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April 08, 2013

「真剣」

 珍しく小説を紹介します。歴史小説です。とっても面白かったからね。

 「真剣」海道龍一朗著(実業之日本社)

 実は私、昔から歴史好きの割に歴史小説はあまり読まないのですが、最近海道さんにはまっていているのです。

 本書は新陰流の開祖、上泉伊勢守信綱が主人公。
 武術好きなら知っているでしょうけど、一般の人はほとんど知らないかもしれません。柳生新陰流はドラマやコミックでよく出ますけど、その元になった流派といえばいいでしょうか。この人が作った新陰流が起点となって、柳生だけでなく、今に伝わる多くの日本の古武術の流派が生まれていったのです。だから、実は日本の文化史上、超偉大な人物なのです。

 本書は、その信綱が上州(群馬)の一小領主の後継ぎとして生まれ、子どものころから剣の修行をしながら、多くの武将、兵法家と出会って、悩みながらも一流派を切り開いていく成長物語です。

 信綱は少年時代に鹿島神道流という剛の剣を学び、青年時代に愛州移香斎から柔の陰流を受け継ぎ、「新陰流」を大成させます。

 登場人物は塚原朴伝、北条綱成・氏康、上杉謙信、北畠具教、長野業正、武田信玄、柳生宗厳、宝蔵院流槍術の胤栄などなどと錚々たるもの。みんな個性的に生き生きと描かれています。
 ちなみに信綱の「信」は、元々「秀綱」だった名を、武田信玄が与えた一字(諱名)です。信玄が長野業正と秀綱が守っていた箕輪城を落とした後、信玄が武田家への仕官を勧めたのを丁重に断って、残念がった信玄が与えたといわれています。小説でもそのくだりがあります。信玄、迫力がある。

 本書はなんといっても、数多い立ち合いの場面の描写が素晴らしい。そこに惹かれました。武術をやっている人はもちろん、そうでない人も十分楽しめるでしょう。
 特に後半のクライマックス、宝蔵院流の胤栄との立ち合いとそれに至る内面の描写は迫力満点です。

 また、戦国のパワーゲームに翻弄されながら剣の腕を磨き続ける信綱が、強さとは何かを悩みながら、戦国武将になる道を捨て、一武芸者として己を探求する道を選んだことは大いに共感します。

 それにしても新陰流の極意とは、いかにも太極拳的だと私のような者は思わずにはいられないのでした。

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