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May 27, 2013

「『むすび』の武術と植芝盛平」

 清水豊著「『むすび』の武術と植芝盛平 合気道・太極拳・八卦拳」ビイングネット・プレス

 武道の本質を思想面、特に古事記などの神話学から徹底的に考えた意欲作です。

 一般に合気道は見た目の華麗さや柔らかさゆえに、その源流となった大東流合気柔術や空手や他の格闘技に比べて、実戦的ではない、使えない、はっきりいって「弱い」という悪口を聞くことがあります。

 しかし、著者は、それは武道の本質がわかっていない者が弄する言葉であり、植芝盛平が心血を注いで創り上げた合気道こそが本当の武の道であると主張します。

 著者は、武術には「王道の武術」と「覇道の武術」があるといいます。

 覇道の武術とは一般の武道、格闘技で、「自分が生きていくうえで、邪魔になる者の存在をなくすることが第一であると考える」ものです。敵を倒すことが本義であり、行きつく先は敵を殲滅してついには自分も滅ぶということで、その最終形態は核戦争でしかありません。

 王道の武術は日本では合気道、中国では伝統的な太極拳、形意拳、八卦掌(著者は八卦拳と呼ぶ)であり、それらは人間の根源のエネルギー(太和の気、根源の気)を開くエクササイズであるとします。
 合気道の動きはけして格闘の「技」ではなく、エネルギーを開くための「気形(きがた)」であるといいます。実際そう考えると、合気道の動きがなぜああなのか、納得はいきます。

 著者によれば、古代、武術は元々王道の武術であったが、人が人を殺し合う時代になり覇道の武術が主流になった。しかし今は覇道の武術が終わりの時代を迎え、これからは王道の武術こそを甦らせなければいけないといいます

 本書では古事記や神道、道教などの東洋の神秘思想を縦横に引用しながら、対話形式で論が進んでいきます。
 植芝盛平は合気道を説くときに、神道の言葉を頻繁に使っていたので一般の人には非常にわかりにくく、弟子たちの多くも「よくわからなかった」と証言されていますが、本書はその意味を解説してくれるので、少しは普通の合気道修行者にも理解できるかもしれません。しかし、それでも難しく感じられるかもしれませんね。
 やはり、今は神道の言霊思想が、私たちには縁遠いものになってしまったからでしょう。

 私自身は普通の人よりは東西の神秘思想に多少は詳しいので、そこはすごく興味深く読めました。
 特に古事記にあるような神々のストーリーが、実はヨガや気功の修行過程、エネルギー開発過程と同じものを描いているとは初めて知りました。

 それに本書で著者の対談相手になっている神道研究家という人が出ていて、基本的にはフィクションだそうですが、なんか知人の神道家に似ているような気がして、個人的にも気になりました。

 武術の意義を思想レベルから考える際に、必須の書かもしれません。

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