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June 29, 2013

「合気道と中国武術はなぜ強いのか?」

 山田英司著「合気道と中国武術はなぜ強いのか?」東邦出版

 タイトルを見て「え?」って思った人もいるかもしれません。特に既存の格闘技や競技武道をしている人から見たら「逆じゃね?」と思うかもしれませんね。

 しかし長年格闘技や武道マスコミの世界に身を置いていた著者は、自らの経験と研究からそのような考えを持つにいたったようです。

 もちろん合気道や中国武術がいつもどこでも何にでも強いというわけではないことは著者もよく承知しています。そういう甘いことを言う人には、きっと喝を入れる人でしょう。

 格闘技も武術もそれぞれに対象とする世界、それに合わせて構造化された体の動きや発想法があり、格闘技は非常に狭い世界に限定して「強さ」を競っているのに対し、武術は野外戦、多人数、武器の使用を前提に出来上がっているという広範囲が対象となっています。

「実戦性」を求めてルールをゆるめたり、金網デスマッチみたいないかにも過激な状況を設定することが、実は「安全で保護された空間」(著者の言葉ではなく臨床心理学的用語)を作りだし、それに最も適応した者(ヒクソン・グレーシーのような)が勝つことになります。あの格闘技特有の戦い方は、ストリートではありえないと著者は言います。

 ともあれいったん出来上がった「最強」というイメージは、あとは流布の段階で、そこに「市場性」があるかないかという別次元の勝負になるのでしょう(要するに儲かるかどうか)。
 もちろん、それは価値のないことではなく、それによって技や精神が洗練されることはあるでしょう。けっこう教育的であることもあります(非行少年が立ち直ったり)。

 その辺の著者の分析ツールはソシュール、レヴィストロースなどに始まる「構造主義」で、けっこう使いこなしています。高岡英夫先生の影響が垣間見られますね。
 私はなじんでいる考え方なのでわかりやすかったですが、一般の武道、格闘技関係者には最初とっつきにくいかもしれません。でも難しいことを言っていないから、すぐに理解できると思いますよ。

 本ブログで以前取り上げた清水豊氏の合気道や武術の著作は、宗教思想から考えているのに対して、本書はまさに戦う現場からの思索です。

 とても刺激的です。

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