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June 19, 2013

「新世代の認知行動療法」

 熊野宏昭著「新世代の認知駆動療法」(日本評論社)

 認知行動療法の最先端の状況を一覧するのに最適です。私の知り合いや存じ上げている先生の間で好評価を得ているようです。

 マインドフルネス認知療法、メタ認知療法、臨床行動分析、行動活性化療法、弁証法的行動療法、関係フレーム理論、アクセプタンス&コミットメント・セラピーの概要が非常にわかりやすく解説されていて、とても参考になりました(専門書ですから心理学やカウンセリングの素人さんがいきなり読んでも難しいとは思います)。

 これらの新しいアプローチに通底するのは「マインドフルネス」、仏教瞑想のエッセンスで、「今、ここへの気づき」を思考、感情、身体に広げ、深めることです。本書には心理学的なマインドフルネスが説明されていて、それを徹底的行動主義との共通性を指摘したりして私には興味深かったです。

 学問的な解説は本書に任せて、本書でもあまり語れないことで私にとって興味深いのは、文化史的なこと、いわゆる「東洋と西洋の統合、融合」とか巷間言われてきたことが、心理療法というより具体的なレベルで実現してきたということです。

 大体日本に翻訳されている認知行動療法の本には、なんか仏教の瞑想の価値をいきなり頭の良い行動科学者が気づいて取り上げて研究して、「これがオリジナルだ!」みたいな感じになっていますけど、実際はどうだったんでしょう。

 私が「マインドフルネス」という言葉を初めて知ったのは、もう30年近く前、トランスパーソナル心理学の紹介者である故吉福伸逸さんのところに行った人から、今度翻訳を検討している本として教えてもらったときでした。瞑想の心理学がテーマの本で、その一部のコピーをいただいたことを覚えています。
 既に当時トランスパーソナル心理学から入ってあらゆる種類の瞑想を体験していたので、友人から「瞑想ジャンキー」と言われていた私は当然興味を持って、「瞑想についてこういう言い方をするんだ」と知りました。ただ、結局その本は翻訳されなかったようですね。まだ時期尚早と判断されたのかもしれません。

 20世紀初頭にアメリカに鈴木大拙が禅を紹介し、戦後はチベット仏教や上座部仏教、ヨガ(ヒンズー)、イスラム神秘主義スーフィー、タオイズム(気功や太極拳など)など東洋神秘主義とされる思想文化の指導者がたくさんアメリカで活動しました。

 玉石混交だったと思うけど、それに対してアメリカ側の知識人の中に鋭く反応した人々もいました。

 心理学では特に臨床やセラピーをやっている人たちが早くから関心を持ったらしく、個々の活動に瞑想や修行を基にしたワークを取り入れていきました。代表的なのはゲシュタルト療法のパールスでしょう。またグレゴリー・ベイトソンの関係性の思想やケン・ウィルバーを代表とするトランスパーソナル心理学の誕生に影響していきました。

 ただ当時はヒッピーやニューエイジという「周辺的」な人たちの運動(カウンター・カルチャー)だったのが、今はもうスクウェアというか「中心的」な主流的な人たちにまで、こういう東洋の精神文化が浸透してきたという文脈があるはずです。

 アメリカの属国・日本は東洋のはずですが一部を除いて完全に後追いで、逆輸入ということになりました。これが日本の学者の仕事です。別に皮肉ではなく、これしかやりようがないのが日本の文化なのかもしれません。

 前出の吉福さんは、日本に「瞑想やトランスパーソナル的なものが受け入れられるには10年はかかる、まだ早すぎる」と80年代半ばに仰っていたという記憶がありますが、20年以上かかってようやくその段階になったと思われます。

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