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May 06, 2013

「太極拳秘術」

 太極拳の歴史を学ぶときにネックになるのは、中国語です。しかも今の中国で使っている簡体字に加えて、昔の字で書かれた文献を普通の人が読みこなすことはなかなか難しいものです。翻訳に頼るしかないのですが、英語に比べて中国語の文献は極端に少ないのは否めません。

 清水豊著「太極拳秘術-己を高める武術の技と知」(柏書房)は、著者がそういう言語読解能力がきちんとある方みたいで、太極拳の五大流派(楊、陳、呉、武、孫)を直接中国人から学び、さらに國學院大学大学院から台湾師範大学に留学した、思想史が専門の研究者なので大変しっかりした内容です。

 本書は太極拳のいくつかの奥義書を取り上げ、説明してくれており、太極拳の歴史、ルーツについても論理的に分析しながら、独自の説を述べています。
 少なくとも今主流の陳家太極拳源流説を相対化することができます。さらに武術としての太極拳の技の練習に必須とされる秘訣を確認することができます。

 太極拳の創始者は宋の時代の仙人(道教の修行者)、張三ポウ(漢字が出てこない)とされていますが、多くの現代的な研究者、実践者は単なる伝説上の人物で、仮託されたにすぎないだろうとしてきました。日本の古武術で、源義経や天狗が創始したという流派があるらしいですが、よくある作り話ということです。

 しかし、本書は、張の残した文書があまりに高い水準にあることや、古くからの諸文献を見渡して、やはり太極拳、あるいは太極拳の思想を始めた仙人がいたのだろうと考えています。

 私は、改めて太極拳が中国の心身文化の精髄であることを理解できました。

 たくさんいる太極拳の愛好者で歴史に興味を持つ人は実はそれほど多くはないかもしれませんが、ある程度のレベルにある人や、指導者などにはとても有益な本であると思います。

 

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