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February 21, 2014

「炭水化物が人類を滅ぼす」

 とりあえず、今日からいつもの内容に戻りたいと思います。

 最近三食のうち一食だけご飯やパンといった主食を抜く糖質制限をやっています。なかなかいいですね。短期間のうちにお腹が引っ込み、ベルトの穴ひとつ小さくなりました。ちゃんと体重を測らなかったのが残念ですが、確かにその効果はありました。

 おまけに体が軽くなったからか他の要因か、意識がスッキリと澄んだ気がするのです。太極拳をやるとこれまで以上に気持ちがいい。これも糖質制限の効果の気がする。なぜだろう。

 正確には私のはちゃんとした糖質制限ではなくて、「プチ糖質制限」というらしいです。三食のうち二食抜くのが「スタンダード糖質制限」で、三食全部抜くのは糖尿病の方とか、本当にこの方法に入れあげた人がするものらしい。ポイントは糖質のある食事さえ抜けばいいので、あとは何をいくら食べてもよいということ。やり方は極めて単純です。
 まあ甘党の私はケーキを食べたり、ご飯やラーメンを食べ続けたりと守らない日も多いから、「プチプチ糖質制限」程度ですが、個人的な生体実験では成功の模様です。

 ダイエットの気はさらさらないのに、「糖質制限は面白そうだ」と私を走らせたのが、夏井睦著「炭水化物が人類を滅ぼす-糖質制限からみた生命の科学」(光文社新書)。新書では話題でよく売れているらしいです。

 米、うどん、蕎麦、根菜類、醸造酒(日本酒、ビール)など炭水化物の食べ物を断つ糖質制限が今ブームらしい。著者は医師ですが、糖質制限は短期間で確実な変化を心身にもたらすことがわかり、著者は「どういうことか」と科学者魂に火をつけられたらしいです。確かにやってみるとそれはわかる。

 糖質制限をすると、「若かったころの体型に簡単に戻れる」「意識がはっきりして眠気が襲ってこなくなる」「血糖値が下がって糖尿病が治る」「抑うつがよくなる」などよいことづくめだそうです。

 ただの健康本なら、健康な私は読んだりしません。健康おたくやダイエットマニアでもないし。
 本書は単に糖質制限のやり方を紹介するだけではなく、現代主流の医学的治療法の問題から人類の食文化と文明成立の歴史にまで、実に広い範囲にわたり糖質(炭水化物)と絡めて考察しています。そして「糖質は元々人類には必要なかったのだ」と大胆な仮説を出しています。それがとても面白かったので、「では、試してみようか」となったのでした。

 私は知らなかったですが、この糖質制限は、糖尿病治療の世界ではかなり論争になっているらしいです。効果はあるけど、オーソドックスな医師たちの反対意見も強いそうです。しかし、著者は自信を持ってゆずりません。また、栄養学でいうカロリーという概念も実は神話みたいなもので科学的根拠が薄いと疑っています。カロリーを根拠にしたダイエットは間違っていると主張します。

 そもそも糖質の食べ物とはどういう存在か。私たちはなぜ特に米や麦といった穀物を大事にして、食べるのか。
 著者によれば、本来人類はわざわざ米や麦を食べなくても、炭水化物はアミノ酸から自分の体で作れるのでいらないそうです(糖新生というらしい)。けして「必須栄養素ではない」と驚くべきことを言います。では、なぜそれらは長い人類の食文化の歴史で「主食」の座になれたのか。

 一つ重要なのは、穀物によって飢えをなくすことができた。穀物の栽培(農業)によって、人類は移動して狩りをする生活から定住する生活に変わり、人口を増やし、都市や文化を創り上げることができた。穀物は安く大量に手に入れられるので、多くの人が腹いっぱいに食べられ、満足感が高った。
 私も今回の大雪災害で食料がスーパーの棚からなくなったとき、食事は野菜や肉は少なくなって、お米はまだたくさんあったのでご飯は仕方ないからたくさん食べました。ご飯さえあれば、とりあえず生きていける感じがしました。
 東日本大震災の時も被災者に配られる非常食は大抵、インスタントラーメンやパンなど糖質中心で、かえって太った人も多かったそうです。
 穀物で飢えをしのげます。

 しかし人類は飢えない程度以上に過剰に穀物を生産し、様々な形で食べ続けています。著者の極めつけの結論は、糖質とは人類にとって「嗜好品」でしかないということ。本来いらないものなのに、なぜか人類は炭水化物の食糧に魅せられ、必死に育て、あの手この手で加工し、いくら血糖値が上がっても太っても食べています。

 (転載貼付始め)

 では、人間にとって糖質とは何なのだろうか。 
 必須栄養素ではなく、摂取しなくても問題はなく、かえって摂取することにより様々なトラブルを起こしているだけの存在だ。
 一方で、糖質制限の話をすると、きまって「ご飯が食べられない人生なんて考えられない」「甘いものが食べられないなら死んだ方がマシ」と猛烈に反発する人がいるし、さまざまな理屈をこねて「糖質を食べることの意義」を見つけようとする人もいる。そのような人にとっては、糖質を食べるという行為そのものに愛着があるように見える。
 これは何かに似ていないだろうか。
 このような反応を示す物を、我々は「嗜好品」と呼んでいる。  p88

(転載貼付終わり)

 これは「目から鱗」でした。そうか、私たちは「糖質依存症」になっているのか。お米やパンの旨味や甘味にとらわれていたのか。しかし、これを認めると主食を否定し、世界中の豊饒な食文化を敵に回すことになります。そう、著者は主食という概念を捨てることを提案しています。
 とても刺激的な考えですが、食べ物って結構いろいろな説やイデオロギーがついてまわって、なかなか判断が難しいのですが、本書は科学的、論理的で説得力があるように思えました。食の根本を考えるきっかけになりそうです。

 本書の仮説を受け入れるかどうかはともかく、私たちは明らかに「糖質過剰」の社会にいるとは思います。ご飯、麺類、お菓子、飲料、お酒と朝から晩まで糖質を体に入れています。少しは抜く努力をしてもいいと思います。よかったら試してください、あくまで自己責任で。

 しかし私はまだ依存状態を脱することはできません。ご飯もうどんもパスタもケーキも食べたいので、それだけの余地を残したプチプチ糖質制限を続けることになりそうです。

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