーク)を外さなければならないと説いています。

光岡 その瞬間をどう捕えるかなんですよね。でも、焦って動けば斬られる。遅くても斬られる。「ああ、あの時、あいつが遅刻しなければ焦ることもなかったのに」と佐々木小次郎は宮本武蔵に対して言えないわけです。「あの時、あいつの木刀があんなに長いとわかっていたら、こっちももっと長い刀を用意したのに」とも言えない。その瞬間にはそれしかないわけですから。
 だから、シミュレーションというのは、「繰り返しが利く、再現性がある」という前提があってのみ成り立つことなんです。何かをシミュレートするというのはあるパターンを設けて、その中にうまくはまると「たしかにそのパターン通りになりますよね」という期待を基に思考することであって、それがその通りになるならいいんですけどね。「自分の思う通りになって欲しい」という人の心情はわかりますから。
 でも、武の基本は、相手の一番嫌がるところを攻めることです。つまり相手は此方の予測パターンを外した攻撃で自分が一番予測できていなかったところを攻めて来るということです。空気を読まないで、「え?今ここでそれをする?」というような攻めだったりするわけです。そこを突かれたときに、私たちがどうあるかが問われます。  p135

光岡 実は武に時間は存在しません。武の本質は時間の外にあります。だからこそ機と位と間が重要になってきます。
 機をだいたいは「タイミング」と訳してしまいますが、そうじゃない。タイミングだと時間のうちにあります。
 機が時の外にあるとは、どういうことかと言えば、「それ以外にない」ということです。先も後もない。だからタイミングのように「合わせるもの」ではない。

内田 なるほど。では、位というのは、どういうことでしょうか?よく「位を取る」という言い方をしますよね。

光岡 「“その時”に“そこいる”」ことが位を取るという意味です。だから、自分の中の位もあれば、そこから生じて対象との関係性で生じる位もあります。位が位置と違うのは、位は流動的であるということで、決して固定的ではありません。
 たとえば、地球と月の関係性はある法則性で成り立っていますが、ひとときも同じ位置になく随時関係は変わっています。それが位です。その位にいるということが、機でもあるし、間でもある。これが今の段階での時の外に関する私の理解です。  p136

光岡 想定内の対応なら凡人にもできます。想定外のことがぱっと出てきたときに、ふさわしい判断ができるように普段から自分を磨いておく。そこにおそらく武の存在意義があるのだと思います。荒天でもそれが普通の状況だと言えるような心で状況に応じられるかどうか。  p149

 

 科学にするということは、できるだけ想定内になるようにするということで、臨床心理の世界でのマニュアルとかエビデンスとかの重視の流れは、それを徹底させようとするものです。確かに凡人向きで、私を含めて大半は凡人なので、それはそれでいいのだと思います。

 しかし生きた現象には想定外が常に起こり得るし、現に起きている、臨床の現場にも社会にも。

 それを認めて、科学にしようとあがくのではなく、「それをそのまま」扱えるようになるのも大事なことだと思います。

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