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August 29, 2013

「アーロン・T・ベック」

 マージョリー・E・ワイスハー著、大野裕監訳、岩坂彰・定延由紀訳「アーロン・T・ベック 認知療法の成立と展開」(創元社)

 認知療法の創始者、アーロン・ベックの伝記です。ベック博士の育ちや臨床、研究の歴史が述べられています。柔軟さとリーダーシップと強い意志などを兼ね備え、一学派の創始者になるだけはある人物だとわかります。
 

 帯に「個々の精神療法には、その創始者の人となりが深く刻み込まれている」とありますが、フロイト、アドラー、ユング以来、それが臨床心理学の特質だろうなあと思います。私はそういうところが好きですけどね。材料は大体同じでも、料理の仕方というか、「お店の味」というのは絶対ありますね。

 本書にはアドラー心理学のベックへの影響もいくつか出ていて、索引には6か所もあります。

 ケリーの研究を知ったことで、ベックは理論的発達を加速できたわけだが、他の研究者からの影響も受けている。とりわけカレン・ホーナイの研究の影響が大きかった。また、ホーナイを通じて間接的にアルフレッド・アドラーからも影響を受けている。 p47

 特に協同的経験主義(collaborative empricism)について説明するところで、シャルマンというもろにアメリカのアドラー派の代表的人物に語らせています。

 バーナード・シャルマンは、精神分析と認知療法のスタンスの違いについて、こう語る。

 一般的に古典的な精神分析的技法では、セラピストは比較的受け身であり、患者が無意識の願望とそれに対する防衛の産物を持ち出してくるのを待ち、それに解釈を加える。
 認知療法はそうではない。アドラーとそのグループ、パールズとゲシュタルト派、アルバート・エリス、アーロン・ベック、ヴィクトール・フランクルはそのようにはしなかった。彼らは能動的セラピストであり、クライエントの参照枠、つまり知覚のゲシュタルトを変化させることに力を注ぐ。  p125

 さらに、ベックへの影響関係を次のようにまとめています。

 アーサー・フリーマンは、力動的(精神分析的な意味の精神力動とは異なる)志向で迅速にはたらく治療を創始したことこそが、ベックの業績であると語る。「ベックは多くの理論やモデルを効果的に利用し、非常に有効につなぎ合わせました。ベック自身もホーナイやアドラーに、そして自己志向的アプローチの『今、ここ』を利用する考えや、患者が論理的分析スキルを使えるようにするという考えに負っていると書いています。認知療法はおもに、即座に人に力を与えられるという事実によって記憶されることになるでしょう」とフリーマンは述べている。 p137

 認知療法を通じて臨床心理学の歴史も学べる一冊です。

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