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November 22, 2013

「暴力・虐待・ハラスメント」

 いじめ、ハラスメント、虐待のニュースは後を絶ちません。

 藤本修編「暴力・虐待・ハラスメント‐人はなぜ暴力をふるうのか」(ナカニシヤ出版)は心理学の知見から暴力問題を一覧的に眺めるのに好著です。現代社会の様々な暴力を取り上げています。

 私はここ数年、「労基旬報」という労務管理の業界紙(こういうのがあるんですよ。まさに「ダンダリン」の世界ですね)に連載をさせていただいているのですが、最近パワーハラスメントについて書いています。その際に参考にさせていただきました。

 本書には心理学だけでなく、生理学や動物行動学から見た暴力についての科学的知見が紹介されており、おもしろいのでここでも紹介します。自分の文章を引用するのもなんですが、お読みください。

 

よく「キレやすい人」「逆切れ」などという言葉が使われます。日常見ていると、確かに攻撃的な人とそうでない人はいるようです。心理学だけでなく、生物学、生理学的視点からの知見も確認してみましょう。

 

 藤本修編「暴力・虐待・ハラスメント」(ナカニシヤ出版)によると、攻撃性に関係する脳内の神経伝達物質に「セロトニン」があるそうです。神経伝達物質とは、脳内の神経ネットワークに情報を伝えるために活躍する化学物質で様々な働きをする種類があり、それによって脳の活動、感覚や運動を制御しています。セロトニンは、不安や衝動を抑制する「ブレーキ」の役割があるそうです。つまり、脳内のセロトニンの量が低下すると攻撃性が高まるのです。

 

 動物実験で、セロトニンの量が低下させたマウスはマウス同士での殺し合いが生じたそうです(動物は通常、同種同士の殺し合いはしない)。また、サルのコロニーで、セロトニンを増加させた雄ザルは非暴力的に雌ザルとの協調関係を築きグループのボスザルにまでなったのに対し、セロトニンを低下させると孤立しがちになり攻撃行動が増え社会的地位が低下したそうです。「セロトニンが増加することによって社会的地位が高まるという傾向は脊椎動物では一般的に見られる傾向であり、逆にセロトニンが減少すると攻撃的になり群から孤立し、社会的地位が低下する」というのが科学的結果です。

 

 興味深いですね。サル山でもそうなのだから「ヒト山」でもきっとそうでしょう。実際人格障害や殺人犯、非行少年の髄液中のセロトニンレベルが低いという調査もあるようです。問題は、中等度のアルコール摂取により、脳内のセロトニン量が約二十パーセント程度減少し、その影響は23時間持続するとのことです。大量にお酒を飲んだり毎日飲む習慣のある人はさらにその傾向が強くなるでしょう。心の安定のためにお酒を飲んでいたら、かえって不安や攻撃心を増している可能性があります。酔うと荒っぽくなる傾向のある人は、注意してください。

 

 私が懇意にしている精神科医は、セロトニンを「じっくり幸せホルモン」と呼んでいます。ドーパミンというのを聞いたことのある人はいると思いますが、これは「ワクワクドキドキホルモン」と呼んでいます。ドーパミンは恋愛や性的快感、達成感など強い幸福感に関係します。しかしドーパミンが多過ぎると幻覚、妄想、攻撃性が亢進されます。どちらも人の幸せに関係する重要なホルモンですが、穏やかに落ち着いた幸せを感じたいならセロトニンが出るような活動をするといいでしょう。

 

 ではセロトニンが出てくるような生活をするにはどうすればいいか。太極拳の医学的効用を説いた雨宮隆太他著「太極拳が体に良い理由」(ベースボールマガジン社)によると、セロトニンを高めるためには、「呼吸、リズム運動、意識動作」をすることです。「セロトニンは呼吸とかなり密接な関係にあり、とくに座禅のようなゆっくりと細く長い意識呼吸が重要だ。動作と呼吸が結びついていればさらに良い。また、セロトニン神経は2Hz(ヘルツ)のリズムに同期して活性が高まるといわれている。2Hzは音楽でいえばモデラートぐらいで、けっして速くはないテンポ。これらはすべて太極拳の得意分野、セロトニン神経の活性化は任せなさい・・・である」とあります。太極拳歴二十八年の私も確かにそういう実感はありますね。

 

 太極拳や瞑想以外にも、自分なりに呼吸が穏やかにゆったりとした活動を取り入れると、きっと良いことがあると思います。参考にしてください。(労基旬報 平成25年10月25日号)

 

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